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焼酎に使われる原料はさまざまである。
使ってはいけない原料はあるが、それ以外はなんでも使ってよい。
使わなければならない原料の指定がないのが、他のお酒と大きく違う点である。
●泡盛
泡盛は米を原料とし、主に沖縄で造られている。
濃厚は味と香り、コクのあるのが特徴。
泡盛は他の焼酎に比べて独自性が強いが、米焼酎のなかの一種に分類される。
主にタイ米を使い、黒麹使用で、全麹仕込み(一段仕込み)を行う。
一般的な米焼酎との違いをまとめた。
米焼酎 | 泡盛 | |
---|---|---|
原料 | 日本米(ジャポニカ米) | タイ米(インディカ米) |
麹 | 白麹、黄麹、黒麹 | 黒麹 |
仕込み | 二段階 | 一段階(全麹仕込み) |
1470年頃に琉球王国とシャム(現在のタイ)との交易で蒸留酒が伝わり、
その後、泡盛が造られ始めたといわれる。
そのような経緯から泡盛は、タイの蒸留酒「ラオ・ロン」によく似ている。
・黒麹
泡盛に黒麹が使われるのは沖縄の環境が影響している。
沖縄は高温多湿の気候のため、雑菌が繁殖しやすい。
黒麹は発酵の際にクエン酸を生成し、雑菌の繁殖を抑えることができる。
黒麹以外では雑菌によってもろみが腐ってしまう可能性が高くなる。
ちなみに、クエン酸で泡盛が酸っぱくなってしまうのでは思うかもしれないが、
クエン酸は蒸留時にカスとして取り除かれるため、酸味は残らない。
・全麹仕込み
一般的な焼酎は二段階で仕込むが、泡盛は一段階である。
黒麹と同様にこれもまた、沖縄の環境が関わっている。
黒麹のクエン酸で雑菌を抑えるとはいえ、それでも完璧ではない。
時間をかければかけるほど腐敗のリスクは高まる。
ゆえに一段階で仕込みをすませてしまおうということだ。
黒麹も全麹仕込みもその土地に合わせた造り方である。
●琉球泡盛
1995年にWTO(世界貿易機関)によって、
沖縄県で造られる泡盛が地理的表示を認定された。
以下の条件を満たすことで地理的表示として「琉球泡盛」と名乗ることができる
・原料
・製法
あまり知られていないが、沖縄以外でも泡盛は造られている。
高知県で「土佐泡盛」という銘柄がある。
泡盛の製法(黒麹使用、全麹仕込み)で造られたものは泡盛と名乗れる。
タイ米を使わなくても問題ない。
●古酒(クース)
泡盛は熟成されたものが多い。
度数が高いわりにまろやかに感じるのは、甕の気孔による影響と考えられている。
3年以上熟成されたものを「古酒(クース)」と呼ぶ。
古酒のブレンドされたものは、最も若い年数で表示しなければならない。
10年物の古酒が入っていても、3年物が入っていれば表示は3年となる。
古酒の熟成方法に「仕次ぎ」と呼ばれるものがある。
年代別に甕を用意して、一番古い酒が減ってきたら、二番目に古い甕から補充する。
二番目の甕には三番目の甕から補充しこれを繰り返すと、一番古い甕は減ることはない。
スペインのシェリー酒で使われるソレラシステムと同様の方法である。
●あとがき
沖縄で土産物屋に行くと、すさまじい数の泡盛が並んでいる。
店によっては試飲もさせてもらえるので、選んでいるうちに酔ってきてしまう。
また、泡盛専用の酒器もあり、「カラカラ」という土瓶型の酒器から
お猪口よりも小さな杯に泡盛を注ぎ、黒糖を食べながら飲むのは最高である。