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●製麦(麦芽化)する理由
麦を製麦する理由は、酵母が作用できる大きさの糖に、デンプンを分解するため。
また、タンパク質を分解して酵母の栄養源であるアミノ酸をつくるため。
麦は冬を越すためにデンプンを蓄えている。
デンプンは大きな分子構造をしていて、エネルギーとして使いやすい糖に分解してから、
芽、根、茎、葉などを作る。
デンプンを糖に分解する酵素がアミラーゼである。
麦を冷蔵庫に入れて強制的に『冬』の環境をつくりだしてから、
暖かいところに移して『春』と勘違いさせて水を与える。
そうすることで麦は発芽し、酵素がデンプンを分解し始める。
芽をどんどん成長させてしまうと糖が減ってしまうので、
酵素の働きを止めるために焙燥する。
●麦芽の焙燥
麦芽は発芽した麦を焙燥したものであり、焙燥温度が低いと薄い色の麦芽となり、
温度が高いと濃い色の麦芽となる。
乾燥のさせ方により様々な種類の麦芽があり、「色麦芽」と呼ばれ、
ビールの色や香りの特徴づけに使用される。
- ペールモルト(淡色麦芽)
80℃くらいの温度で時間をかけて焦がさないように焙燥させた麦芽。
最も多くのビールに使用されている基本の麦芽。
- ウィートモルト(小麦麦芽)
小麦の麦芽。タンパク質を多く含むためビールを白濁させる作用がある。
フルーティーで泡持ちの良いビールを造ることができる。
- ウィンナーモルト
色麦芽。ペールモルトよりやや高温で乾燥させたもの。
赤みがかった色みと、ナッツのような香ばしさが特徴。
- カラメルモルト
色麦芽。麦芽に水を含ませてから乾燥させたもの。
カラメル香の強い、甘みのあるビールになる。
- チョコレートモルト
色麦芽。100℃以上の高温で焙燥する。
名前の通り、チョコレートのような色。
ウィンナーモルトと同じく、香ばしいナッツの風味を持つ。
- ブラックモルト(黒麦芽)
色麦芽。高温(120℃くらい)で焦がしたもの。
スモーク臭がつくものもあり、スタウトなど、黒いビールに使われる。
●ビールの色
ビールの色は使用する麦芽の色によって決まる。
色麦芽を使うことによって、色は濃いのにさっぱりしたビールや、
色は薄いのに味わい深く、アルコール度数の高いビールなど
バリエーション豊富にビールを設計することができる。
このため、色から味やアルコール度数などを判断するのはナンセンスである。
●あとがき
世界的にみて、ビールやウィスキーの生産量が年々増えているため、
異常気象などで大麦生産に影響が出れば、ビール価格の高騰に繋がる。
小麦の高騰による麺類やパンなどへの影響はニュースでよく見かけるが、大麦はあまり見かけない。
大麦は主食になるものが少ないため(麦ごはんくらい?)、あまり話題にならないのだろうか。
何にせよ、ビールやウィスキーを飲むものとしては価格高騰などせず、安定供給であることが望ましい。