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スコットランドの蒸留地域は、大きく6つに分けられる。
アイラ、アイランズ、キャンベルタウン、ローランド、ハイランド、スペイサイドである。
地域の環境や歴史から特徴が見えてくる。
●タリスカー
・基礎データ、場所
- 蒸溜所名:タリスカー蒸溜所
- 英字:Talisker
- 意味:ノース語(ヴァイキングの言葉)で「傾いの大岩」という意
- 創業:1830年
- 仕込み水:ホーク・ヒルの斜面を流れる川
- 蒸留器:バジル型、ストレート型
- 現所有者:ディアジオ社
- 輸入元:MHD モエ ヘネシー ディアジオ(株)
ヘブリディーズ諸島のスカイ島にある蒸溜所。
スカイ(Skye)とはノース語で「翼の形をした島」という意味であり、
海から眺めた島の形が、翼を広げた鳥のように見えることからきている。
タリスカー蒸留所は、1960年に火災に遭い、建物が消失している。
アルコールついた火は、近隣の湖に流れ出し、まさに火の海状態だったという。
その後2年をかけて、蒸留所を再建し、火災前と全く同じ装置を揃えて、変わらぬ味を再現した。
・特徴
・味わい
一言でいうと、胡椒である。
スパイシーで、スモーキーで、その中に少し甘さがあり、刺激的な胡椒がある。
胡椒と、他の風味・味わいが、素晴らしいバランスで成り立っている。
・独特な蒸留器
蒸留所によって蒸留器の形状はさまざまであるが、
タリスカー蒸留所の蒸留器はラインアームが特殊である。
初留釜のラインアームがU字型に曲げられている(一般的なものはまっすぐ)。
U字の底の部分から、重い成分が蒸留器本体に戻るようになっている。
さらに、ラインアームの先につながる冷却装置では、
ワームタブという昔ながらの方式が使われている。
ワームタブは、銅製パイプが冷水で満たされた槽の中で
渦巻き状に巻かれていることからこう呼ばれる。
蒸気はパイプ内を通るときに、冷水に冷やされて液化する。
ワームタブ方式では、リッチでコクのある風味が得られる。
この蒸留器によって、タリスカーの個性的な味わいが生まれている。
ちなみに冷却装置の現代の主流は、
シェル・アンド・チューブ・コンデンサー(管状コンデンサー)方式である。
この方式は、垂直に並んだ銅製の管の中に冷水を流し、周囲の蒸気を冷やす仕組みである。
管の数を増やすことで、蒸気が触れる表面積を増やして急速に液化させることができる。
この方式では、ライトですっきりした風味になる。
●あとがき
スコッチの中でも、ピートやヨードとは違った個性がタリスカーにはある。
しっかりとして個性は印象に残りやすく、ふとした瞬間に想起されやすい。
食事をしているときに、これはタリスカーに合いそうだと思ってしまうことがある。
この素晴らしい個性が、タリスカーが世界中で熱狂的なファンがいる理由であろう。