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残念ながら、シードルの歴史の詳細はわかっていない。
ビールやワインなどは、壁画や古い文献に年数まで書き残されているものがあるが、
シードルは記録が少ない。
●リンゴ
リンゴの祖先は、恐竜が絶滅した白亜紀末期の隕石衝突(6600万年前)で、
環境が激変したことによる、突然変異の生き残りという説がある。
現在のリンゴの祖先(マルス・シルウェストリス[Malus silvestris])は、
コーカサス地方からトルキスタン、天山山脈にかけて、自生していたと考えられている。
人類の祖先であるアウストラロピテクスの誕生が400万年前、
ホモサピエンスが20万年前である。
人類が誕生した頃にはすでにリンゴは存在しており、食料として摂取していたと考えられる。
●シードル造り
ブドウ果汁から酒が造れるなら、リンゴ果汁からも酒が造れると考えるだろう。
つまり、ワイン造りが始まった近い時期に、シードル造りがされていてもおかしくない。
ワイン造りは紀元前8000年頃(約1万年前)に世界最古の文明人とされるシュメール人が、
コーカサス山脈周辺(現在のジョージア周辺)で始めたとする説がある。
リンゴはブドウよりも雨が多く、涼しい環境を好むため、
ワインを造れるようになった人類が北進すれば、
自生する果物がブドウからリンゴに代わり、シードル造りが始まったと考えられる。
シードルの語源は、ヘブライ語の「シェカール(shekar)」が、ラテン語の「シケラ(sicera)」になり、
スペイン語の「シドラ(sidra)」、フランス語の「シードル(cidre)」、英語の「サイダー(cider)」に
派生したとされる説がある。
シセラはお酒の総称を指し、9世紀のスペイン アストゥリアスで
リンゴ酒を意味するものとなったされている。
●シードルの歴史年表
- 20万年前
ホモサピエンス誕生 - 紀元前8000年頃
コーカサス地方でシュメール人がブドウ栽培、ワイン造りを始める - 紀元前6500年頃
トルコの住居跡から炭化したリンゴのタネが見つかる - 紀元前6000年頃
陶器の壺が造られるようになる - 紀元前3000年頃
エジプトでワイン造りの壁画が描かれる(ワイン最古の記録) - 紀元前55年
ユリウス・カエサルがブリテン島に侵攻した際に、
ローマ人が「ブリテン島のケルト人がリンゴ果汁を発酵させている」と記述
(シードル最古の記録) - 9世紀
フランク王国の王シャルルマーニュ(神聖ローマ皇帝カール大帝)の領土侵攻によって、
各地で荘園を運営する
荘園ではシードル用のリンゴ栽培も行われ、各地にシードルが広まる - 1337年
英仏百年戦争勃発により、リンゴ栽培に大打撃(~1453年) - 1492年
コロンブスが新大陸発見
アメリカ大陸にシードル造りが広まる - 1600年代
瓶とコルクが開発され、保存性が高まる - 1665年
イギリスでニュートンがリンゴの落下を見て、『万有引力』をひらめく - 1676年
イギリスでシードル造りの本が出版され、製法が確立する - 1854年
ヨーロッパで、害虫フィロキセラ蔓延よりブドウに壊滅的被害
ブドウ栽培からリンゴ栽培に切り替える人が続出 - 1871年(明治4年)
日本で西洋リンゴの苗木を輸入 - 1877年(明治10年)
青森県で日本初の西洋リンゴの実がつく - 1901年(明治34年)
青森県で日本初のシードル製造・販売 - 1920年
アメリカで禁酒法が制定される(~1933年) - 1945年
第二次世界大戦終結
●あとがき
古代ではお酒全般を指す言葉があり、シードルもワインも一緒くたにされていたことで、
ワインの歴史とごっちゃになっている可能性もある。
シードルに着眼して古代の文献を解読する人が増えれば、
今よりも詳しい歴史がわかるかもしれない。