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心と身体を温め、脳はシャキッとする、それがアイリッシュ・コーヒーである。
冬の寒い日に飲んでよし、食後の口直しに飲んでよしのカクテル。
これからアイリッシュ・コーヒーのレシピや誕生背景を説明しよう。
●レシピ
材料/レシピ
- アイリッシュ・ウイスキー・・・30ml
- 砂糖・・・・・・・・・・・・・1tsp
- 生クリーム・・・・・・・・・・適量
- ホット・コーヒー・・・・・・・120ml
- 生クリームをよく泡立てる
- 耐熱グラスに生クリーム以外材料を入れ、ステアする
- 生クリームをフロートさせる
基本的には生クリームとコーヒーを混ぜずに飲む。
滑らかな生クリームを追ってコーヒーが口に入ると、渾然一体となった味わいを得られる。
コーヒーの苦味、砂糖の甘味、ウイスキーの素朴さ、生クリームのまろやかさ。
これらが複雑さと心地よさを与えてくれる。
主張し過ぎないアイリッシュ・ウイスキーならではの穏やかさが良い。
アルコールが心をあたため、ホットで身体が温まり、カフェインで脳がスッキリする。
砂糖はお好みで量を調整してもよい。
ホット・コーヒーは通常アメリカンで作るが、エスプレッソなど色々試しても楽しい。
ゆっくり味わいたい場合は、熱が逃げにくいグラスを使うことをオススメする。
●誕生背景
アイリッシュ・コーヒーは、1939年にアイルランドのフォインズ空港(現シャノン国際空港)で誕生した。
考案したのは、空港のレストランバーで働くジョセフ・シェリダン。
当時アメリカ-ヨーロッパ間の往来は、アイルランドで給油が必要だった。
アメリカからの便では、長時間のフライトで疲れた乗客が、給油のためフォインズ空港で待たされる。
空港ではアイリッシュ・ウイスキーを紅茶に入れたドリンクが提供されていたが、
アメリカ人の好みに合わせてコーヒーを使用したことでアイリッシュ・コーヒー誕生した。
その後、1952年にサンフランシスコのカフェ経営者ジャック・ケプラーが空港でアイリッシュ・コーヒーを味わう。
ケプラーはこのカクテルを気に入り、サンフランシスコの店(フエナ・ヴィスタ・カフェ)で提供を始める。
そしてこのカクテルは世界的に有名になるのである。
ちなみに、サンフランシスコでは『サンフランシスコ・コーヒー』の名で提供されていた。
現在のシャノン空港には、考案者ジョセフ・シェリダンの名を冠した『ザ・シェリダン・フード・パブ』があり、当時のレシピを再現したアイリッシュ・コーヒーが提供されている。
実は、アイリッシュ・コーヒーの原形は、19世紀半ばのウィーンだとする説がある。
そのカクテルにはホイップクリームが使われていたとか。
●バリエーション
バリエーションとして、ベースのアイリッシュ・ウイスキーを別のスピリッツに替えたものがある。
スコッチに替えると『ゲーリック・コーヒー』となり、独特のスモーキーさがコーヒーの苦味にマッチする。
コニャックに替えると『ロイヤル・コーヒー(カフェ・ロワイヤル)』になり、コーヒーの香りに芳醇さが加わる。
ラムに替えると『カリビアン・コーヒー』または『ジャマイカン・コーヒー』になり、サトウキビ由来の風味が味わえる。
ラムとコーヒー豆を同じ産地に合わせるのも良いだろう。
●あとがき
アイリッシュ・コーヒーの見た目は、白と黒のコントラストがアイリッシュ・スタウト・ビールに似ている。
黒いビールと白い泡のイメージがあったから、コーヒーに生クリームをのせる考えに至ったのだろう。
おそらくお酒とコーヒーを合わせるという発想は、他の人にもあっただろうし、やっていただろう。
その発想に加えて生クリームをのせたことが、アイリッシュ・コーヒーの素晴らしいところである。