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焼酎の原料【芋】

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文字数:約1600文字

 焼酎に使われる原料はさまざまである。
使ってはいけない原料はあるが、それ以外はなんでも使ってよい。
使わなければならない原料の指定がないのが、他のお酒と大きく違う点である。

●芋焼酎

 サツマイモを原料とし、鹿児島、宮崎、伊豆諸島など多く造られている。
華やかなで、甘い香りが特徴。
本格焼酎の代名詞的な焼酎である。

・原料

サツマイモ
Daniel Dan outsideclickによるPixabayからの画像

 原料となるサツマイモの原産地は、中南米メキシコの高原地帯である。
大航海時代にコロンブスによって新大陸が発見され、サツマイモがヨーロッパに持ち帰られた。
そこからフィリピン経由で長崎に伝わったとされる説や、中国から琉球経由で九州説などある。
薩摩(九州南部辺り)で生産され始めたのは18世紀初期頃といわれている。

 薩摩の土地は、桜島火山からの灰によって覆われたシラス台地である。
シラス台地では米や麦の生産が難しかったため、
やせた土地でも育つサツマイモが栽培されるようになった。

 その土地の特産品で造られるのが焼酎である。
薩摩ではサツマイモを使った焼酎造りが広まった。

現在では様々な品種のサツマイモがつくり出されている。

・黄金千貫(コガネセンガン)(農林31号)

 芋焼酎に最も多く使用されている品種。
1966年に品種改良により、デンプン用として誕生。
甘みが強く、華やかな香りの焼酎になる。
デンプンを多く含み、栗のような味わいで、蒸すとホクホクになり、食用にも優れている。
しかし、害虫に弱く、傷みやすいため貯蔵性が低い。
皮も中身も「黄金」色で、一株からたくさん収穫できるため「千貫」と名付けられた(一貫=約3.75㎏)。

・ジョイホワイト(農林46号)

 1994年に宮崎で焼酎専用として開発された品種。
フルーティな香りでまろやかな味わいの焼酎になる。
デンプンを多く含み、病害虫に強い。
しかし、糖化酵素を持たないため、蒸しても焼いても甘くならないので食用には向かない。
また、やや小ぶりで、収穫量(重量)が黄金千貫の8割ほどになる。
蒸しても硬いため仕込みに使いづらく、開発当初の期待には応えられていない。

●薩摩焼酎

 2005年にWTO(世界貿易機関)によって、鹿児島で造られる芋焼酎が地理的表示を認定された。
以下の条件を満たすことで地理的表示として「薩摩(さつま)焼酎」と名乗ることができる。

九州地図鹿児島県場所

・原料

  • 鹿児島県で収穫されたサツマイモのみを用いる
  • 米麹または芋麹を用いる
  • もろみの原料比重は米麹1:麦2
  • 鹿児島県内で採水した水を用いる

・製法

  • 鹿児島県内で発酵、蒸留を行う
  • 単式蒸留器で蒸留する
  • 貯蔵する場合は鹿児島県内で行う
  • 瓶詰めは鹿児島県内で行う

●芋100%

 米焼酎には米麹を使った米100%のものがある。
麦焼酎にも麦麹を使った麦100%のものがある。
実は芋焼酎には芋麹を使った芋100%のものがある。
1997年に芋麹造りに取り組み、1998年に100%芋焼酎を発売したのは国分酒造である。

・芋麹

サイコロ状のイモ
pixel1によるPixabayからの画像

 多くの芋焼酎では米麹を使って造られている。
サツマイモから造られた芋麹は手間がかかるのだ。

 まず、サツマイモをサイコロ状やチップ状にカットする。
そして多すぎる水分を飛ばすためにいったん乾燥させる。
その後、蒸してやわらかくして種麹ふり、繁殖させる。

 このようにして造られた芋麹を使って芋100%の芋焼酎が造られる。
味わいは芋の風味がしっかりとしているが、キレの良い後味
機会があれば一度試していただければと思う。

●あとがき

 一昔前は芋焼酎は臭いと言われていた時代があった。
その後の品質管理や、技術開発によって昔の臭さは感じなくなった。
しかしいまだに昔のイメージを引きずって、芋は臭いという人がいる。
当時の芋焼酎を飲んだ世代(今の中高年)である。
酒造りの進化を知らずに、古いイメージで否定するのはある意味で罪なことだ。



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