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ラムの原料はサトウキビである。
他には水と酵母である。
サトウキビそのものと、サトウキビが加工された状態について見てみよう。
●サトウキビについて
サトウキビについて詳しく知っている人は多くない。
砂糖の原料やサトウキビ畑などがイメージされる。
サトウキビは、『砂糖黍(さとうきび)』、『甘蔗(かんしょ)』とも書かれる。
焼酎好きが知っている『甘藷』はサツマイモのことである。
サトウキビはイネ科サトウキビ属の熱帯性草本、つまりイネ科の多年草である。
1万5000年前のインド周辺が原産とされ、品種は数百種あるといわれる。
栽培起源種はサッカラム・オヒキナラム(Saccarum officinarum)であり、
その祖先種がサッカラム・ローバスタム(Saccarum robustum)とされている。
サッカラム・オヒキナラムが自然交雑や突然変異を繰り返して、
暑さに強い品種となったのがサッカラム・バルベリ(Saccarum barberi)であり、
カリブ諸島に持ち込まれた品種である。
その後、サトウキビは人工的に品種改良がおこなわれ、
砂糖を効率よく生産できる品種が開発された。
ラム造りにも砂糖用に改良されたものが数品種混ぜて使われている。
●ラム使われる3つの状態
ラム造りに使われるサトウキビには3つの状態がある。
それぞれについて説明する。
- 糖蜜
- サトウキビジュース
- 搾汁濃縮シロップ
・糖蜜
サトウキビから砂糖を精製する際の副産物として糖蜜が得られる。
糖蜜はモラセスや廃糖蜜とも呼ばれる。
この糖蜜を発酵させて造られるラムがトラディショナルラムである。
もっとも伝統的は製法である。
糖蜜は冷蔵保存できるため、通年でラム生産ができる。
ラム生産の9割以上がトラディショナルラムであるのは、
通年生産ができることと、砂糖の副産物が原料であることが理由である。
これらの理由により、生産コストを抑えることができる。
サトウキビの風味は砂糖精製時にほとんどなくなるため、
トラディショナルラムからは原料由来の風味は弱い。
・(砂糖と)糖蜜の製造方法
- サトウキビを圧搾して搾汁を得る
- 搾汁を加熱・濃縮する
途中で石灰乳を少量加えて不純物を取り除き、煮詰める - 濃縮液に種糖を加え、結晶化させる
- 遠心分離機で砂糖と糖蜜を分離する
・サトウキビジュース
サトウキビジュースは、サトウキビを圧搾した搾汁である。
砂糖を精製せずにそのままラム造りに使う。
造られたラムをアグリコールラムという。
サトウキビジュースは時間が経つにつれて劣化するため、
サトウキビ収穫後すぐにラム造りに取り掛かる必要がある。
このためサトウキビの収穫時期にしか造ることができない。
生産時期が限られることで大量生産できず、高価格になってしまう。
サトウキビジュース100%を使うため、原料由来の風味や味わいがしっかりと表れる。
まさにサトウキビのお酒と呼ぶにふさわしい。
・搾汁濃縮シロップ
サトウキビから砂糖を精製せず、搾り汁を加熱濃縮してシロップにしたもの。
造られたラムはハイテストモラセスラムという。
サトウキビジュースを加熱濃縮することで、
冷蔵保存が可能となり、通年生産ができる。
しかし加熱することでサトウキビの風味が少なからず飛んでしまう。
コストも風味もトラディショナルとアグリコールの間になる。
サトウキビ生産地以外でラムを生産するメーカーにとっては、
糖蜜よりもサトウキビの風味を残しているので重宝されている。
●あとがき
日本では沖縄と鹿児島でサトウキビ栽培がされている。
主目的は当然砂糖生産である。
他には黒糖生産もあるが、ラム造りに使われるのは微々たるものである。
日本でのラム造りが増えれば、国産のサトウキビ生産量も増えるのかもしれない。