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海外のスーパーフードが取り上げられることが多くあるが、
日本の伝統的スーパーフードである酒粕もポテンシャルは高い。
人口の１／３～１／２が発症しているといわれる花粉症は国民病として認知されている。
パナソニック(株)の調査によると、１日の経済損失額は2,215億円とされている。
花粉症対策・抑制の食品とヨーグルト、納豆、キムチなどが挙げられるが、
同様の発酵食品である『酒粕』にも注目が集まっている。
酒粕は花粉症に効果があるのか、説明しよう。
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●酒粕は花粉症に対して間接的な効果がある
結論から言うと、『酒粕は花粉症に対して間接的な効果がある』。
間接的というのは、酒粕を取ると腸内環境が整い、免疫機能が正常化するという意味である。
酒粕を取る ⇒ 腸内環境改善 ⇒ 免疫機能正常化 ⇒ 花粉症抑制
このように直接的に花粉症の抑制に効果があるわけではなく、間接的に効果がある。
間接的な効果はヨーグルト、納豆、キムチなどの食品も同様である。
どの食品も腸内環境を整え、免疫機能を正常化することで、花粉症を抑制する。
●そもそも酒粕とは
酒粕とは、日本酒を造る際にできる副産物である。
米と麹と水を発酵させたもろみを搾って、日本酒と酒粕に分ける。
日本酒と同様に酒粕にも酒蔵ごとの個性が出る。
発酵する際に、酵母によって糖はアルコールと二酸化炭素に分解される。
このため、酒粕には糖があまり残っておらず、甘味は少ない。
酒粕自体には8～11％程度のアルコールが含まれている。
未成年やお酒に弱い人には注意が必要。
市販品の酒粕甘酒の多くは、アルコール分1％未満に調整されている。
●酒粕の栄養素
酒粕はカスと付いているが、栄養素を多く含んでいる。
ビタミン、ミネラル、必須アミノ酸など。
白米と比べて酒粕のほうが多い栄養素の代表的なものが以下である。
- タンパク質
筋肉、臓器、血液、皮膚などの材料
身体機能を調整するホルモンや酵素、抗体、神経伝達物質などの材料
免疫や代謝、血圧調整、神経機能の維持など - ビタミンB1
糖質代謝（ブドウ糖をエネルギーに変える）の補酵素 - ビタミンB2
脂質代謝の補酵素
細胞の再生を助け、体全体の成長を促進する - ビタミンB6
エネルギー代謝の補酵素
タンパク質の分解、合成を助ける
赤血球のヘモグロビン合成 - 葉酸
DNA合成や細胞分化の補酵素
赤血球形成やタンパク質の合成 - パントテン酸
エネルギー産生酵素の補助
免疫抗体やホルモンの合成 - 不溶性食物繊維
腸の蠕動運動を促進 - オリゴ糖
腸内細菌のエサとなる
血糖値が上がりにくい
細かく見るとまだまだあるのだが、腸内環境の改善に大きな影響を与えるのが、
食物繊維とタンパク質に含まれるレジスタントプロテインとオリゴ糖である。
食物繊維は水溶性と不溶性の2種類に大きく分けられる。
水溶性食物繊維は水に溶けやすく、腸内細菌のエサなって善玉菌を増やす。
不溶性食物繊維は水に溶けにくく、水分を吸収して便の容積を増やし大腸を刺激する。
酒粕には不溶性食物繊維が豊富に含まれている。
レジスタントプロテインは難消化性タンパク質のことである。
レジスタントプロテインは胃で分解されにくく、その先の小腸、大腸へ進み、
水溶性食物繊維と似た働きをする。
オリゴ糖も難消化性であり、胃や小腸で消化吸収されにくく、大腸まで届く。
大腸で腸内細菌のエサとなり、腸内環境に良い影響を与える。
・酒粕の栄養成分比較
文部科学省の食品成分データベースより、酒粕の成分を調べた。
–【成分比較】酒粕vs白米
注目したい成分を白米と比較した。
酒粕は白米よりも多くの栄養成分で高い値を示している。
タンパク質6倍、アミノ酸は6.7倍、不溶性食物繊維17倍、
ビタミンB1 1.5倍、ビタミンB2 26倍、ナイアシン10倍、
パントテン酸1.9倍、ビタミンB6 47倍、葉酸56.7倍。
酒粕が白米に対して食物繊維が多いのはなぜなのか。
それは麹菌と酵母菌によるものである。
麹菌が米(酒米)を糖化し、さらに酵母菌が糖をアルコールと二酸化炭素に分解する。
これらの菌の細胞壁が食物繊維なのである。
–酒粕の食物繊維量比較
腸内環境に大きな影響を与える食物繊維を調べた。
食物繊維が多いとされている食品と比較してみよう。
酒粕は100g当たり5.2gの不溶性食物繊維を含んでいる。
他の食品と比べても上位であることがわかる。
ごまは食物繊維がダントツに豊富だが、100gを消費するのは難しい。
ちなみに厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」によると、
食物繊維の成人の目標摂取量は、男性21g／日、女性18g／日である。
いろいろな食材を組み合わせて、工夫して摂取しよう。
●酒粕効果のしくみ
酒粕を取る ⇒ 腸内環境改善 ⇒ 免疫機能正常化 ⇒ 花粉症抑制
・腸内環境改善
まず酒粕を取ると腸内環境に影響があらわれる。
酒粕に含まれる食物繊維、タンパク質、オリゴ糖が活躍する。
–不溶性食物繊維
不溶性食物繊維は胃や小腸で消化・吸収されずに大腸に運ばれる。
大腸でも消化・吸収されない。
不溶性なので水に溶けず、逆に水分保持効果がある。
これによって便のカサを増し、腸を刺激して蠕動運動を促す。
–難燃性タンパク質（レジスタントプロテイン）
レジスタントプロテインは水溶性食物繊維と似た働きをするとされている。
胃や小腸で消化・吸収されずに、大腸まで到達する。
腸内の余分な脂質を吸着し、体外へ排出することで老廃物除去の助けとなる。
–オリゴ糖
オリゴ糖は胃や小腸で消化・吸収されにくく、大腸に到達する。
そして善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌などのエサとなる。
ビフィズス菌や乳酸菌はオリゴ糖を摂取して、乳酸や酢酸を作り出し、
腸内を刺激して蠕動運動を活発化させる。
・免疫機能の正常化
腸内には体全体の免疫細胞の70％が集まるといわれる。
体の免疫システムは、細菌やウイルスなどの病原体がが体内に侵入した際、
異物と認識して攻撃することで体を守る。
このような免疫反応を担っているのが、白血球を中心とした免疫細胞である。
腸内環境が整うということは、腸内の免疫細胞がより良く働いているということ。
それは免疫機能が正常であることを意味する。
・花粉症の抑制
花粉症は免疫細胞の異常反応によって起きている。
体内に侵入した花粉に免疫細胞が過剰反応してしまうのである。
その結果、くしゃみや鼻水、涙などの症状があらわれる。
これは免疫機能が異常な状態にある。
つまり、異常事態を解消して正常化することで、花粉症を抑制することができる。
その手段の一つとして酒粕の摂取がある。
●酒粕以外も摂取して相乗効果を！！
ここまで酒粕の効果を紹介してきたが、一緒に他の食品も摂取することをおすすめする。
納豆、ヨーグルト、キムチなど発酵食品は酒粕と同様の整腸作用がある。
これらの発酵食品は単独で摂るよりも、複数を取り入れたほうが良い。
その理由は、さまざまな菌を摂取することにある。
腸内細菌は人それぞれによって全く違っている。
詳しく検査しないとどの菌が有効かはわからない。
よって、多くの種類の菌を摂取することで効果が得られる。
有効でない菌も無駄にはならず、腸内細菌のエサとなり役立つ。
一種の食材に偏ることなく、多くを摂取することを心掛ける。
そして、気長に続けることである。
腸内環境の改善は数日でできるものではない。
続けることで腸内環境が整い、花粉症が抑制できる。
他にも体に良い影響がたくさんあらわれるだろう。
ただし、摂り過ぎは良くない。
何事も、過ぎたるは及ばざるが如しである。
●酒粕の摂取方法
酒粕は甘酒以外にもさまざまな料理に使える。
混ぜるだけで簡単に使えるのがお手軽である。
- 味噌汁に入れて粕汁にする
- 鍋に入れて粕鍋にする
- 野菜を漬けて粕漬けにする
- 肉を漬けてやわらかくする
- マヨネーズや味噌と混ぜてディップにする
- クリームのかわりに酒粕でフルーツサンド作る
- そのまま焼いて食べる
- 酒粕レーズンを作る
酒粕の応用の幅はとても広い。
保存性も高いので、酒粕を調味料として常備しておくのもよいだろう。
ポチップ●あとがき
「腸内フローラ」、「腸脳相関」、「第二の脳」、「腸活」、
「免疫細胞の70％が集中」など、腸に関する注目が高まっている。
酒粕によって花粉症を抑制すること以外にも、さまざまな恩恵がある。
日本酒の副産物である大量の酒粕はこれまで廃棄されるか、
漬け物などの業者に安価に買い取ってもらっていたかである。
しかし昔ながらのスーパーフードとしての注目が高まり、
酒蔵はもとより、スーパーにも置かれるようになった。
ネットでも手軽に購入できるので、酒粕を取り入れた生活を送ってみるのも良いだろう。
