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●国柄 [ドイツに並ぶビール大国]
九州よりも小さな国土に約140もの醸造所があることを考えると、
面積密度では世界一かもしれない。
公用語がドイツ語、オランダ語、フランス語と3つあり、多彩な文化を持つことから、
銘柄は1000以上あるといわれ、ビール造りへの寛容さがみられる。
地域は南北に2分されており、北部はフランデレン(フランダース)地方、
南部はワロン地方で、それぞれで造られるビールの傾向が違う。
●種類 [個性あふれるバリエーション]
ベルギービールは、ハーブやスパイスを使ったものが多くあり、独特の風味を味わえる。
スタイルとしては主にエール(上面発酵)で、
ビールに対して専用グラスや専用コースターがあるのも楽しい。
以下、ベルギーの代表的な種類の一部を記述する。
◆エール(上面発酵)
・ベルジャンスタイル・ホワイトエール
小麦をそのまま使ったいるため、白濁している。
コリアンダーとオレンジピールで香り付けしており、
スパイシーでフルーティーなのが特徴。
ドイツのヴァイツェンは小麦麦芽しているところに違いがある。
・ベルジャンスタイル・ペールエール
ホップのキャラクターが良くて出ている銅色のエールビール。フルーティーで飲みやすい。
・フランダース・レッドエール
フランデレン(フランダース)地方の西部で造られる、赤みを帯びたビール。
甘味と酸味の調和を楽しめる。
・フランダース・ブラウンエール
フランデレン(フランダース)地方の東部で造られる、赤みを帯びた褐色のビール。
香ばしさと酸味の融合を楽しめる。
・セゾンビール
農民が夏の農作業中に飲むために、冬に仕込んだ自家醸造が起源のビール。
防腐のためにホップを大量に投入していることで、苦みが強いものが多い。
・修道院ビール
トラピストとアビイに分類される。
個々の修道院には独自のレシピがあり、味わいも様々だが、あえて共通点を述べると、
香りもアルコール度も高めのどっしりとした味わい。
詳細下記参照。
◆自然発酵
・ランビック
野生の酵母を使った、酸味の強いビール。
詳細下記参照。
●修道院ビール [トラピストとアビイ]
トラピストは『トラピスト会修道院』で造られるビールのみを呼び、
アビイはそれ以外の修道院で造られたビールや、
修道院から委託された民間醸造所が造るビールのことを指す。
わざわざ分けて呼ぶようになったのは、
トラピスト修道会が商標権を守るために政府に要請し、それが認められたため。
トラピストビールには厳格な決まりがある。
- トラピスト会修道院の敷地内の施設で、修道士によって、
あるいは修道士の指導のもとで醸造されること
- 利益を追求せず、売上から醸造にかかる経費を差し引いた収益は
すべて慈善活動に使われること
- ビールそのものが非の打ちどころのない品質であること
これらの基準を満たして選ばれた7か所のトラピスト修道院醸造所のうち
6か所はベルギーにあり、残り1か所はオランダにある。
ベルギー:アルン、シメイ、オルヴァル、ロシュフォール、ウェストマレ、ウェストフレテレン
オランダ:ラ・トラップ
ウェストフレテレンは修道院でのみ販売されるため、「幻のトラピストビール」と呼ばれている。
●ランビックビール [自然発酵]
空気中や木樽に宿っている野生酵母を使って自然発酵させたもの。
ブリュッセル近郊だけで造られるベルギー特有の伝統的なビール。
ベルギーでは19世紀になるまで自然発酵製法が主流だった。
昔ながらの日本酒でいう「蔵付酵母」を使うようなもの。
1年以上貯蔵した古いホップと野生酵母を、
2年以上の時間をかけてゆっくり自然発酵、熟成させる。
樽で熟成したものと新酒をブレンドする「グーズ(グース)」や、
クリーク(サクランボ)やフランボワーズといったフルーツを漬け込んだ
「フルーツランビック」が有名。
●あとがき
日本ではベルギービールウィークエンド(BBW)というビールイベントが
毎年数か所で行われているため、ベルギービールの認知度は高まってきていると感じる。
飲食店でもベルギービールを多く取り揃えているお店を見かけるようになってきた。
食事と合わせるのも良いが、アルコール度数の高い、フルボディなものは、
チーズやドライフルーツ、スイーツとも良く合うので、食後にゆっくりと味わいのもオススメ。