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シェリーの造り方は、辛口か極甘口かで大きく変わる。
ここでは極甘口シェリーの造り方を紹介する。
甘口シェリーは、辛口シェリーをベースにブレンドされて造られる。
●極甘口シェリーの造り方
・製造フロー
極甘口シェリーは以下の工程順で造られる。
天日干しされることのが、大きな特徴である。
- ブドウ栽培/収穫
- 天日干し
- 除梗(じょこう)/破砕/搾汁
- 発酵
- 酒精強化
- 熟成
①ブドウ栽培/収穫
極甘口シェリーに使われるブドウは、ペドロ・ヒメネス種と、モスカテル種の2種である。
ブドウ栽培地域は限定されており、その多くがアルバリサと呼ばれる、
炭酸カルシウムと二酸化珪素の多い、白い土壌で栽培される。
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②天日干し
天日干しの工程はソレオと呼ばれる。
収穫したブドウを、エスパルトという草で作ったござの上に広げ、天日にさらす。
天日干しは1~2週間程度続けられる。
夜間はブドウが夜露に濡れないよう、カバーをかける。
天日干しされることで、ブドウは干しブドウとなり、甘味、濃度、粘りが増す。
似た製法として、イタリアの「パッシート」や「レチョート」があるが、これらは陰干しであり、
極甘口シェリーの場合は、天日干しであるという違いがある。
③除梗(じょこう)/破砕/搾汁
干しブドウの状態での搾汁は、通常よりも時間がかかる。
潰すことで得られる果汁(モスト)は、粘土が高く、ドロッとしており、色も濃い。
そしてなによりも甘味が強い。
④発酵
発酵途中で、蒸留酒(グレープ・スピリッツ)を加えて、発酵を止める。
糖分を残すことで、甘さを保持できる。
蒸留酒を加えることで、アルコール度数は10%程度になる。
その後、静置し、澱引きを行う。
⑤酒精強化
澱引きを終えたワインに、蒸留酒が加えられる。
酒精強化に使われる蒸留酒は、ブドウ由来でなければならない。
それは、高アルコール度数のブランデー(グレープ・スピリッツ)や、
ブランデーに白ワインを混ぜてアルコール度数を抑えたものなどが使われる。
酒精強化によって、アルコール度数が15~17%に高められる。
⑥熟成
酒精強化されたワインは、樽に詰められ、動的熟成と呼ばれるソレラ・システムに組み込まれる。
・ソレラ・システム
ソレラ・システムとは、一番古い樽から出荷し、減った分を二番目に古い樽から補充し、
二番目の減った分を三番目から補充し、、、という仕組みである。
一番古い樽をソレラとよび、その上を第1クリアデラ、第2クリアデラ、第3、、、となる。
ソレラの語源は、一番床に近いので、スペイン語の「床」を意味するスエロからきている。
クリアデラは、「育児所」という意味で、「育てる」というクリアールからきている。
最も若い樽はソブレタブラと呼ばれ、「板の上」という意味で、
ソレラに入る前に板の上に置かれることから。
ソレラ・システムの利点は、品質を安定させることができる点にある。
異なる年の樽を複数混ぜることで、品質を均一化し、安定性を維持できる。
ソレラ・システムは、一部のラム酒でも使われている。
似た仕組みとして、泡盛の「仕次」がある。
●甘口シェリーのつくり方
甘口シェリーは、辛口シェリーに極甘口シェリーや濃縮精留果汁(MCR)をブレンドして造られる。
極甘口シェリーは、プルーン・エキスのように濃い色のため、ブレンドすると色も味も濃くなる。
MCRは、透明に近い色合いで、ブレンドしても濃色にならず、味わいも重くならない。
また、MCRはアルコールを含まないため、ブレンドするとアルコール度数を下げることができる。
・M.C.R.(Mosto Concentrado Rectificado)
MCRは、ブドウ濃縮果汁をイオン交換樹脂で精製し、
その後、フィルター処理と低温加熱殺菌処理が行われて造られる。
無色に近く、MCR単体ではわずかな甘味があるくらい。
しかしブレンドに使うと、しっかりとした甘味が現れる。
MCRは、シャンパーニュの補糖(ドサージュ)にも用いられる。
●あとがき
甘口ワインにもいろいろあるが、おそらく極甘口シェリーが最も甘味とコクが強いのではないだろうか。
コクのある甘味と、とろっとした粘りが至福である。
見かけたら是非、デザートとして味わっていただきたい。