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【比較】薬膳酒(お屠蘇、忍冬酒、保命酒、養命酒、陶陶酒)

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文字数:約2600文字

 薬膳酒には多くの種類がある。
ここでは以下5つをまとめた。

  • お屠蘇(おとそ)
  • 忍冬酒(にんどうしゅ)
  • 保命酒(ほうめいしゅ)
  • 養命酒(ようめいしゅ)
  • 陶陶酒(とうとうしゅ)

 発祥時期、発祥地、ベース、度数、素材、効能を比較して、
それぞれの違いを把握することで、薬膳酒選びの役に立つだろう。

虫眼鏡で比較
JadeによるPixabayからの画像

薬膳酒比較表

 5つの薬膳酒の比較表である。

お屠蘇忍冬酒保命酒養命酒陶陶酒
発祥
時期
平安時代江戸時代
1590年代
江戸時代
1659年
江戸時代
1602年
昭和時代
1948年頃
発祥地中国浜松
静岡県
鞆の浦
広島県
信濃
長野県
東京
商品高野山の
開運お屠蘇
浜松
忍冬酒
入江豊三郎
本店
保命酒
養命酒製造
薬用養命酒
陶陶酒本舗
薬用陶陶酒
銭形印(辛口)
ベースみりん
日本酒
みりんみりんみりん
アルコール
醸造
アルコール
度数15%前後14%14%14%29%
素材数5~101161416
素材肉桂忍冬桂皮桂皮桂皮
防風黄精防風陳皮
白朮地黄地黄莪朮
山椒山椒反鼻反鼻
桔梗高麗人参人参人参
当帰肉蓯蓉肉蓯蓉
淫羊藿淫羊藿イカリ草
丁子丁子大そう
芍薬芍薬茴香
甘草烏樟甘草
枸杞子紅花枸杞子
茯苓益母草胡ずい子
菊花鬱金蛇床子
???杜仲アミノ酸類
???ビタミン類
???マムシ
蛋白分解物
効能風邪予防鎮痙疲労回復肉体疲労肉体疲労
鎮咳解熱冷え性冷え性発熱性
消耗性疾患
血行促進利尿夏バテ防止血色不良栄養障害
健胃抗炎症胃腸虚弱胃腸障害
抗菌作用食欲不振滋養強壮
解毒虚弱体質虚弱体質
神経痛病中病後の
滋養強壮
病中病後
産前産後の
栄養補給

 発祥時期が最も古いのはお屠蘇で平安時代である。
忍冬酒、保命酒、養命酒は江戸時代に誕生している。

 ベースとして醸造アルコールのみを使用しているのは陶陶酒である。
そのため、アルコール度数29%と高く、辛口。
他はみりんを使用しているため、甘口で14%ほどである。

 素材では桂皮(肉桂)がよく使われている
素材の種類の多さよりも、どの程度配合しているかのほうが効能に影響しそうだ。
自身の求める効能に合わせて、選ぶとよいだろう。

 注意しなければいけないのが、薬膳酒は即効性があるものではない
少量を毎日飲み続けて、じょじょに効き目があらわれる。
用法容量を守って飲み続けることが重要である。

それぞれの特徴

 5つの薬膳酒の特徴を説明しよう。

・お屠蘇(おとそ)

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 お正月に無病息災、健康長寿を願って催される風習と、
その場で飲まれるお酒のことをお屠蘇という。

 平安時代に中国から日本に伝わったとされる。
平安時代の宮中行事として定着し、
一般大衆にまで広まったのは江戸時代に入ってからである。
行事としてのお屠蘇には作法がある。

 5~10種の生薬をブレンドした屠蘇散(とそさん)を、
日本酒とみりんを混ぜたものに浸してつくる。

 各社によって生薬のブレンドは違うが、
共通する生薬は山椒、桔梗、肉桂、防風、陳皮である。

 効能は、健胃、鎮咳、血行促進、風邪予防である。
これらの効能にプラスアルファとして各社独自の生薬をブレンドしている。

・忍冬酒(にんどうしゅ)

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 忍冬とは「金銀花(きんぎんか)」のことである。
和名は「スイカズラ」である。

 忍冬酒は江戸時代に浜松でつくられた
徳川家康に献上し、認められたことで全国に広まった。
現在は浜松(静岡)以外で、尾張(愛知)と奈良でつくられている。

 生薬は基本的に忍冬のみを使う。
忍冬をみりんに浸け込んで、エキスを抽出する。

 効能は鎮痙、利尿、抗炎症、抗菌作用、解熱、解毒、神経痛など。

・保命酒(ほうめいしゅ)

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 保命酒は瀬戸内にある広島県の鞆(とも)でつくられる薬膳酒である。
保命酒は「ほうめいしゅ」と読み、「ほめいしゅ」と読むのは間違い。

 保命酒はみりんに16種の生薬を浸けてつくられる。
現在は4社が製造しており、共通の生薬は桂皮、甘草、丁子である。

 保命酒の歴史は長く、1659年に考案された。
保命酒は港町である鞆の浦で評判となり、全国にその名が広まった。

 効能は、疲労回復、冷え性、夏バテ防止など。
「潮待ちの港」と呼ばれた鞆の浦で、待っている間に疲れを癒して、
冬は冷え性を、夏は夏バテを防ぎ、旅を続けるのである。

・養命酒(ようめいしゅ)

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 薬膳酒といえば、一番に名前が挙がるのが養命酒だろう。
その名は老若男女に知られており、認知度が高い。

 原料となる14種の生薬をみりんに浸けてつくられる。
生薬のエキス抽出には2か月の時間が費やされる。

 養命酒は400年以上の歴史を持っており、創製は1602年である。
信濃の地で誕生した養命酒は、厳しい時代も乗り越えて、
多くの人に知られる存在となった。

 養命酒は7つの効能を謳っている。
肉体疲労、冷え性、胃腸虚弱、食欲不振、虚弱体質、血色不良、病中病後の滋養強壮である。
長い歴史を持つということは、効き目も確かだということを物語っている。

・陶陶酒(とうとうしゅ)

陶陶酒本舗
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 陶陶酒をつくる会社はマムシのエキスパートであり、蛇の研究所も設立している。
だからこそ、その効果に信頼が持てる。

 アルコール度数が12%の甘口と、29%の辛口がある。
薬膳酒は生薬の苦味を緩和して飲みやすくするために甘口であることが多い。
辛口があるから陶陶酒を選ぶという人もいる。

 辛口に使用される生薬は16種ある。
反鼻、マムシ蛋白分解物、桂皮、人参、肉蓯蓉、枸杞子、
胡ずい子、イカリ草、甘草、茴香、蛇床子、大そう、莪朮、
アミノ酸類、ビタミン類。

 反鼻はマムシの皮で疲労回復と冷え性に効く。
マムシ蛋白分解物は抗活性酸素の効果がある。
これらの素材はマムシのエキスパートによって効果的に活かされる。

 陶陶酒の効能は、滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労、病中病後、胃腸障害、栄養障害、発熱性消耗性疾患、産前産後の栄養補給などである。

 陶陶酒の会社は1690年からマムシの黒焼きや漢方薬を販売しており、
マムシを長く扱ってきた。
陶陶酒の販売を始めたのは戦後だと推測され、80年近い実績がある。
しかし、現在は経営不振に陥っており、危機的状況が続いている。

あとがき

 薬膳酒には色々な生薬が使われ、効能もさまざまである。
もし自身にピンポイントで合う薬膳酒がほしければ、自作という手もある。
素材によって効能は知られているので、お酒に浸けるだけである。
梅酒と同じで難しくない。
ただし自作する場合は、素材を多くても3種類くらいにとどめておくのが無難である。
素材が多くなりすぎると、配合比率が難しくなる。
まずは1種類で試すのが良いかもしれない。
素材や配合を変えて比較することで、良い効果も得られるし、何より楽しいだろう。

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