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ポートワインの造り方のポイントは、なんといってもの酒精強化にある。
酒精強化するタイミングでワインの甘さが決まる。
ポートワインの造り方を見てみよう。
●製造フロー
ポートワインは以下の工程順で造られる。
発酵までは通常のワインと同じである。
- ブドウ栽培/収穫
- 除梗(じょこう)/破砕/搾汁
- 発酵
- 酒精強化
- 熟成
①ブドウ栽培/収穫
ポートワイン用のブドウ栽培は原産地呼称制度のもと、
ドウロ地域内の約26,000ヘクタールに限られている。
ドウロ川周辺の栽培地は傾斜が多い。
その栽培地はさらに3つの地域に区分されている。
下流側から「バイショ・コルド」、「シマ・コルド」、「ドウロ・スペリオール」である。
収穫は8月下旬から10月中旬にかけて行われる。
・バイショ・コルド
バイショとは「低い(Lower)」の意味。
3地域の中でもっとも東側にあり、大西洋からの海風によって涼しい。
面積は小さいが、面積当たりのブドウ畑の割合は多い。
もっとも古くからポートワインのブドウを栽培している。
・シマ・コルド
シマは「高い(Upper)」の意味。
3地域のなかでは2番目に大きい面積があり、ブドウ栽培面積は最大である。
古くからブドウを栽培しており、ポートワイン用のブドウ栽培の中心地域。
・ドウロ・スペリオール
一番西側の地域であり、スペインとの国境に面している。
面積は一番広いが、面積当たりのブドウ栽培面積は小さい。
土地の開発が遅れたのが原因だが、現在は他の地域よりも大規模な農場が多い。
②除梗(じょこう)/破砕/搾汁
ブドウについている茎や果梗(かこう)も取り除く。
同時に、収穫したブドウを軽く潰すことで、果汁(モスト)を得る。
現在では、機械で行われることが多いが、昔ながらの製法にこだわる生産者もいる。
伝統的な製法では、「ラガール」という石でできた桶(プール)のなかで、足踏みして行われる。
通常のワインと同様に、黒ブドウは皮や種はそのままに、白ブドウは果汁だけを使う。
③発酵
得られた搾汁液(モスト)を容器に入れて発酵させる。
酵母は生産者によって、自然酵母だったり、培養酵母だったりする。
④酒精強化
ポートワインの特徴である甘さは、発酵を途中で止めることで得られる。
発酵は、酵母がブドウの糖分をアルコールと二酸化炭素に分解して行われる。
糖分がすべて分解される前に、蒸留酒を加えて発酵(酵母の働き)を止める。
酵母はアルコール度数が高い環境では失活(死滅)してしまうのである。
残された糖分のおかげで、ブドウの甘さが保たれる。
添加されるのは、アルコール度数は約77%のブドウの蒸留酒(グレープ・スピリッツ)である。
発酵液4に対して、蒸留酒1の割合で添加される。
これによりアルコール度数は17~20%程度にする。
酒精強化の目的はシェリーと同様に、アルコール度数を高めることで、
長い航海に耐えるためとされている。
ワインが航海中に酸っぱくなってしまうのを防ぐために、スピリッツが足されたとされる。
⑤熟成
ポートワインは、最低3年の熟成が必要とされる。
熟成はブドウ生産地のドウロ地域か、ドウロ川河口の町ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアで行われる。
輸出用はガイアで熟成されることがほとんどである。
ポルトやガイアには、「ロッジ」と呼ばれる、ポートワインの貯蔵熟成庫が多数ある。
各メーカーのロッジでは、倉庫見学ができ、試飲や購入もできる。
●あとがき
ポートワインの貯蔵熟成庫であるロッジには一度行ってみたいものだ。
倉庫を見学した後は、テラス席でドウロ川を眺めながら、ポートワインをいただき、優雅に過ごす。
ポルトガル観光の人気ツアーである。