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「飲む点滴」と呼ばれるほど栄養価の高い甘酒には、
驚くほどたくさんの健康効果がある。
●エネルギー補給
通常、デンプンは、食物を摂取すると体内でブドウ糖に分解される。
分解されたブドウ糖の状態が、エネルギーとして取り込める状態なのである。
甘酒にはすでに栄養素が分解された状態で含まれている。
これは、発酵の際に麹が持つ酵素によって分解が行われる。
すでに分解されているため、体内ですぐにエネルギーを吸収することができる。
甘酒に含まれるビタミンB1、B2、B6、葉酸などのビタミンB群は、
エネルギーを素早く体内に取り込む助けとなる。
●腸内環境改善
甘酒を作る際に使われる麹菌には、腸内環境を整える働きがある。
さらに、甘酒に含まれる植物性乳酸菌やオリゴ糖が、善玉菌を活性化する。
善玉菌が活発に働くことで、腸内環境が整う。
腸内環境が改善されることで、便通が良くなり、体内の老廃物が排出される。
つまり、新陳代謝が上がることで肌トラブルの改善につながる。
他にも、腸内フローラ(腸内細菌叢)において、善玉菌が優位になると免疫力が上がる。
腸には体内の免疫細胞の7割が集まっているといわれている。
免疫力アップによって、ウイルスや病原菌に対して抵抗できる身体になる。
●疲労回復
タンパク質を分解してできるアミノ酸には疲労回復効果がある。
すでに分解されたアミノ酸の状態で摂取することで、短時間で疲労を回復できる。
他にも甘酒にはブドウ糖やビタミン類、食物繊維などが含まれており、
甘酒は栄養ドリンクのようなものである。
●夏バテ防止
俳句では、甘酒は夏の季語とされている。
江戸時代には、夏の風物詩として、甘酒を売り歩く光景が日常的だった。
夏の暑さに耐えられるように、エネルギーを補給し、
体調を整えて、免疫力を上げる。
これだけの効果がある飲み物を手軽に買えるように、
幕府が補助金を出して安価に抑えていたといわれている。
●悪玉コレステロール値低下
近年の研究で、甘酒に含まれるレジスタントプロテインにより
悪玉コレステロールの値を下げる効果があることがわかった。
レジスタントプロテイン(難消化性タンパク質)の一種であるプロラミンは、
食物繊維と近い機能を持ち、コレステロール値低下や便通改善効果があるとされる。
●体内酵素について
人間の体には5000~10000種の酵素があるといわれている。
体内で作られる酵素量は、遺伝子によって決まっており、その量は加齢により減少する。
体内で作られる酵素は、『潜在酵素』と呼ばれ、代謝と消化の2つの役割がある。
『代謝酵素』は身体の新陳代謝や基礎代謝に使われ、
『消化酵素』は摂取した食べ物を分解する。
限りある潜在酵素を効率よく使うには、分解済みの栄養分を摂取することで、
消化酵素の役割を減らし、その代わり代謝酵素の働きを増やすことで健康な身体が維持できる。
また、代謝酵素は外部から補えないが、消化酵素は外部から補える。
甘酒にも消化酵素が含まれているので、健康に役立つ。
・甘酒の1日摂取量
甘酒が身体に良いからといって、飲み過ぎは良くない。
麹甘酒は砂糖を使わないとはいえ、糖分はある。
濃度にもよるが、1日に150~200㏄程度が望ましい。
また、一気に飲むよりも2、3回に分けて飲む方が、効率的に吸収できる。
●あとがき
つい新しいものに目が移りがちになるが、昔から飲み続けられてきた甘酒は、
多くの日本人に健康をもたらすだろう。
腸内環境を整えるといえば、ヨーグルトが代表的だが、乳製品が合わない日本人が意外と多い。
長い歴史の中で、日本人が乳製品を摂り始めたのは最近のことである。
身体が変化に追いついていないのだろう。
新しいものも良いが、日本古来の食品を見直すことで、新たな価値を見出せるかもしれない。