文字数:約1900文字
スコットランドの蒸留地域は、大きく6つに分けられる。
アイラ、アイランズ、キャンベルタウン、ローランド、ハイランド、スペイサイドである。
地域の環境や歴史から特徴が見えてくる。
6つの区分の中でもハイランドは最も広大な地域である。
それゆえに蒸留所がある場所も海岸、森林、山麓、平野などさまざまであり、
そこで造られるウイスキーに大きな影響を与える。
ハイランド地域は広大であるため、さらに東西南北の4つに分けられる。
北ハイランド、西ハイランド、東ハイランド、中央ハイランド(南ハイランド)である。
中央ハイランドと呼ばれるのはスコットランド全体で見た時に中央に位置するためである。
ハイランドとローランドは想定境界線として、
西のグリーノッグから東のダンディーを結ぶラインが一般的であるが、
厳密な定義や規定はない。
●バルブレア
・基礎データ、場所
- 蒸留所名:バルブレア蒸溜所
- 英 字:Balblair
- 意 味:平らな土地にある集落
- 創 業:1790年(1894年)
- 仕込み水:オルト・デアグ川
- 蒸留器 :ストレート型
- 現所有者:タイ・ビバレッジ社
- 輸入元 :三陽物産(株)
スコットランドの本土北東のドーノック湾南岸の町エダートン近くにある蒸留所。
バルブレア蒸留所から南東へ数キロの場所にはグレンモーレンジィ蒸留所がある。
蒸留所は古き時代の佇まいを残しており、
スコットランドの伝統的蒸留所のイメージにぴったりである。
そのため、映画やドラマ、写真撮影などのロケ地としてよく利用されている。
有名な映画として、ケン・ローチ監督の「天使の分け前」(2013年)でも使われた。
ボトルはずんぐりとした特徴的な形状をしている。
ラベルには古代ピクト人が残したシンボルマークが描かれている。
古代ピクト人は約3000年以上前にこの地で生活していたとされている。
蒸留所の隣に「クラークビオラッハの立石」があり、そこに刻まれている模様だという。
・特徴
・味わい
麦芽はノンピートのものが使われている。
繊細でフルーティーな味わい。
ポットスチルの背は低く、ストレート型のため、
通常は力強く、はっきりとした味わいになりそうだが、
時間をかけてゆっくり蒸留することで、繊細でフルーティーな風味となる。
また、発酵にも時間をかけていることも影響している。
・バルブレアの歴史
バルブレア蒸留所の歴史は、1790年にジョン・ロスが蒸留所を建設したことから始まる。
1790年創業とういうのは、スコットランドでもかなり早い。
現在稼働する蒸留所の中でも5本の指に入るのではないだろうか。
1862年、蒸留所ある地域に鉄道路線が開通したことがのちの展開につながる。
バルブレア蒸留所の所有権はロス家からワイン商のアレクサンダー・コーワンに移る。
1894年にアレクサンダーは蒸留所を鉄道に近い数キロ先の土地へ移転させる。
ここが現在の蒸留所がある場所である。
鉄道を利用することで、原料や蒸留所で使う燃料などの輸送を効率化されたが、
17年後の1911年にはウイスキー市場の低迷などにより、閉鎖に追い込まれる。
第二次世界大戦中はイギリス軍に接収されたり、ノルウェー軍に占拠されたりと、
蒸留所には苦難の年月が続く。
そして1948年にバンフの弁護士ロバート・ジェームス・バーティー・カミングによって、
4万8000ポンドという破格の金額で購入され、操業が再開する。
その後、ウイスキーの需要が回復し、蒸留所は拡張、設備も新調される。
1970年にカナダのスピリッツメーカーであるハイラムウォーカー社に買収される。
当時、ハイラムウォーカー社が所有するブレンデッドスコッチのバランタインには、
キーモルトとしてバルブレア蒸留所の原酒が使われていた。
蒸留所の所有者はさらに変わり、1996年にインバーハウス社に買収される。
そしてインバーハウス社はタイ・ビバレッジ社の傘下に入り、現在に至る。
●あとがき
230年以上の歴史を持つバルブレア蒸留所は、
ウイスキー造りにもじっくりと時間をかけている。
発酵や蒸留が他の蒸留所よりも数~数十時間長いのである。
発酵や蒸留をじっくり行うことで、バルブレアの特徴的な風味が得られる。
熟成の時間に比べると、大した時間ではないと感じるかもしれないが、
やはり原酒の影響は大きい。
熟成はある程度放置できるが、発酵や蒸留は人が細かく確認をする必要がある。
人が関われる部分をしっかりと管理しているということであり、
それは品質に対する信頼につながる。