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イギリスではシードル(Cidre)をサイダー(Cider)と呼ぶ。
イギリスの気温や降水量などでは、良質なブドウを栽培することが難しいが、
リンゴの栽培には適していた。
そのため、昔からリンゴの加工品であるサイダー(シードル)が大量に生産され、
消費されており、世界屈指のサイダー大国となっている。
●味わい
イギリスのサイダーは、甘味、酸味、苦味を含めて全体のバランスが良いものが多い。
パブの文化があるイギリスでは、パブにサイダーのタップ(サーバー)がビールと並んでいる。
生サイダーが飲めるのである。
イギリスには世界展開するバルマーズ(Bulmers)があり、
大衆受けするサイダーを大量に生産している。
日本のビール産業と同様に、大手が大衆向けビールを大量に展開し、
それに慣れてしまった消費者には、クラフトも激しく飛び抜けたものが出せず、
バランス重視になる状況だ。
●生産地
イギリスでは、ヘレフォードシャー州やサマセット州で、
サイダーが長く造り続けられている。
比較的西部で盛んにリンゴ栽培、サイダー造りが行われている。
・ヘレフォードシャー州
ヘレフォードシャー州には大手メーカーのバルマーズがある。
そして、小規模はファームハウス(農家)が多数ある。
目指すべきものが違うため、両者が競合することはない。
バルマーズと契約しているリンゴ農家もあり、お互いに良い関係が築けている。
・サマセット州
昔ながらのサイダーを、伝統的製法で造る小規模醸造者が多数いる。
田舎の地酒的なイメージが強いが、世界的な賞を獲得している生産者も多い。
無理に規模を大きくするのではなく、手の届く範囲で自分たちが
美味しいと思えるサイダーを造っている。
●あとがき
イギリスにはリンゴにまつわる話がたくさんある。
ロビンフットの話や、アーサー王伝説のアヴァロン、ニュートンの万有引力など。
リンゴが昔から身近な果物だったからこそであろう。
シードル造りの最古の記録では、ブリテン島でリンゴの果実酒が造られていたとされている。
ちなみにアップルパイの発祥の地もイギリスであるので、やはりリンゴと縁深い。