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財務省貿易統計のデータをもとに、酒類の輸出入についてまとめた。
昨今、日本産の酒類輸出が伸びていると言われている。
このような輸出の話はよく聞くが、輸入はどうなっているのか。
輸出入合わせて見てみよう。
●酒類の輸出入金額
上図は、『輸出入金額』の推移である。
輸出金額は、2009年から連続して伸び続けており、2021年には遂に1,000億円を超えた。
酒類の国内消費が減り続けているため、海外に活路を見い出そうとしている。
国も輸出を推奨しており、様々な取り組みでバックアップしている成果が出てきている。
輸入金額はどうかというと、浮き沈みはあるものの、輸出の2.5倍くらいの金額である。
貿易収支では赤字が続いているといえる。
●酒類の輸出入量
上図は、『輸出入量』の推移である。
輸出量は、2018年に175.5千kLがピークだが、これから伸びる余地はありそうだ。
理由としては、輸出金額が伸びているため、量から質への転換が進んでいると考える。
品質が認められれば、量も増えてくるだろう。
輸入量は、2013年をピークに減り続けている。
各酒類の関税が下がったり、撤廃されていることを考えると、輸入量が増えるのでは?
と考えるかもしれいないが、国内のお酒の消費量が減っており、
そもそもお酒を飲まなくなってきているのだ。
●酒類の1L当たりの輸出入金額
上図は、『1L当たりの輸出入金額』の推移である。
輸出入金額を数量で割って計算している。
輸出はここ数年、1L当たりの金額が上昇している。
理由としては、商品評価の見直しや、高付加価値商品への転換が考えられる。
輸入も1L当たりの金額が上昇している。
輸入量が減っていることを考えると、量より質への転換だろう。
安価なものよりも、高品質のものを輸入する方向へシフトしていると考える。
お酒を多く消費するのは中高年のため、そちらをターゲットにしているのか。
1L当たりの金額では、貿易収支が黒字化している。
量や金額ではまだまだ貿易赤字だが、まさに今が転換点だといえる。
●酒類の輸出金額内訳
上図は、『輸出金額の推移』と『2011年、2016年、2021年の内訳』と『伸び率』である。
国のバックアップもあり、清酒が多く輸出されるようになってきたが、
金額ベースでもっとも輸出されているのはウイスキーである。
世界的なウイスキーブームもあり、ジャパニーズウイスキーにも世界の注目が集まっている。
2011年を1として見ると、国内消費の低迷から、海外展開に舵を切っているため、
どの酒類も伸びているが、ジンの伸び率が異常である。
2011年のジン輸出はほとんどなかったが、2016年から一気に増え始める。
これが世に言うジンブームなのだろう。
ラムやウォッカも伸びてきている。
清酒やウイスキーに比べると、まだまだ少ないが、これから面白くなってきそうだ。
●酒類の輸入金額内訳
上図は、『輸入金額の推移』と『2011年、2016年、2021年の内訳』と『伸び率』である。
ウイスキーの輸入金額は約2倍に増えている。
ワインも1.8倍になっている。
しかし、他の酒類の勢いは弱い。
輸出での伸び率が凄まじいジンの輸入はそれほど伸びていない。
国内消費の弱さが顕著である。
●あとがき
日本はこれまで多くのお酒を輸入してきたが、今後は国内での酒離れが進むことで、
さらに輸入量も減っていくことが予想できる。
酒類製造元は、国内でのパイの取り合いがますます厳しくなりそうだ。
嗜好の多様化、人口減少、増えない所得などの問題を考えると、
国外に販路を見出すことが重要になってくる。
中長期的視点で経営しなければ、気付いた時にはもう遅い、
ということになりかねないのが日本の現状だろう。