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薬膳酒の効能と素材の一部をまとめた。
薬膳酒の素材となるものは種類がかなり多い。
主に草根木皮だが、それ以外にも海産物の乾物も含まれる。
この記事では効能別に薬膳酒の素材を紹介する。
ご自身の今の体調に必要なものを選ぶことで、快調に向かうだろう。
- 疲労回復
- 血行促進
- 高血圧の予防・改善
- 不眠解消
市販の薬膳酒は複数の素材を組み合わせて、効能の数を増やしているものが多い。
その分、手間ひまかけてつくられている。
素材の効能を知っていれば、自分でつくることも可能である。
興味があればチャレンジしてみるのも良いだろう。
●疲労回復
身近な果物であるレモン、梅、リンゴには疲労回復に効果がある。
それぞれを説明しよう。
・レモン
レモンの酸味に含まれるクエン酸には疲労回復効果がある。
疲れた時にすっぱいものを食べて回復を促すというのは、
経験則に基づく薬膳によるものなのである。
さらにレモンにはビタミンCが多く含まれている。
ビタミンCには強い抗酸化作用があり、風邪予防や美肌効果も期待できる。
レモンを含めて柑橘系特有の香りは「気」の巡りを促し、
消化機能を高め、夏バテやストレス解消にも役立つとされる。
また、「肝」の機能を助けて、引き締め作用や固める作用によって、
汗や下痢、咳などを止める効果がある。
・梅(青梅)
レモンと同様に梅にも多くのクエン酸が含まれている。
梅にはクエン酸の疲労回復効果に加えて、整腸作用もある。
薬膳や漢方でよく知られているのが「烏梅(うばい)」である。
梅の未熟果を煙で燻蒸して乾燥されたものである。
烏梅には抗菌作用や解熱、鎮痛、回虫駆除などの働きがある。
また、種の中にある核を乾燥させたものは「仁(じん)」と呼ばれ、
体内の老廃物を排出するデトックス効果や消炎作用、鎮痛作用がある。
ただし、生の状態では青酸系の毒素を含んでいるので、注意が必要。
レモンと同様に「肝」の機能を助ける働きがあり、
引き締めや固める作用によって、汗や下痢、咳などを止める。
・リンゴ
リンゴにはリンゴ酸などの有機酸が含まれているので疲労回復効果がある。
また、水溶性の食物繊維であるペクチンが腸内環境を整えることで美肌効果が期待できる。
さらに、リンゴの含まれるポリフェノールの抗酸化作用との相乗効果で、
肌を健康に保つことができる。
リンゴは「心」「脾」「肺」の働きを助け、
「気」「血」を巡らせて水分代謝を活性化させる。
体内にこもっている熱や水分を発散させることで、疲労を取り除き、肌を整えるのである。
●血行促進
血の巡りが滞ることで、クマやシミなどの肌のトラブル、貧血、肩こりなどの症状があらわれる。
血行促進にはナツメやローズマリー、セージなどの素材が効果を発揮する。
・ナツメ
ナツメには、血中脂質を減らすサポニン、健康な赤血球や骨の形成に関係する葉酸、
血液中で酸素を運ぶ鉄などの有効成分が含まれている。
これらの成分が滞った血行の乱れを整え、血液の流れを改善する。
他にも胃腸の働きを助けて消化器系を調えたり、
イライラやうつな気分を精神的に安定させる働きがある。
漢方薬では、ナツメは「大棗(たいそう)」と呼ばれる。
クロウメモドキ科の落葉高木の実で、乾燥したものが使われ、甘味がある。
ナツメは食欲不振、体がだるいなど「脾」が弱っているときに、
胃腸の働きを助けて消化器系を調える。
また、体内で不足した「血」を補うことで、貧血の解消、精神の安定化の効果が得られる。
・ローズマリー
ローズマリーの精油に含まれる抗酸化作用により、
血行が促されて肌のトラブルが改善される効果がある。
他にも神経系や感情に働きかける効果があり、
集中力を高めたり、不眠やイライラなどの精神的ストレスの緩和に有効とされている。
また、ローズマリーの清々しい香りは胃の働きを活発化させ、
新陳代謝に作用し、強壮や老化予防も期待できる。
ローズマリーは「肝」の働きを助け、体の機能を正常に調整する。
また、「腎」の働きも助け、更年期ののぼせやほてり、イライラ、
月経不順や閉経に伴う不快感などを和らげる。
・セージ
セージには体を温める効果があり、血液の滞りを解消することで、不調を改善する。
セージの精油にはのどの痛みや口内炎の症状を和らげる効果があるため、
古代ではうがい薬としても重宝された。
セージは抗酸化作用をもつタンニンも含んでおり、胃腸の調子を調え、
下痢や便秘を改善することで、肌のトラブルも解消する。
「脾」「肺」「腎」の働きを助け、胃腸の調子を調え、下痢や便秘を改善する。
また、「血」の巡りを良くすることで、風邪や消化不良を回復する。
●高血圧の予防・改善
高血圧の原因は血管の収縮やドロドロ血液などさまざまである。
高血圧の予防・改善することで、心臓への負担を減らすことができる。
・紅花(べにばな)
キク科の一年草である紅花は昔から染料として使われているが、
薬用としても使用されている。
紅花の種子に含まれる精油には、
コレステロールを排出して動脈硬化や高血圧を予防に役立つ
リノール酸(不飽和脂肪酸)が多く含まれている。
その含有率は植物油のなかでもトップクラスといわれている。
「心」の働きを助け、体を温めて、血の巡りをよくする。
また、「肝」の働きを助けて、体全体のバランスを調整する。
・菊花(きくか、またはきっか)
キク科の多年草である菊花は日本でも食用菊として知られている。
その効果は血圧改善の他にも、心痛、動悸、めまい、息切れ、眼精疲労など多数。
また、解毒作用もあるため、お刺身に添えられていることが多い。
菊はお酒に関連するもの色々あり、花札の「菊に盃」や、
日本酒の「菊正宗」「菊姫」「菊水」などがある。
「肝」の働きを助けることで、血液の貯蔵を調整する。
また「肺」の働きを助けて、血液の流れを正常にする。
・枸杞(くこ)
枸杞(クコ)はナス科の落葉小低木である。
クコの実は古代中国の頃から良薬の一つとして知られている。
高血圧の改善効果があるのは、「地骨皮(じっこび)」と呼ばれるクコの根皮にあるとされる。
クコの実は「枸杞子(くこし)」と呼ばれ、滋養強壮、老化防止、長寿などの効能があるとされる。
クコの皮にも精力減退や糖尿病の改善が期待できる。
根も実も皮も良い効果があるクコは古くから「仙人の杖」と呼ばれる妙薬とされてきた。
「肝」の働きを助けて肝臓を保護し、「肝」と関連のある目のトラブルを改善する。
また、「腎」の働きもサポートし、肌の老化などに有効的とされる。
・キウイ
キウイはマタタビ科の植物であり、中国原産。
漢方生薬では「彌猴桃(びこうとう)」と呼ばれ、薬用植物として用いられてきた。
キウイはカリウムを多く含んでおり、
利尿作用を促してナトリウムを含む余分な水分を排出することで、血圧を下げる効果がある。
他にもビタミンCや食物繊維も豊富で、免疫力向上や腸内環境改善などの効果もある。
「脾」の働きを助けて、体にこもった熱をとり、のぼせを鎮め、喉の渇きを潤し、
イライラやストレスからくる吐き気を解消することで胃の不快症状を緩和する。
・シナモン
漢方生薬で「桂皮(けいひ)」や「肉桂(にっけい)」と呼ばれるものはシナモン属である。
シナモンは体を温める効果があることはよく知られている。
シナモンの精油には血圧降下や筋肉痛解消、解熱作用、抗菌作用などがある。
体を内部から温めることによって、血の巡りを良くすることで血圧改善につながる。
「腎」の働きを助け、強壮や疲労回復、腰や膝の痛み、
冷えからくる胃の不調、消化不良の改善に有効。
また、「血」の巡りをよくして内臓を温めるので、月経不順、PMSなどにも効果的。
●不眠解消
現代社会において、睡眠の悩みを抱える人は多い。
寝付きを良くするために寝酒(ナイトキャップ)を飲む人もいるが、完全に間違いである。
お酒には誘眠作用があるが、睡眠の質を悪化させてしまう。
不眠解消には薬膳酒として摂取することをおすすめする。
就寝直前ではなく、夕食後に薬膳酒を飲んでリラックス状態で床に就くことが重要。
アルコールの酔いではなく、薬膳酒の成分で安眠が得られる。
飲み続ければ、早くて1週間くらいで効果があらわれるだろう。
・ラベンダー
アロマやハーブティーでも睡眠に効果的なラベンダー。
薬膳酒にもラベンダーを活用することができる。
ラベンダーはシソ科の植物で、アルコールに漬けると薄紫の色素が溶け出す。
ラベンダーには心身をリラックスさせる効果があり、心地よい眠りに誘うとされている。
また、頭痛や肌荒れにも効能を発揮する。
「心」の働きを助けて鬱血(うっけつ)をとるので、感情や睡眠をコントロールできるよう。
また、皮膚や喉との関連が深い「肺」の働きを助け、肌の乾燥や肌荒れ、
クマやシミの改善にも役立つ。
・カモミール
カモミールティーやアロマでも有名なカモミールは薬膳酒としても有能である。
キク科の植物であるカモミールには、リラックス効果がある。
やさしい香りは自律神経を調整し、興奮やイライラや緊張を緩和させる。
他にも胃のむかつきや胃痛を抑えたり、消化不良を解消したり、風邪予防の効果もある。
「肝」の働きを助けて自律神経を調整するので、イライラを解消できる。
また「脾」のサポートをするので、食べ物の消化吸収を促進し、胃腸の調子を調える。
・タイム
料理でよく臭み消しに使われるタイムだが、不眠解消の効果もある。
タイムはラベンダーと同じシソ科の植物である。
タイムに含まれるフラボノイドには、筋肉の緊張を緩める効果があり、
体をリラックスさせることで入眠しやすくなる。
他にも抗菌作用があり、喉の炎症を鎮めて、咳を抑える作用がある。
呼吸器系に関連のある「肺」の働きを助けて、喉の不調を解消する。
また、「脾」の働きを助けて、ストレスによって弱った胃腸を回復させる。
・たまねぎ
たまねぎは漢方生薬で「胡葱(こそう)」と呼ばれる。
たまねぎには辛味成分の硫化アリルが含まれている。
硫化アリルは血液をサラサラにする作用があり、血流改善が期待できる。
不眠の要因となるのぼせやほてりが血流改善により解消されることで、
安眠が得やすくなる。
他にも胃腸の調子を調えたり、疲労回復やがん予防の効果もある。
「脾」の働きを助けて、弱った胃を回復させる。
また、「肝」の働きを助け、上体部に上がっていた「気」を降ろすことで、
のぼせやほてり、不眠にも有効である。
・ライチ
ライチは楊貴妃が愛したフルーツとして有名なほど、中国では昔から知られている。
ライチにはトリプトファンやナイアシンを含み、皮膚や粘膜を潤し、
不安感や憂鬱な気持ちからくる睡眠障害を解消する。
他にも抗酸化作用が強く、老化予防効果があるとされている。
また、髪の乾燥を防ぎ、月経不順を解消にも効果がある。
不眠解消も美と健康には欠かせないということである。
「肝」の働きを助け、血行不良によるイライラやストレスを緩和する。
また、「脾」の働きを助けて、月経不順やPMS、頭痛、喉の渇きにも有効。
●摂取方法の注意点
薬膳酒は飲むとすぐに効くというものではない。
少量を長期間飲み続けることで、その効果が得られる。
長期間とはだいたい2~4週間程度、少量とは約30ml(おちょこ1杯)程度である。
薬膳酒はアルコール度数が高いものが多いので、保存性が高い。
直射日光を避け、冷暗所で保管すれば半年から一年の長期保存が可能である。
アルコールが苦手な人は、加熱してアルコールを飛ばしても効果は変わらない。
味が苦手な場合は、水やソーダや牛乳で割ると飲みやすくなる。
●あとがき
薬膳酒の効能を知り、適切に摂取すれば狙い通りの効果が得られるだろう。
長い年月をかけて、経験と知識を積み重ねた知見を大いに活用したい。
ここでは一部の紹介にとどめたが、他にも多くの素材がある。
古今東西、様々な素材が試されて、これからもまだまだ素材探しは続く。
より高い効能を見つける、引き出す、つくり出す、、、
これからも薬膳酒に期待したい。