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アメリカでは、シードルをハードサイダー(Hard Cider)と呼ぶ。
サイダーとハードサイダーは区別されており、
サイダーはノンアルコールの炭酸飲料のことを指す。
サイダーという呼び方はイギリスからの入植者が広めたものだが、
禁酒法時代に、ソフトドリンクのアップルサイダーに「サイダー」の名を奪われてしまう。
禁酒法が解禁される頃には、ソフトドリンクのサイダーという呼び方は定着し、
リンゴ酒はハードサイダーと呼び、区別することになった。
●味わい
アメリカ人の好みらしい味わいのものが多い。
少し甘味があり、はっきりと特色を出す味わいである。
香り付けなどしたものも多く、新しいことへのチャレンジ精神がうかがえる。
また逆にヨーロッパの伝統的な製法で造られるものもあり、
アメリカらしい幅広い種類がある。
●生産地
ハードサイダーはアメリカ全土で造られているほど人気が沸騰しているが、
そのなかでも、イーストコースト、五大湖周辺、大西洋岸北西部が盛んである。
クラフトビールの次のブームとして、ハードサイダーに注目が集まっている。
・イーストコースト
アメリカ東海岸から入植が始まったため、ここからハードサイダーが広まった。
当時、入植者が持ち込んだヨーロッパのリンゴの接ぎ木は、
環境が合わずうまく育たなかった。
リンゴはアメリカ現地の品種を改良し、ハードサイダーが造れるようになった。
イーストコーストではハードサイダー始まりの地として、伝統的な製品が多い。
入植者の子孫が当時の味を守り続けている。
・五大湖周辺
ミシガン州では加工用リンゴの栽培量が全米一である。
リンゴ栽培者は、昔から売り物にならないリンゴをハードサイダーにしていた。
このような経緯から現在でも多くのリンゴ栽培者が、ハードサイダー造りを行っている。
造られるハードサイダーは、それぞれの農家独特のファームサイダーであり、
懐かしく、牧歌的なものが多い。
・大西洋岸北西部
ワシントン州では生食用リンゴの栽培量は全米一である。
この地ではクラフトビールが盛んに造られ、ブームの記憶がまだ鮮明に残る。
そのブームに似た現象が、ハードサイダーでも起き始めているという。
ここでは大量のクラフトビールが造られているだけあり、
ホップ栽培が盛んに行われている。
そうすると、ハードサイダーとホップを組み合わせる、
という発想が出てくるのは自然なことである。
ホップ以外にもクラフトビールで培った技術やノウハウを活かして、
フレーバーやスモーク、高アルコール化など様々な製品が造られている。
●あとがき
アメリカの多様性と開拓精神は、国が持つ伝統なのだろう。
自由な発想で、即実行できるのは、日本ではなかなか目にしない。
新しいことへの挑戦がブームを生み、世界をリードする。
その影には多くの失敗もあるが、それを受け入れるだけの寛容さも持っている。
技術や考え方、実行力など、日本が学ぶべきことはたくさんある。