文字数:約2600文字
2024年は日本の『伝統的酒造り』がユネスコ無形文化遺産に登録された。
国としても世界で日本のお酒が注目されるようにサポートを続けている。
日本のお酒の今後の展開が気になる人も多いだろう。
ということで日本酒の輸出動向のデータをまとめた。
財務省の貿易統計データを基にした。
まとめたデータをお求めの方はこちら。
●日本酒の輸出量、輸出額、輸出単価 推移

日本酒の輸出量、輸出額、輸出単価は増加傾向にある。
輸出量は2022年に35,000KLを越えて過去最高を記録した。
2023年には減少したが、2024年は少し持ち直している。
輸出額も2022年に47億円を超えて過去最高を記録したが、
こちらも2023年に減少し、2024年に少し持ち直している。
輸出単価は順調に上昇を続け、輸出量と輸出額が減少しても、
高単価を維持できている。
2024年の輸出単価は1,400円/Lである。
次に輸出先がどうなっているのか見てみよう。
●日本酒の輸出先(輸出量、輸出額の内訳)
・日本酒の輸出量 内訳【2024】

2024年の日本酒輸出量がもっとも多いのはアメリカである。
アメリカは全体の22%を占めている。
次いで多いのが中国で15%を占める。
3番手は僅差で韓国で13%である。
4位台湾、5位香港で、TOP5だけで全体の2/3を占めている。
・日本酒の輸出額 内訳【2024】

2024年の日本酒輸出額がもっとも多いのは中国である。
輸出量2位の中国が輸出額では1位である。
逆にアメリカは輸出額では僅差で2位である。
この二カ国だけで全体の半分を占めている。
3位は香港、4位は韓国、5位は台湾である。
輸出額はTOP5だけで3/4を占めている。
・日本酒の輸出量と輸出額マッピング


この2つのグラフは日本酒の輸出量と輸出額の散布図である。
まずはTOP5が圧倒的であることがよくわかるだろう。
輸出量が多いアメリカに対して、中国は輸出額が多い。
これは中国のほうが輸出単価が高いことを意味している。
同様に中国と韓国は輸出量がそれほど差はないのに輸出額が倍以上差がある。
つまり中国は単価の高い日本酒を求めていることがわかる。
アジア圏や北米圏以外ではオーストラリアが8番手に位置している。
10番手くらいで欧州勢があらわれ始める。
TOP5以下は簡単に順位が入れ替わるので、
今後どこの国が上昇するのか気になるところである。
ではTOP5がどのような推移を辿ってきたのか見てみよう。
●日本酒の輸出額 推移【TOP5】

輸出額の推移を見ると、国によって違いが見えてくる。
現在輸出額TOPの中国は2021年に初めて首位を獲得している。
2020年にはアメリカを抜いたが、香港に抜かれて2位だった。
2021年から4年連続で首位を維持している。
中国と香港は基本的に同じ動きをしているが、香港のほうが先に動くことが多い。
アメリカは長年1位だったが、2020年のパンデミックによって大きく減少した。
そのスキに中国と香港が上昇して首位を明け渡すことになる。
その後大きく回復するが、中国のほうが勢いが強かった。
しかし2024年にアメリカは上昇、中国は減少したことにより差が縮まった。
2025年は首位奪還の可能性がある。
韓国は日韓関係に大きく左右される。
政治と経済の影響は日中よりも日韓のほうがはっきりと表れているようだ。
台湾は1990年代に経済が急成長し、その頃は日本酒最大の輸出先だった。
2000年代はピークよりも減少したものの、それでもアメリカに次ぐ輸出先だった。
現在は過去最高の輸出額に達しており、今後どうなるのか注目である。
ここまで見て、アジア圏への輸出が多いと気付いただろう。
次は地理圏別でのデータも紹介しよう。
●日本酒の輸出【地理圏別】
・日本酒の輸出マップ【2024】

地図上に表すとこのようになる。
日本から地理的に近いアジアへの輸出が多いことがわかる。
次いで北米、西欧、大洋州と続く。
ちなみに2024年の日本酒の輸出先は過去最高の80カ国である。
・地理圏別 日本酒の輸出量【2024】

輸出量はアジア圏が57%で半分以上を占めている。
2番目は北米で29%、3番目は西欧圏で10%。
4番目は大洋州で3%、以降は1~0%でごく少量である。
・地理圏別 日本酒の輸出額【2024】

輸出額もアジア圏が61%を占めており、ダントツである。
次いで北米29%、西欧7%、大洋州2%である。
アジア圏や西欧圏は多くの国に輸出しているが、
他の地理圏は1,2カ国がその地域の割合の多くを占めている特徴がある。
●日本酒の輸出ランキングTOP10【2024】

ここまでのデータをランキングにまとめた。
輸出量、輸出額、輸出単価である。
輸出単価は輸出量の多いTOP20の国から順位付けした。
輸出量、輸出額はこれまでに見てきたので、輸出単価に注目したい。
TOPは香港で2,539円/Lである。
輸出額TOPの中国は2位の2,193円/Lで、
3位のシンガポール2,114円/Lと僅差である。
アジア圏のこの3カ国が2,000円/L越えで高級志向であることがわかる。
意外にも4位は西欧圏のイギリスで1,508円/L。
輸出量TOPのアメリカは1,430円/Lで5位である。
2024年全体の輸出単価は1,400円/Lである。
6位にフランス1,265円/L、7位にベトナム1,209円/Lが登場する。
8位オーストラリア1,154円/L、9位カナダ1,124円/L、10位マレーシア1,091円/L。
ベトナムとマレーシアはアジア圏である。
輸出量、輸出額のTOP5である韓国と台湾がランク外なのには驚きである。
台湾はTOP10の次点である11位で924円/Lある。
韓国はさらに下の15位で766円/Lある。
とても興味深い結果となった。
まとめたデータをお求めの方はこちら。
●あとがき
一昔前に比べると日本酒の輸出量、輸出額は大きく増加している。
背景として、日本酒の認知度が徐々に高まっていることや、輸送技術の発展などがある。
ワインと日本酒は輸送の揺れに敏感であるが、
ワインと違うのは常温保管ができないものがあるということである。
特に高級な日本酒ほど冷蔵保管は必須となる。
遠く離れた地域には当然輸送コストが高くなる。
遠い地域には常温保管が可能な日本酒のほうが多く輸出されるのである。
文化遺産に登録されたことによってこれまでよりも海外需要が増える可能性がある。
適切に管理された美味しい日本酒を海外の多くの人に味わってもらえることが望ましい。