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日本ではお酒の消費量が年々減少しているといわれている。
人口減少による影響、多様化する嗜好、若者のお酒離れ、など様々な要因が挙げられている。
減少傾向にあるといわているが、全ての都道府県で減少しているわけではない。
ピーク時から消費量をキープしている鹿児島、ここ数年増加を続けている富山に注目である。
まずは全体のデータから順にみていこう。
データは国税庁のものを基にまとめた。
まとめたデータをお求めの方はこちら。
●お酒の消費量と成人人口
これら2つのグラフはお酒の消費量と成人人口の推移と、
一人当たりのお酒の消費量と成人人口の推移を表したものである。
まず、成人人口は2000年頃から1,050万人前後で高止まりして現在に至る。
日本の総人口が減り続けていることから、高齢者の割合が増えているということである。
高齢になるほど飲酒量は減るので、実際のお酒を飲む成人人口は減少していると考えられる。
お酒の消費量は1995年がピークで9,556千kL。
コロナ禍の2021年は7,721千kLで、ピーク時から2割ほど減少している。
2002年くらいまでは消費量をキープしていたが、その後は減少の一途を辿っている。
一人当たりのお酒の消費量は1992年がピークで年間101.9L飲んでいた。
コロナ禍の2021年は年間73.4kLで、ピーク時から3割ほど減少している。
1996年以降は減少を続けて現在に至る。
減少というワードばかりでネガティブな気分になるが、
この先は都道府県別のデータを見てみよう。
●都道府県別お酒の消費量
お酒の消費量は1995年がピークである。
各都道府県では東京がダントツで多いのがわかる。
消費量は成人人口に比例するので当然の結果といえる。
2021年の消費量の多い上位5都府県を抜き出した。
東京、大阪、神奈川、愛知、埼玉という人口の多い地域となる。
大阪や愛知はピーク時からの減少がわかりやすいが、
東京、神奈川、埼玉はピーク時の消費量を維持しているように見える。
7位の千葉もピーク時からの消費量を維持しており、
首都圏の人口の多さがそのままお酒の消費量の多さにつながっている。
消費量の少ない下位5県を見てみよう。
2021年のお酒の消費量が少ないのは鳥取、島根、徳島、福井、佐賀である。
5県ともピーク時から同じような減少傾向を示している。
消費量は人口に左右されるので、人口の多いところは消費量が多く、
人口の少ないところは消費量も少なくなるのでわかりやすい。
次に都道府県別の一人当たりのお酒の消費量について見てみよう。
前置きが長くなったが、ここから先がメインの話となる。
●都道府県別一人当たりのお酒の消費量
47都道府県と全体の一人当たりのお酒の消費量を表したグラフである。
ごちゃごちゃしていてわかりづらいが、
1990年頃は東京や大阪などの都市部で一人当たりの消費量が多かったが、
2021年では都市部との差が縮まっているように見える。
見やすくするために、上下5位を抜き出した。
2021年の一人当たりの消費量TOP5は、沖縄、東京、富山、青森、秋田。
下位5県は、滋賀、奈良、岐阜、岡山、三重である。
沖縄のデータは2004年からしか公表されていない。
変動幅が大きいのは、税制優遇や観光客数などの影響と考えられる。
消費量がダントツに多かった東京は、一人当たりの消費量にすると2位になる。
注目は富山の上昇であり、他の都道府県とは明らかに異なる。
富山の一人当たりのお酒の消費量は2015年頃から増加に転じている。
理由は2015年の北陸新幹線開業にある。
東京-金沢間の北陸新幹線が開通したことで、富山を訪れる観光客が増えたのである。
北陸新幹線の影響なら石川やその先の福井、途中の長野にもあるはず。
しかしお酒に関しては富山の独り勝ちなのである。
新幹線開業後の他県も観光客は増えているが、もっとも増加率が高いのが富山である。
理由は、山海の幸があることや、シンボル的な観光スポットが多いこと、
富山は石川や福井よりも関東エリアから近いことなどが挙げられる。
新幹線が開通したことで、地域が活性化する結果が顕著に表れているのが富山だといえる。
観光客がお酒を飲むことで消費量は増える。
そして地域経済が潤うことで地元民のお酒の消費量が増える。
良い循環が生まれていると感じる。
次はピーク時を100とした時の一人当たりのお酒の消費量を見てみよう。
これにより、どのくらいキープできているかがわかる。
●ピーク(1992年)を100とした一人当たりのお酒の消費量
全国のピークは1992年であり、その時点を100として推移を表した。
沖縄はデータが公表され始めた2004年を100とした。
ほとんどの都道府県がピーク時よりも減少しているなか、鹿児島が消費量を維持している。
鹿児島は一人当たりのお酒の消費量では、それほど多くなく、グラフで埋もれてしまっていたが、
このような表し方をするとよくわかる。
グラフから上下4位と東京を抜き出した。
上位は、鹿児島、富山、岩手、宮崎。
下位は、愛知、大阪、滋賀、兵庫。
東京もピーク時から大きく減少している。
鹿児島は1992年以降も高い消費量を維持し続けている。
最盛期よりは減少しているが、他県よりも減少幅が小さい。
要因は焼酎飲む文化が定着しており、それはお酒を飲む文化であるといえる。
他県でも焼酎や日本酒を飲むところはあるが、コンスタントに消費し続けているわけではない。
鹿児島は焼酎を長年コンスタントに消費している。
そのことがお酒全体の消費量を維持することにつながっていると考える。
地域にお酒を飲む文化が根付いているということでだろう。
●あとがき
お酒の消費量について見てきたが、鹿児島や富山の好例は明るい兆しである。
人口が多いだけではダメだということがよくわかる。
お酒の文化が地域に根付いていることや、お酒と観光を結び付けることが消費量を増やす一助となるのである。
簡単なことではなく、時間もかかるが、データとしてはっきりと結果が示されるのは良いことだと思う。
他県も地域にあった戦略を展開して、お酒の消費量を伸ばしてほしいと願う。
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