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ここでは家庭で失敗しない基本的な梅酒のつくり方を紹介する。
ポイントさえおさえておけば、誰でも自宅で梅酒がつくれる。
さらに、手間を省いた梅酒キットの紹介と、メーカーでの梅酒のつくり方も紹介する。
●基本的な梅酒のつくり方
以下が梅酒作りに必要な材料と道具と手順である。
梅酒の完成は短くて3ヵ月、おすすめは1年以上である。
◆材料
- 梅・・・・・・・・・1㎏
- 氷砂糖・・・・・・・1㎏(すっきり味が好みの場合400~600g)
- ホワイトリカー・・・1.8L
◆道具
- ガラス製の保存容器(容量4L)
- 竹串(爪楊枝でも可)
- 清潔な布巾、またはペーパータオル
◆手順
- 梅を洗う
- ヘタを取る
- 漬ける
◆材料
・梅
梅は基本的に青梅を使う。
購入は地元のスーパーや八百屋さんで売っているものでOK。
最初は産地にこだわる必要はない。
梅の旬でない時季は、ネットで冷凍品を購入してもよいだろう。
傷がなく、粒が揃っていることがベスト。
しかし多少傷があったり、不揃いでも気にすることはない。
昔はキレイな梅は梅干用に使われ、傷のあるものが梅酒用に使われていた。
家庭で作るものはそこまで神経質になる必要はない。
・氷砂糖
氷砂糖の種類はロックとクリスタルがあるが、どちらでもよい。
氷砂糖を使う理由はゆっくり溶けて、梅のエキスをしっかり抽出できるからである。
分量は1㎏としたが、すっきりした味わいが好むなら400~600gにしても問題無い。
砂糖の量を減らしすぎると、梅のエキスを十分抽出できなくなるので注意。
氷砂糖は1袋1㎏や500gで売っている商品が多いので、1㎏だとわかりやすい。
上白糖やグラニュー糖、黒糖、ハチミツなどでも作れるが、
最初は失敗のない氷砂糖を使うのがベストである。
・ホワイトリカー
メーカーから販売されている果実酒用のホワイトリカーを使えばよい。
1.8Lパックで商品化されているので、1本をそのまま使える。
ほぼ無味無臭のため、梅の良さを全面に引き出せる。
またアルコール度数が35%のため、殺菌、防腐に優れており、失敗せずに作ることができる。
◆用意する道具
・ガラス製の保存容器(容量4L)
作った梅酒の状態を確認するのに、ガラス製が最適。
アクリルやプラスチック製に比べて、匂いや色移りがなく、変形もしない。
口が広いものを選ぶと作業がしやすい。
・竹串(爪楊枝でも可)
梅のなり口についているヘタを取るのに使う。
先が尖っていれば、爪楊枝でも錐でも代用可能。
梅を傷つけずにヘタを取れることが重要。
・清潔な布巾、またはペーパータオル
洗った梅の水分をふき取るのに使う。
布巾は清潔なものを用意する。
布巾が湿ってきたら交換するので、数枚必要になる。
布巾が汚れているとカビの原因となるため、気を付けよう。
ペーパータオルのほうがラクなので、オススメ。
◆【たった3工程】簡単梅酒作りの手順
梅酒作りを大きくまとめると3工程になる。
おもいのほか簡単なので、ぜひトライしてほしい。
- 梅を洗う
- ヘタを取る
- 漬ける
①梅を洗う
購入した梅は早めに使う。
すぐ使えない場合は、ビニール袋から出して、風通しの良い場所に保管しておく。
梅の渋味を出したくない場合は、1~3時間水に浸してアク抜きをする。
渋味も含めて梅の味わいなので、アク抜きは省いても問題無い。
軽く水で梅を洗う。
水気をふき取るのはペーパータオルがオススメである。
布巾などでもよいが、清潔なものを数枚用意するよりもペーパータオルのほうがラクである。
水が残りやすいヘタの部分は念入りにふき取る。
アルコール度数35%のホワイトリカーを使っていれば問題無いが、
度数の低いアルコールを使う場合は、拭き残した水分によりアルコールが薄まり、
カビの原因となるので注意。
②ヘタを取る
ヘタ取りは、必ず水洗いの後にする。
ヘタを取った後に水洗いしてはいけない。
この順番が重要である。
順番を間違えると、ヘタを取った部分から水が入り込んでしまう。
梅のヘタが付いている部分はなり口といい、ヘタはホシともいう。
竹串でヘタを軽くつつけば簡単に取れる。
あまり力を入れすぎず、傷つけないように丁寧に作業する。
ヘタの取れた奥に黒いものが見えることがあるが、これは種の頭なのでそのままにしておこう。
③漬ける
保存容器の内側とフタを消毒する。
度数35%のホワイトリカーを使えばよい。
熱湯消毒よりもアルコール消毒のほうがラクである。
まず底に梅を詰める。
その上に氷砂糖を乗せる。
そして梅、氷砂糖を交互に詰めていく。
一番上は氷砂糖になることが望ましいが、絶対ではない。
交互に詰めるのには理由がある。
氷砂糖が溶け始めると、糖分は比重が重いので沈む。
沈む際に糖分が梅に触れることでエキス抽出が進む。
梅と氷砂糖を詰めたら、ホワイトリカーを注ぐ。
ホワイトリカーを注ぐと、梅が浮いてくることがある。
せっかく交互に詰めたのに、と思うかもしれないが、これは仕方のないこと。
梅は自然のものなので、そういう時もある。
梅酒には問題無いので、気にしない。
あとは日の当たらな所に置いておけば、3ヵ月ほどで飲める状態になる。
氷砂糖がゆっくり溶けて、梅からエキスを抽出する。
1年以上寝かせると、十分エキスは抽出されるが、
早く飲みたい場合は、時々揺すって攪拌すると抽出が早まる。
これは抽出されたエキスが梅の周囲に留まっている状態を、
揺することによって解消する効果がある。
放っておいても液は混ざりあうので、時間の問題である。
梅が浮いても時間が経つにつれて沈むので問題無い。
梅がシワシワになっても問題無い。
これは梅の熟度や糖度に関係することなので、気にする必要はない。
梅の取り出しは3カ月以上経ってから行う。
そのまま漬け続けてもよい。
長く漬けるほど種からもエキスがしっかり抽出できるので、梅を存分に楽しめる。
取り出した梅はそのまま食べてよいし、ジャムなどに加工してもよい。
梅酒は熟成期間によって味わいが大きく変わる。
3ヵ月ほどでは、すっきりとした爽やかさと、梅の酸味が味わえる。
1年以上寝かせると、甘くまろやかで、香り高く、芳醇な味わいになる。
少しずつ飲み進めて、味わいの変化を楽しむのもよいだろう。
◆アレンジ
最初から自分好みの梅酒を作りたい場合のアレンジ方法を紹介しよう。
・梅
梅は完熟梅や小梅を使ってもよい。
青梅を購入して追熟させることもできる。
熟度によっては梅酒が濁る場合もある。
仕上がりの味わいは以下のようになる。
- 青 梅:すっきりとした爽やかな梅酒に仕上がる
- 完熟梅:フルーティーで甘めの梅酒に仕上がる
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・砂糖
砂糖を黒糖やハチミツなどを使いたい場合は、
氷砂糖と一緒に使うことをオススメする。
比率は氷砂糖1に対して、他の糖類0.5~1の割合で混ぜるとよい。
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・お酒
ホワイトリカー以外のお酒を使いたい場合は、
アルコール度数だけは注意しよう。
家庭で梅酒を作る場合、酒税法によって、
お酒はアルコール度数20%以上のものなければならい、と決まっている。
ブランデー、ウイスキー、ウォッカ、乙類焼酎、泡盛などの蒸留酒を使う場合は問題無い。
しかし一般的に日本酒、みりん、ワインなどは度数が20%未満である。
特別に度数の高いものが販売されているので、そちらを使おう。
密造酒を作らないように気を付けよう。
まっとうに作ったお酒だからこそ、気分良く飲めるのである。
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・その他
その他の材料を追加してアレンジすることもできる。
緑茶や紅茶のパックを入れるのもよい。
簡単に好みの香りを付けることができる。
ハーブやスパイスを入れるものアリである。
数種類をブレンドして自分だけのハーブ梅酒が作れる。
梅と一緒に他の果物を入れても面白い。
アンズやスモモなどは系統が近いので、相性が良い。
ベリー系や柑橘系、リンゴなどを加えると香りの幅が広がる。
●手間いらずの梅酒キット
自分で梅酒を作ってみたいが、材料や道具の用意が面倒だという人もいる。
そのような人のために梅酒キットがある。
梅酒キットとは、材料から道具までセットになっているものである。
一つ一つ買い揃えなくてよいのが利点である。
いくつかのメーカーが梅酒キットをネット販売しているので紹介しよう。
・チョーヤ梅酒キット
梅酒といえばチョーヤである。
そのチョーヤが『梅酒キット』を販売している。
以下のようなキット内容になっている。
- チョーヤブランデーV.O・・・・1800ml
- 特別栽培南高梅・・・・・・・・1㎏
- 氷砂糖・・・・・・・・・・・・1㎏
- レシピ・・・・・・・・・・・・1冊
- 保存瓶(セラーメイト 4L)・・・1本
価格は税込8,000円。
保存瓶なしは税込6,800円。
また、『蝶矢梅キット』というものも販売している。
こちらは梅の種類、砂糖の種類を選んで購入するもの。
ボトルサイズは400mlと700mlがある。
お酒は入っていないので、自分で用意する必要がある。
少量なので気軽に試せるし、ギフトにも良い。
組み合わせによって価格は変動する。税込2,400円~。
・中野BC梅酒手造りセット
本格的な梅酒から、フルーツなどを混ぜた梅酒まで、
梅酒の商品数最多メーカーの中野BC。
中野BCのオンラインストア長久庵では『梅酒手作りセット』を販売している。
セット内容は以下である。
- 南高梅・・・・・・・・200g
- 氷砂糖・・・・・・・・200g
- ホワイトリカー・・・・360ml
- ボトル(900ml)・・・1本
- ラベルシール・・・・・1枚
- メッセージカード・・・1枚
- ガイドブック・・・・・1冊
価格は税込3,850円。
初めて作るにはちょうど良いサイズである。
他にも検索すると色々出てくるので、自分好みの梅酒キットを探してみよう。
●メーカーでの梅酒のつくり方
メーカーでの梅酒の製造工程も紹介しよう。
各メーカーによっても違いがあるが、以下が一般的なつくり方である。
- 栽培
- 収穫
- 搬送
- 洗浄
- ヘタ取り・選別
- 漬け込み
- 熟成
- 検査
- ブレンド
- 瓶詰め・梱包・出荷
①栽培
栽培は主に契約農家で行われている。
ワインのように栽培から商品販売まで、一貫して行っているメーカーは少ない。
苗の状態から育てて、3,4年で実がなる。
ちなみにワイン用ブドウも3,4年、シードル用リンゴは4,5年かかる。
実梅の栽培は、北海道から沖縄まで全国で行われているが、
梅酒に使われるよりも梅干に使われることのほうが多い。
②収穫
収穫は5月下旬ごろ~7月上旬ごろまでで、地域の環境によって異なる。
また、青梅で収穫するか、熟してから収穫するかでも違いがある。
収穫は、ネットに落とす方法や、一つ一つ手摘みする方法がある。
③搬送
収穫後、梅はすぐに工場に搬送される。
鮮度の良い梅を使うことで、高い品質の梅酒ができる。
このため、梅の栽培地から工場までの距離が近いほうがよい。
④洗浄
洗浄で表面の汚れを落とされる。
コンベアーに乗せて、シャワーを浴びせ、エアブローで水気を飛ばす。
または、大量の水に浸けて洗い、ザルに移して、送風乾燥などの方法もある。
⑤ヘタ取り・選別
一粒一粒ヘタを取る。
同時に傷や破れなどの選別も行う。
また、梅の硬さも確認する。
⑥漬け込み
アルコールに梅と砂糖を投入する。
主にメーカーでは氷砂糖は使わない。
上白糖やグラニュー糖を使うことが多い。
⑦熟成
タンクの中で一定期間、熟成される。
熟成期間はメーカーや商品によって違う。
また、攪拌や仕込液の追加など行う場合もある。
⑧検査
成分検査や味覚検査などが行われる。
品質基準を満たしているか、厳格に検査される。
⑨ブレンド
品質を一定に保つために、ブレンドが行われる。
各タンクごとに微妙に味が違うため、ブレンド比率を調整して、
品質を一定にする。
⑩瓶詰め・梱包・出荷
洗浄済みの瓶に梅酒が詰められ、ラベルが貼られる。
異物が混入していないかなどの目視検査が行われる。
検査に合格したものが箱詰めされ、出荷される。
このように家庭で作る場合とは、いろいろと違う。
しかしヘタを一粒一粒取るなどの基本は同じである。
工場見学を受け入れているメーカーもあるので、ぜひ。
●あとがき
梅酒を一度作るとまた作りたくなる。
毎年梅の季節が楽しみになるのである。
次はどのようなアレンジをするか考えるだけでも楽しい。
さらに梅以外の果実酒にも興味が湧き、どんどん沼にハマる人も多い。
簡単なので、まずは一度作ってみることをオススメする。