文字数:約1400文字
テキーラの原料は、竜舌蘭(リュウゼツラン)の一種である、アガベ・アスルである。
テキーラには、アガベ・アスルの葉を切り落とした球茎の部分が使われる。
テキーラに使えるサイズに成長するには、5~8年ほどかかる。
●アガベ・アスルとは
・学名
アガベ・アスルの正式な学名は、「Agave tequilana Weber variedad azul」である。
Weberは、ドイツの植物学者フランツ・ウェーバーからきている。
アガベの分類を行い、学会で発表する際に、自分の名を学名を付けたのである。
和名の竜舌蘭は、最初に見た人が「竜の舌のようだ」と感じたのだろうか。
よく見た目を表していて覚えやすい。
アスル(azul)は、青の意味で、アガベ・アスルはブルーアガベとも呼ばれる。
・サボテンではない
アガベはサボテンの仲間だと思われていることが多いが、ユリ科の植物である。
確かにサボテンとの類似点は多いが、部類としてはアスパラガスに近い。
ポルフィディオの瓶内にサボテンのオブジェがあることなどが、
誤解を広めているのだろうか。
・生息環境
アガベ・アスルの生育条件は、海抜600~2500mの標高に、年間250日以上の晴天日、
平均気温20℃以上とされている。
メキシコの適正地以外では、オーストラリアや南アフリカの一部のみで
栽培可能だといわれている。
ただし、栽培できたとしてもそこで造られた蒸留酒はテキーラとは名乗れず、
アガベスピリッツとなるのである。
・アガベの花
アガベ・アスルは7年ほど経つと、
キオーテという花茎を伸ばす。
その高さは5m以上になることもある。
花茎の上部に小さく黄色い花を複数咲かせ、受粉する。
しかし、花茎を伸ばすには蓄えたエネルギーを使うため、
テキーラに使用するのものは花茎を伸ばす前に収穫するか、
花茎が伸び始めると切り落としてしまう。
・球茎(ピニャ)
テキーラに使うのは球茎の部分で、葉を切り落とした状態が
パイナップルに似ていることから、ピニャ(パイナップルの意)と呼ばれる。
ピニャの重さは30㎏以上となり、トラックがなければ大量に運べない。
ラムベースのカクテルで、ピニャ・コラーダとというものがあるが、
パイナップルジュースを使うことからピニャの言葉が使われている。
・繁殖
テキーラ用のアガベをどのように繁殖させるかというと、一般的には受粉はさせない。
受粉させない理由は2つある。
1つは、自然受粉では別の種のアガベと交雑してしまう可能性がある。
もう1つは、アガベは変異が発生しやすいためである。
では、どのように繁殖させるのかというと、子株を使うのである。
アガベは、竹と同じように地下茎を伸ばして株を増やす。
この子株(イフエロス)を収穫して、栽培するのである。
こうすることで、アガベ・アスルが交雑することもなく、
また、変異種が発生することもなく、栽培ができる。
ただし、クローン栽培のようなものなので、病気や害虫などに侵されると
一気に広まるというデメリットもある。
テキーラの基礎知識 ↓
●あとがき
テキーラの原料は他のお酒と比べてかなり特殊である。
まず、生育期間が5年以上かかるという、異常な長さだ。
他のお酒の原料は、1年で収穫できるものがほとんどである。
生育可能な環境も狭い範囲に限られている。
特殊な原料で造られたテキーラが世界中に広まっているのは、奇跡的といえる。