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日本生まれの有名なカクテルはいくつかあるが、最初に誕生したのがバンブーである。
バンブーはいつ、どこで、誰が考案したのか。
誕生背景やレシピ、バリエーション・カクテルを見てみよう。
●レシピ
材料/レシピ
- ドライ・シェリー・・・・40ml
- ドライ・ベルモット・・・20ml
- オレンジ・ビターズ・・・1dash
- カクテル・グラスを冷やしておく
- 氷を入れたミキシング・グラスに材料をすべて入れ、ステアする
- 冷えたカクテル・グラスに、ストレーナーで濾しながら注ぐ
シェリーは、スペインの酒精強化ワイン。
ベルモットは、香草や果物を使って香りや風味を付けたフレーバードワイン。
シェリーもベルモットもドライ(辛口)を使う。
ステアでシェリーとベルモットは十分に冷やされており、香りはそれほど強くない。
オレンジ・ビターズの香りがほんのりとする。
キレのある辛口で、食前酒として最適なカクテル。
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●誕生背景
バンブーの誕生がいつ、どこで、誰が考案したのかを紹介しよう。
1890年に、横浜で、ルイス・エッピンガーによって考案された。
1889年にルイス・エッピンガーは、横浜のグランドホテル(現 ホテルニューグランド)で支配人に就任する。
エッピンガーはアメリカのサンフランシスコにあるホテルでシェフを務めていた人物である。
カクテルにも詳しかったエッピンガーは日本でも、ホテルメニューにカクテルを記載した。
そして『アドニス』というカクテルのレシピを少し変えて、『バンブー』を創作したのである。
バンブーは『竹』を意味する。
エッピンガーがいたアメリカでは竹は珍しいもので、あまり見かけることはなかった。
来日したエッピンガーは日常生活の様々な場面で竹が使われていることを知り、
インスピレーションを得て『バンブー』を創作したとされている。
元となったカクテル『アドニス』のスイート・ベルモットをドライ・ベルモットに替えた。
スイートをドライに替えることで、竹のまっすぐと伸びるイメージを表現したのだろう。
しかしカクテルの色は琥珀色をしており、青竹の緑ではない。
エッピンガーはホテルに就任した翌年の1890年に『バンブー』をメニューに載せて、
滞在していた外国人客に好評を得た。
そしてその客たちが世界に『バンブー』の存在を広めた。
それから20年後の1910年に世界的なカクテルブックで『バンブー』が記載されることとなる。
これが日本で誕生したカクテルが世界的に認められて最初の瞬間である。
ちなみにエッピンガーは、『バンブー』以外にも『ミリオン・ダラー』
というカクテルを1894年に考案している。
こちらも現代まで飲まれている名作である。
●バリエーション
上記したアドニスと、バリエーションではないが、
エッピンガー作としてミリオン・ダラーも紹介しよう。
・アドニス
材料/レシピ
- ドライ・シェリー・・・・・40ml
- スイート・ベルモット・・・20ml
- オレンジ・ビターズ・・・・1dash
- カクテル・グラスを冷やしておく
- 氷を入れたミキシング・グラスに材料をすべて入れ、ステアする
- 冷えたカクテル・グラスに、ストレーナーで濾しながら注ぐ
辛口のシェリーを甘口のベルモットが包み込む食前酒にぴったりのカクテル。
シェリーとベルモットを同量にするレシピもあり、そちらはより甘口になる。
アドニスとは、ギリシャ神話に登場する「美の女神ヴィーナスに愛された美少年」のこと。
アメリカのニューヨークで講演されたミュージカル「アドニス」の500回上演のヒットを記念して、
ウォルドーフ・アストリア・ホテルのバーで考案されたという。
1884年の誕生なので、当然バンブーの前である。
エッピンガーはサンフランシスコで働いていた時に、『アドニス』を知ったのだろう。
そして日本でアドニスをアレンジし、バンブーが誕生した。
・ミリオン・ダラー
材料/レシピ
- ドライ・ジン・・・・・・・・45ml
- スイート・ベルモット・・・・15ml
- パイナップル・ジュース・・・15ml
- グレナデン・シロップ・・・・1tsp
- 卵白・・・・・・・・・・・・1個分
- シェーカーに氷と全ての材料を入れて、シェークする
- グラスに注ぐ
- お好みでカット・パイナップルを飾ってもよい
ジンのジュニパーな香り、ベルモットのフレーバー、パイナップルの甘さ、
卵白のなめらかな口当たりに仕上がっている。
ミリオン・ダラーは「100万ドル」を意味している。
エッピンガーは横浜の夜景をこのカクテルで表現したのだろうか。
●あとがき
日本で最初に誕生したカクテルは他にもあるかもしれない。
厳密にいうとバンブーは、世界的なカクテルブックに最初に載った日本のカクテルということになる。
世界的なカクテルブックに載るかどうかで、そのカクテルの運命が決まる。
現在に通じる話であり、無数のカクテルが誕生して、人知れず消えていく。
ほんの一握りのカクテルだけが世界に名を馳せるのである。
バンブーはその幸運を掴んだのである。