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パンデミック後の国内のウイスキー生産量と消費量をまとめた。
また都道府県別での消費量と増加率では興味深いデータが得られた。
データは国税庁が公開しているものをもとにした。
世界的なウイスキーブームのなか、パンデミックが発生し、
その後どうなったのか気になるところだ。
データは2022年までしか出てきていないが、グラフにまとめたので見てみよう。
●ウイスキーの生産量と消費量推移
グラフからは国内生産量よりも消費量のほうが多いことがわかる。
消費量には輸入品(海外産ウイスキー)の消費も含まれるためである。
生産量と消費量を長期トレンドで見れば、おおむねリンクしている。
生産量と消費量を個別に詳しく見てみよう。
・ウイスキー生産量推移
生産量は1980年代のピークから2000年代半ばまで減少を続ける。
2007年を底として、2019年まで右肩上がりに増加する。
そしてパンデミックにより2020年、2021年は減少に転じる。
2022年はパンデミック前の水準近くまで戻ってきている。
新規蒸留所の稼働から3年が経つと商品販売が本格化する。
しかし量や質が安定するにはさらに時間がかかる。
既存メーカーが設備を増強しても、熟成に時間がかかるため、
ウイスキーの生産量はすぐには増えない。
これから徐々に生産量が増えてくるだろう。
・ウイスキー消費量推移
生産量と比べると、消費量はパンデミック前の水準までほぼ回復している。
ウイスキー人気が健在であることがわかる。
懸念点があるとすれば、ウイスキー価格の高騰である。
原材料費、輸送費、燃料費、円安などによるコスト高が、
販売価格に反映され、量よりも質への変化が予想される。
今後は消費額にも注目したい。
●都道府県別 ウイスキー消費量
都道府県別のウイスキー消費量、成人人口、宿泊者数をまとめた。
当然のことだが、人口が多いと飲む人の比率も増え、消費量も多くなる。
宿泊者数は国内外を含めた人数である。
データは観光庁ものをもとにした。
ジャパニーズウイスキーは海外でも人気があり、
ウイスキー目当ての外国人旅行客もいると聞くが、
消費量と宿泊者数の相関性は成人人口ほど高くない。
都道府県別のTOP10をまとめる以下のようになる。
東京が全体の18%を占め、次いで大阪8%、神奈川7%と続く。
そして埼玉5%、千葉5%、北海道5%、愛知5%、福岡4%、兵庫4%、沖縄3%で、
TOP10で全体の63%である。
注目すべきは10位の沖縄である。
成人人口が多いわけでもなく、宿泊者数が飛び抜けているわけでもない。
にもかかわらず、10位は大健闘である。
・都道府県別 ウイスキー消費量 増加率(2012年比)
2012年に比べて10年間でどのくらい消費量が増えたのかをまとめた。
あいだに2017年のデータも加えている。
ウイスキーの消費量は増加傾向にあるが、この10年で1.87倍に増えている。
都道府県別で見ると、少なくても新潟の1.39倍、
多いところでは2倍、3倍に増えている。
しかし沖縄は10倍以上という異常な増加率である。
2017年の時点でも3倍である。
ちなみに東京は1.80倍である。
増加率は西高東低の傾向がはっきりと表れている。
2012年の消費量がもともと少なかった地域は、増加率が高くなるが、
それでも沖縄の増加率は凄まじい。
少し沖縄のデータを掘り下げてみよう。
・沖縄のウイスキーの消費量推移
沖縄の消費量はパンデミックでもそれほど減少していない。
横ばい状態になったものの、2022年に爆発的な伸びを記録している。
なぜこのようなことになっているのか。
先に結論は述べておくが、原因は不明、わからなかった。
- 誰が飲んでいるのか?
地元住民?他県からの観光客?外国人観光客?
観光客がわざわざ沖縄でウイスキーを飲む理由はない。
沖縄県産ウイスキーはまだ生産量がそれほど多くない。
よって、地元住民が消費しているということか。 - どこ産のものを飲んでいるのか?
県産?国産?海外産?
沖縄県産ウイスキーはまだ生産量がそれほど多くない。
ならば、他県の国産や海外産ということになるのだろうか。 - 沖縄のどこで飲まれているのか?
沖縄県内の税務署は6ヵ所ある。
那覇、宮古島、石垣、北那覇、名護、沖縄である。
北那覇の消費量が2021年から8.5倍に増えている。
那覇国際通りの区分は那覇税務署になる。
北那覇税務署は首里の付く町などが管轄である。 - どのような世帯で飲まれているのか?
家計調査では総世帯でのウイスキー支出金額が、2022年は約6倍に増えている。
2人以上の世帯では増えておらず、むしろ減っている。
よって、単身世帯が大量にウイスキーを消費したようだ。 - 何かイベントやキャンペーンがあったのか?
調べたが、これほど消費を増やすようなイベントはない。
増加の量を考えると、ある程度長期的な消費が続く必要があるだろう。
国税庁のデータはまだ2022年までしか出ていないが、
総務省の家計調査では2023年のデータがある。
家計調査の那覇市の総世帯データでは、
2021年が1,087円、2022年が6,108円、2023年が1,888円、となっている。
2022年の異常な増加は一過性のものであったことがわかる。
しかし沖縄のウイスキー消費量増加率が全国的に高いことは事実である。
公表データが間違っていたなんてことはないと思うが。
●あとがき
ウイスキーの生産量が1980年代のピークを超えるには、
まだまだ時間がかかるだろう。
しかし少しずつでも生産量が増えているのを見るのは楽しい。
ウイスキーブームがいつまでも続くわけではなく、
閉鎖される蒸留所も出てくるだろうが、それはまだ先の話である。
とりあえず、新規蒸留所の商品が出揃うまでもう少し待とう。