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酒精強化ワインとは、蒸留酒を添加してアルコール度数を高めたワインである。
通常のワインが15度くらいまでなのに対して、酒精強化ワインは21度くらいまである。
フォーティファイドワインとも呼ばれ、代表的なものは以下である。
- シェリー(スペイン)
- ポート(ポルトガル)
- マデイラ(ポルトガル)
- マルサラ(イタリア)
各名称を名乗るにはさまざまな決まりがある。
ここでは蒸留酒の添加タイミングが違う、シェリーとポートのつくり方を示す。
●シェリーのつくり方
シェリーはスペイン南部のアンダルシア地方ヘレス周辺で造られる。
使用できるブドウ品種は、パロミノ、ペドロ・ヒメネス、モスカテルの白ブドウ3種のみ。
シェリーの特徴は、フロールという酵母膜を利用すること、発酵後に蒸留酒添加すること、
ソレラシステムという熟成方法である。
- ベースワインを造る
ベースとなる通常の白ワインを造り、圧搾まで行う。 - 発酵
果汁のみを樽に移し、酵母を加える。
樽内は満タンにせず、少し空間をもたせる。
空間内の液面にフロールと呼ばれる産膜酵母ができる。
このフロールによる独特の風味がシェリーの特徴の一つである。 - 蒸留酒添加
発酵を終えたワインに、ブドウの蒸留酒(ブランデーなど)を添加する。 - 熟成・出荷
数段重ねた樽の一番上に出来上がった新酒を貯蔵する。
シェリーはソレラシステムという熟成方法がとられる。
積まれた樽の下に行くほど古く、最下段の樽からのみ出荷用が抜き取られる。
出荷で減った分は上段から補充し、これを最上段まで繰り返す。
新しいもの徐々に古いものに混ざることで品質が一定になる。
ソレラシステムは、一部のラム酒でも取り入れられている。
また、沖縄の泡盛で行われる仕次ぎと同じ発想である。
●ポートワインのつくり方
ポートワインは、ポルトガル北部のドウロ河上流周辺で造られる。
使用するブドウが黒ならルビーポート、白ブドウならホワイトポートになる。
ポートワインの特徴は、発酵途中に蒸留酒を添加することで酵母を失活させて、
残糖度をコントロールすることである。
日本に最初に入ってきたワインはポートワインだったと言われている。
- ベースワインを造る
ベースとなる通常のワインを造り、発酵まで行う。 - 蒸留酒添加
発酵途中のワインに、ブドウの蒸留酒(ブランデーなど)を添加する。
蒸留酒のアルコールによって、酵母が失活させる。
残った糖の量によって甘さが決まる。 - 熟成
最低3年、長いもので数十年熟成させる。
●あとがき
ワイン以外では酒精強化という言葉を聞かない。
ビールにウイスキーを混ぜるカクテルはあるが、別の発想である。
日本酒にはアルコール添加があるが、これは風味の調整なので目的が異なる。
流通が発達する以前に、日本酒が海外へ大量輸出されていたなら、
酒精強化という発想もあったかもしれない。