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ビールが世界中で飲まれるようになったのは、近代の3つの発明のおかげである。
低温殺菌法、アンモニア冷凍機、酵母の純粋培養について、説明する。
●低温殺菌法
1865年、フランスの微生物学者 ルイ・パスツールによって「低温加熱殺菌法」が発明される。
パスツールは酵母という微生物が活動することでアルコールができることを突き止めた。
また、ビール腐敗の主な要因は細菌の存在であるとし、それを解決する方法として、
1876年に「ビールに関する研究」とと題して論文を発表した。
それまでのビールは、味がしだいに劣化・腐敗し、長期には品質を保つことができなかったが、
低温殺菌法によって、ビール生産における最後の難関だった発酵を制御できるようなった。
低温殺菌法とは、摂氏100℃以下(60℃前後)の温度で長時間(20~30分間)加熱することで、
雑菌の繁殖を抑えるとともに酵母の働きも止めることができる技術。
この技術は世界各地のビール醸造所に広がり、保存期間や輸送範囲が広がった。
●アンモニア冷凍機
1873年、ドイツ人技術者のカール・フォン・リンデによって「アンモニア式冷却機」が開発された。
ラガービールに代表される下面発酵酵母を用いたビールは、低温で発酵させる必要があるため、
造られる季節や場所が限られ、ラガーを味わえる人も限られていた。
これを解決するべく開発されたのが、大量の氷をつくることができる冷凍機である。
その後改良が加えられ、アンモニア式となった冷凍機によって、
従来、醸造の季節は冬だったのが、一年中可能になった。
この発明で、発酵・貯蔵中のビールを冷やすことができるようになった。
●酵母の純粋培養
1883年、デンマーク コペンハーゲンのカールスバーグ醸造所で、
エミール・クリスチャン・ハンセンによって「酵母の純粋培養」に成功。
ハンセンはビールの腐敗原因がパスツールが解明した細菌の繁殖によるものだけでなく、
野生酵母の繁殖によるものであると考え、良い酵母だけを取り出し、
それを純粋に培養して増殖させる純粋培養法を確立した。
つまり、ビール造りに適した酵母を選び、増やすことができるようになった。
純粋な酵母は均一で良質なビールの大量生産を可能にし、値を下げ、
大衆飲料への道を切り開いた。
●あとがき
低温殺菌法で保存期間と輸送範囲を広げ、アンモニア冷凍機で一年中生産できるようなり、
純粋培養で品質を上がり大量生産できるようになって、値段が下がり大衆化した。
日本でも明治時代(1868年~)はコース料理が約6銭に対して、
瓶ビール大が約26銭という記録から、かなりの高級品だったようだ。
三大発明によって安くはなったが、その後日本では酒税によって海外よりも
2倍程の価格になっているのが現状である。
産業革命時代の技術革新を経て、今後のビール産業の変化が楽しみである。