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●茶色の理由
ビールびんが茶色なのは、なるべく日光を遮るためで、
日光にさらされるとホップに含まれる成分が変化し、
ビールに「日光臭」という独特の臭みが生じたり、
味が変化し、おいしさを損なってしまうからである。
●光酸化
ホップの苦味成分はビールの中で光を受けると、その化学組成が変化を起こしやすい。
酸素に触れるわけではないが、この化学変化は結果として元の成分の酸化反応となるので、
「光酸化」と呼ばれている。
つまり、びん詰によって流通されると、外気に触れなくても、光が入って酸化してしまう。
この光によって成分が分解されて起こる光酸化は、蛍光灯の光でも生じてしまう。
光には様々な波長があるが、光酸化を起こしやすい波長というものがあり、
この波長を最もカットするのが茶色のびんなのである。
黒いびんよりも茶びんのほうが、この波長をカットする。
だからといって茶びんに入っていれば日光の元にさらして良いわけではない。
有害な光をカットするといっても所詮はガラスであり、限度がある。
●茶色以外
デザイン的な理由から、茶色以外のびんを使用するメーカーもある。
茶色にはかなり劣るが、それでも茶色の次に有害波長をカットしやすいのは緑色ガラスである。
ハイネケンやカールスバーグや青島(チンタオ)などが使用している。
それ以外の色は黒でも青でも大差なく、有害な光をほとんど通してしまうと考えて良い。
・透明のびん
中には透明びんを使用しているメーカーもある。
日本でもなじみ深いものはおそらくメキシコのコロナビールであろう。
しかし、コロナビールの場合は光酸化がほとんど起こらない。
なぜかというと、このビールに使用するホップは、ホップの有効成分を液体状に抽出したもので、
苦み成分が光で分解されにくいように化学加工しているからなのだ。
茶または緑色以外のびんに入ったビールは、
コロナのように液体状の化学処理済みのホップを使用しているか、
あるいはメーカーが何らかの理由で光酸化は無視するポリシーを持っているかのいずれかである。
●あとがき
ガラスびんでは光酸化するというのなら、今後は金属缶に置き換わっていくのかというと、
そうではないらしい。
ドイツではびんはリユースで、回収したびんを洗浄して何度も使いまわす。
しかし缶は一度溶かして、再度製缶するため、コストと環境に良くない。
びんにコーティングするなどの技術もあるが、これもコストが課題となる。
そう考えるとまだまだびんの使用は続きそうだ。