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ジャパニーズウイスキーの人気は世界中で広まっている。
輸出は20年近く増加傾向にあったが、2023年は減少に転じた。
その要因を読み解いてみよう。
財務省の公開データをもとにまとめた。
グラフ化することで、トレンドや、理解が深まるだろう。
●ウイスキーの輸出入量
2000年からの輸出入量をグラフにまとめた。
上部に輸出量、下部に輸入量である。
日本は輸出量よりも輸入量のほうが圧倒的に多いことが一目瞭然でわかる。
輸出量と輸入量をそれぞれ詳しく見てみよう。
・ウイスキー輸出量推移
1988年からの輸出量推移である。
1998年に6,000KLを輸出し、1999年、2000年の3年間は高い輸出量をキープした。
その後急落し、2007年に900KLまで減少する。
しかし翌年以降は右肩上がりに増加を続け、2022年には14,250KLを超える。
このまま勢いは続くと思いきや、2023年に12,700KLまで減少する。
減少の要因は何なのだろうか。
その前に輸入量データも見ておこう。
・ウイスキー輸入量推移
1988年からの輸入量推移である。
1989年の77,000KLを超える輸入量は過去最高である。
その後浮き沈みはがあり、2008年は過去最低の15,900KLまで減少する。
徐々に輸入量は回復し、2023年は過去三番目に多い71,000KL超を輸入する。
2023年の輸出量は減少に転じたが、輸入量はいまだ増加を続けている。
これは日本国内でのウイスキーへの需要がまだ続いているといういえる。
●ウイスキーの輸出入額
2000年からの輸出入額をグラフにまとめた。
上部に輸出額、下部に輸入額である。
輸出額よりも輸入額のほうが大きいことがわかる。
輸出量と同様に、輸出額も2023年は減少に転じている。
このことから量から質への転換が起きているわけではないとわかる。
●ウイスキーの輸出先、輸入元
ウイスキーの輸出先と輸入元も見ておこう。
・ウイスキーの輸出先【2023】
2023年のウイスキー輸出先TOP10をグラフにまとめた。
全体の22%を占めるのはアメリカである。
アメリカは2018年から6年連続で輸出先1位である。
2位はフランスで18%を占める。
フランスは2018年にアメリカに抜かれるまでは1位だった。
ジャパニーズウイスキーに限らず、フランスは世界中からウイスキーを輸入している。
近年では自国でもウイスキー生産が盛んに行われている。
3位中国12%、4位韓国10%、5位台湾8%、7位シンガポール5%。
アジア圏への輸出先が続く。
地理的に近いため、輸送コストが低く抑えられる。
6位は意外にもオランダ7%である。
ヨーロッパではフランスに次いで2番目の輸出量である。
オランダで日本のウイスキーは人気なのである。
8位オーストラリア4%、9位インド2%、10位ラトビア1%。
20位までは以下の通りである。
また、1L当たりの金額も算出した。
1L当たりの金額が大きいということは、高額なウイスキーを輸出していることになる。
つまり、中国やベトナムには高額ウイスキーが輸出されていることがわかる。
アメリカ、フランス、韓国、台湾は、輸出量は多いが、
リーズナブルなものが多いということである。
ちなみに、2023年は62カ国に輸出されている。
・ウイスキーの輸入元【2023】
日本はどこの国からウイスキーを輸入しているのか。
やはりスコッチの国イギリスが1位である。
イギリスだけで全体の52%を占める。
次いでアメリカが26%を占めて2位である。
バーボン人気も健在である。
3位はカナダ17%である。
カナディアンウイスキーは生産量が多いので、
輸入しやすいことも理由の一つであるが、
カナディアン自体の人気も徐々に高まってきている。
4位はアイルランド2%である。
アイリッシュウイスキーの人気は世界中で高まっている。
最盛期にはまだ程遠いが、新規蒸留所が稼働を始めつつある。
生産量が増えてくれば、日本でもさらに目にする機会が増えるだろう。
5位はスペイン2%である。
スペイン産のウイスキーはあまりなじみがないかもしれない。
最近はクラフトディスティラリーが増えており、少しずつ見かけるようになってきた。
これからに期待したい。
輸入元は上位3カ国だけで90%以上を占めている。
さらに上位5カ国では99%を占める。
20位までも見てみよう。
10位の台湾はカバランの影響が大きいが、
オマーも見かけるようになってきた。
16位のイスラエルはサイズ社が輸入しているM&H(ミルク&ハニー)だろう。
イベントにも積極的に参加して、イスラエル産ウイスキーの認知度を高めている。
●2023年ウイスキー輸出量が減少した要因
各国への輸出量推移を表したグラフである。
1980年代後半から2000年代前半の輸出量増加は、
台湾やタイへの輸出量が急増したことによる増加だとわかる。
2023年の減少を詳しく見るために、
この10年間のグラフと、国別の2022年比の増減率を見てみよう。
グラフからはTOP3であるアメリカ、フランス中国の減少がよくわかる。
数値ではアメリカ-12%、フランス-21%、中国-28%という大きな減少である。
2023年は2022年よりも円安が進み、輸出が増えるのが一般的な見方だが、
ウイスキーに関しては減少に転じている。
中国の減少は、中国国内の景気回復が遅れているためだろう。
では、アメリカやフランスはなぜ減少したのだろうか。
2023年は世界的なインフレ圧力の高まりが背景にある。
フランスを含めるEU圏では、日本よりも物価高騰が激しかった。
フランスは高級ウイスキーよりも普段飲み用のウイスキーを多く輸入しているため、
家計が厳しくなることでジャパニーズウイスキーの消費も減少したのだろう。
世界的な景気減速が懸念された2023年、アメリカの景気は予想外に強かった。
インフレの影響を受けつつも、個人消費の底堅さがあった。
ゆえに-12%に留まったのだろう。
中国やフランスよりも減少率が低いのはこのためである。
ちなみに韓国への輸出が66%増加している。
これは現政権になってから日韓関係が良好のためである。
やはり政治と経済は切っても切り離せないのである。
まとめると、2023年は世界的に景気が減速した。
この影響が日本のウイスキー輸出に表れたのである。
景気減速の要因は、資源価格の高騰、局所地域の不安定化、コロナ禍の反動、
などさまざまである。
パンデミックも含めてこれまで10年以上輸出量は増え続けてきたが、
今回の減少は何を意味するのだろうか。
ピークアウトしたと考える人もいれば、一時的な減少だと考える人もいる。
日本国内のウイスキー生産量はこれから増加する見込みである。
ウイスキーブームとはいえ、国内のパイは限られている。
ジャパニーズウイスキーが今後どうなるのか、2024年に注目である。
●あとがき
輸出入に国同士の関係や、関税も影響する。
韓国のように関係が良くなれば、国同士の交流が活発になるし、
ロシアのように関係が悪化すれば、輸出入に大きな影響を与える。
ウイスキーを通して世界を見ると、新たな発見がみえるかもしれない。