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「飲む点滴」と呼ばれるほど栄養価の高い甘酒は、
市販品よりも自作したもののほうが効果高い。
意外と簡単に作れるので試してみよう。
●麹について
麹とは、麹菌という無害なカビの一種である。
米や麦や大豆に繁殖させたものを、それぞれ米麹、麦麹、豆麹と呼ぶ。
麹菌は、日本で昔から発酵食品に使われてきた。
味噌や醤油、日本酒などの伝統的な食品を造るのに欠かすことができない。
2006年には日本醸造学会で『国菌』として認定されている。
学名はアスペルギルス・オリゼーで、和名は黄麹菌である。
●麹の種類
甘酒の材料として使う麹には、2種類ある。
生麹と乾燥麹である。
スーパーやネットで購入でき、値段は生と乾燥で大差ない。
スーパーでは、漬け物のコーナーや、漬け物の素のコーナーに置かれていることが多い。
・生麹
蒸米に麹菌を繁殖させたものを、そのまま真空パックしたもの。
塊のままパックされていることが多い。
冷蔵保存で1~2週間持つが、開封後は早めに使い切りたい。
冷凍保存すれば半年は持つ。
・乾燥麹
乾燥麹は、生麹から水分を飛ばして乾燥させたもの。
パラパラの状態のものが多い。
日持ちがよく、冷蔵保存で1年ほど持つ。
●甘酒のつくり方【麹】
ここでは2つ紹介する。
1つは、最も簡単な麹のみのもの。
もう1つは、量を増やせるお粥と麹を使うもの。
どちらもポイントは温度管理である。
麹が発酵する際に出す酵素が活発に働く温度が重要。
60℃前後をキープすることでうまく作ることができる。
温度が50℃程度では、酵素が働けず、甘くならない。
逆に70℃以上になると酵素が死んで(失活して)しまう。
麹は生き物なので、麹そのものや作業環境によって出来が違ってくる。
以下は、参考レシピである。
・麹のみの甘酒のつくり方
材料は、麹とお湯のみである。
麹のみで作るので、濃厚な甘酒になる。
- 麹……200g(生でも乾燥でも可)
- お湯…生麹の場合は200㏄、乾燥麹の場合は400㏄
つくり方は以下の通りである。
- 麹をほぐす
ダマがあると発酵ムラができるので、パラパラにする。 - お湯を加える
63~66℃くらいのお湯を麹に加えて、よく混ぜる。 - 60℃前後を4時間キープ
よくかき混ぜて60℃になったら、その温度を4時間キープする。
1時間に1回は温度を確認する。 - 完成
4時間経って、甘味が出ていれば完成。
甘味が薄い場合は、時間を延長して発酵を促す。
・お粥を使う甘酒のつくり方
材料は、麹とお粥である。
お粥を加えることで、量をかさ増しできるが、
お粥を麹が分解するのに時間がかかる。
- 麹……200g(生でも乾燥でも可)
- お粥…600g
つくり方は以下の通りである。
- 麹をほぐす
ダマがあると発酵ムラができるので、パラパラにする。 - お粥を加える
63~66℃くらいのお粥を麹に加えて、よく混ぜる。 - 60℃前後を8~10時間キープ
よくかき混ぜて60℃になったら、その温度を8~10時間キープする。
1時間に1回は温度を確認する。 - 完成
味を確認して、甘味が出ていれば完成。
甘味が薄い場合は、時間を延長して発酵を促す。
どちらも、ヨーグルトメーカーのような温度管理ができるものがあれば楽に作れる。
甘酒メーカーというものも販売されているので、一考してみるのも良い。
炊飯器の場合、「保温モード」でフタを開けて温度を調節する。
フタを開けると雑菌が侵入してくるので、ぬれ布巾などをかぶせておくと良い。
保温容器の場合、温度が下がったら鍋で温め直す。
電気を使わず経済的だが、フタを開ける際は注意が必要。
発酵が進んで、内圧が高まっているので、慎重に開ける。
●保存方法
粗熱をとってから、保存する。
冷蔵庫に保存する際は、容器のフタを締めすぎないように注意する。
冷蔵中も発酵は緩やかに進むため、爆発しないように気を付ける。
発酵が進むと甘酒が酸っぱくなる。
その場合は、甘酒として飲むではなく、調味料として使うことをオススメする。
発酵を完全に止めるには加熱処理して、酵素を失活さればよいが、
酵素による健康効果は失われてしまう。
自作の良さは非加熱であることで、酵素を生きたまま取り込めることである。
市販品は流通と保存性を考えて、加熱処理されている。
甘酒の効果を最大限に得たいなら、非加熱をオススメする。
●あとがき
甘酒作りは温度管理さえしっかりすれば、失敗はない。
一、二回作ってコツをつかめば、簡単に健康飲料が作れる。
酒という名前がついているが、ノンアルコールである。
健康な生活を送るために、日常に甘酒を取り入れのも良いだろう。