文字数:約1900文字
お酒に関係することわざを集めた。
昔の人たちの、お酒に関する言い習わしを見てみよう。
●新しい酒は新しい革袋に盛れ
新しい考えは、新しい表現によるべきだという意味。
「新しい葡萄酒を古い革袋に入れると張り裂けてしまう。
新しい革袋に入れれば酒も革袋も保たれる」というイエスの言葉。
原義は「キリストの教えは古い心にはそぐわず、信者の一新された心にこそ、ふさわしい」。
出典は「新約聖書」マタイ伝。
●選んで粕を掴む
あれこれ選り好みしたあげく、一番つまらないものを選んでしまうこと。
「粕」は(酒を造ったあとの)残りカスの意味。
類語には、選れば選り屑(よればよりくず)、がある。
●駆けつけ三杯、逃げ逃げ五杯
酒宴に遅れてきた人に三杯、帰る人に五杯、酒を飲ませる罰のこと。
または、酒宴に遅れて駆けつけ、続けざまに三杯飲み、
帰ると言いながら五杯以上飲む、酒好きの意味もある。
●葷酒(くんしゅ)山門に入るを許さず
臭みの強い野菜や酒は、修行の妨げとなるから寺門の中に持ち込んではならないという意味。
「葷(くん)」は、強い臭いのネギ、ニンニク、ニラなどの野菜。
●酒買って尻切られる
好意で相手にしたことが、逆に仇で返されることの例え。
酒を買ってきてごちそうしたのに、相手が酔って、尻を切られる目にあわされたこと。
類語として、恩を仇で返す、がある。
●酒に十の徳あり
百薬の長、延寿、人和、忘憂、耐寒、など酒には十種類の利点があるとされる。
●酒は憂いを払う玉箒(たまははき)
酒は、悩み事を忘れさせてくれる素晴らしい箒(ほうき)のようなもの。
「玉箒」は箒(ほうき)の美称。
類語には、酒は天之美禄や、酒は百薬の長、がある。
●酒は飲むとも飲まれるな
酒は適度に飲むならよいが、理性を失うほど飲んではいけない。
酒に飲まれてしまうような飲み方を戒めた言葉。
類語には、酒は飲むべし飲むべからず、がある。
●酒は百薬の長
酒は適量なら、どんな優れた薬よりも身体に良いということ。
酒を賛美する言葉。
対語には、酒は百毒の長、がある。
類語には、酒は憂いを払う玉箒、酒は天之美禄、がある。
●酒池肉林
酒や肉が豊富にある、贅を尽くした宴会。
中国殷の紂王が、酒の池を作り、肉をかけて林のように並べ、
贅沢をきわめた酒宴をしたという故事より。
●酔生夢死(すいせいむし)
何をするでもなく、ただぼんやりとして無意味に一生を過ごすこと。
酒に酔って夢の中にいるような心地のままで一生を終えるという意味。
●糟糠(そうこう)の妻は堂より下さず
貧しい頃から長年苦労した妻を、成功した後も大切にすること。
「糟糠」は酒粕や米糠で、粗末な食べ物。
「堂」は座敷のこと。
●斗酒(としゅ)なお辞せず
大酒飲みのこと。
「斗」は10升で、約18リットル。
大量の酒でも断らずに飲んでしまうという意味。
●生酔い(なまよい)本性違わず(たがわず)
酒に酔ったからといって、その人の本性まで変わってしまうわけではない。
酔うと人が変わるのは、実は本来の性分が露見するだけだということ。
●杯中の蛇影(はいちゅうのだえい)
猜疑心からつまらぬことを気に病んだり、脅えたりすること。
杯の酒の中に蛇がいたのを無理して飲み下し、それが気になって病気になった人が、
その蛇は実は酒に映った絵にすぎなかったと知ったとたんに病気が治ったという故事から。
類語に、疑心暗鬼を生ず、がある。
●人酒を飲む酒酒を飲む酒人を飲む
酒を飲み進むにつれ自制を失い、ついには悪酔いしてしまうさまをいう。
楽しく飲んでいた酒も、やがて惰性となり、しまいには酒に飲まれてしまうようになること。
類語には、一杯は人酒を飲み、二杯は酒酒を飲み、三杯は酒一飲む、がある。
●冷や酒と親の意見は後の薬
親の意見は、後日しばらくしてからその意味が悟られ、
ありがたく身に染みるものだという例え。
冷や酒を飲むと、その場よりもむしろ後で酔いが回ることから。
●忘憂の物
お酒のこと。
憂いを忘れさせるものという意味。
類義には、酒は憂いを払う玉箒、がある。
●酔いどれ怪我せず
無我の心境にあるものは失敗を犯さないという例え。
酒によって正体をなくすと危なげな足取りのわりに意外と事故にも遭わず、
転んだりしても大怪我をしないことから。
●あとがき
お酒による失敗を戒める言葉が多いようだ。
このような習わしが残っていても、お酒で失敗していしまうことはなくならない。
たまに、これらの言葉を見ながら、気軽に飲むのが一番良いと思う。