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テキーラのつくり方

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文字数:約2700文字

 テキーラが他の蒸留酒と違うのは、原料であるアガベの栽培・収穫が
製造に含まれていることである。

 テキーラの製造工程は、以下の順に進む。

  1. 栽培・収穫
  2. 加熱・搾汁
  3. 発酵
  4. 蒸留
  5. 熟成
  6. 瓶詰め

 それぞれの工程を見ていこう。

栽培・収穫

・栽培

アガベ
Efrain HernandezによるPixabayからの画像

 原料となるアガベアスルの栽培をする。
アガベの地下茎から株分けされた子株を、ビニールハウスなどで数カ月育てる。

 育てた子株を畑に移して、5~8年かけて育てる
生長する大きさを考えて、3mくらいの間隔を空ける必要がある。

 畑に植えたアガベは、CRT(テキーラ規制委員会)に登録申請しなければならい
全てのアガベがCRTによって管理されている

・収穫

ピニャ
CamiloCoteによるPixabayからの画像

 アガベが生長して収穫期になると、テキーラに使う球茎部(ピニャ)を切り出す。
ヒマドール」と呼ばれる収穫人が、アガベの葉を切り落としていく。

 葉の根元をどの程度残すかによって、テキーラの味わいに影響する。
葉の根元を長く残すと辛味が増し、短く切り落とすとクリアな味わいになる。
どのようなテキーラを造りたいかによって、ヒマドールが調整する。

 葉を切り落とされ、球茎部だけになったものは、見た目がパイナップルのように
見えることからピニャ(パイナップル)と呼ばれる。
ピニャは30キロ以上の重さがあり、半分くらいにカットされてトラックに積み込まれる。

加熱・搾汁

・加熱

 ピニャを加熱することで、多糖類の一種であるイヌリンを糖に分解する

 ピニャの加熱方法は、大きく分けると3つある。


タテマドマンポステラアウトクラベ
内容地中に掘った穴に熱した石を
入れ、その上にピニャを置き、蒸し焼きにする。
レンガ製の釜でピニャを蒸し焼きにする。大型の圧力釜でピニャを蒸し焼きにする。
時間48~72h48~72h8h

・タテマド

 最も伝統的な方法
地中に穴を掘り、熱した石を入れる。
その上にピニャを置き、フタをして蒸し焼きにする。
メスカル造りでよく使われる製法

・マンポステラ

釜
Jorge FurberによるPixabayからの画像

 伝統的な方法。
粘土や石、レンガなどで作られた釜にピニャを入れ、蒸し焼きにする。

・アウトクラベ

 比較的新しい方法。
大型のステンレス製圧力釜にピニャを入れ、蒸し焼きにする。
伝統的製法に比べて、短時間でピニャをやわらかくすることができる

・搾汁

 搾汁は、タオナとローラーミルという方法がよく知られている。
大手メーカーでは生産性の高い最新式の方法を使うところもある。

・タオナ

石臼
Jorge FurberによるPixabayからの画像

 伝統的な方法。
石臼をロバに引かせて、ピニャを潰して搾汁する。
最近では、機械を使って石臼を回す方法もある。

・ローラーミル

 シュレッダーとも呼ばれる。
ローラーでピニャをすり潰して搾汁する。
タオナよりも効率的でスピーディー

発酵

 テキーラの発酵方法は、大きく分けると3つある。
発酵によってアルコール分は6~8%程度になる。


自然酵母発酵培養酵母発酵培養酵母+ 発酵促進剤
内容アガベの葉に自生するザイモモナス菌を使う培養された酵母を使う ワイン酵母、ビール酵母、パン酵母など培養酵母の発酵を促すために、尿素やビタミンなどを添加する
時間72h36h12h

・自然酵母発酵

 アガベの葉には、ザイモモナス菌という菌が自生している。
この菌を利用して、糖を二酸化炭素とアルコールに分解する。

 または、搾汁液を木製の発酵槽に入れて、蒸留所内に棲み付いた蔵付酵母
利用する自然発酵法もある。

・培養酵母

酵母
HerbertによるPixabayからの画像

 純粋培養された市販の酵母(ワイン酵母、ビール酵母、パン酵母など)を使用する。
酵母の種類によって味わいに大きな影響を与えるため、
完成品のイメージに合わせて酵母を選ぶ。

・培養酵母+発酵促進剤

 時間のかかる発酵を素早く行うために、酵母の栄養分となる
尿素やビタミン、マグネシウムなどを投入
することで、時短することができる。

蒸留

 蒸留方法には単式蒸留連続式蒸留の2つがある。
または、これらを組み合わせることもある。

 蒸留とは、水とアルコールの沸点の差を利用して、
アルコール度数を高めるための工程である。

・単式蒸留

単式蒸留器
Emilian Robert VicolによるPixabayからの画像


 単式蒸留器はポットスチルとも呼ばれる。
原液の風味を多く残し、テキーラに個性を与える


 ステンレス製や銅製、木製のものがある。
銅製は不快臭の元となる硫黄酸化物を吸着するので、よく使われている。


 単式蒸留1回ではアルコール度数が20%ほどにしかならないため、
最低でも2回の蒸留が必要
回数を重ねればアルコール度数は上がるが、その分風味はクリアになっていく。


・連続式蒸留

 単式蒸留の仕組みを何層も組み込んだもの蒸留方法。
一度の蒸留で高いアルコール度数を得ることができるが、
風味はクリアになり、個性が薄れる

 プレミアム・テキーラにはあまり使われない。

熟成

 熟成にはオーク樽を使うが、オーク樽にも色々ある。
よく使われるのがアメリカンオークのバーボン樽である。
一度バーボンを熟成しているため、新樽よりも樽の影響が少なくすむ。

 他にも、フレンチオークの新樽や、ワイン樽、シェリー樽などが使われる。
テキーラの味わいを残しつつ、個性的な味わいに仕上げる必要がある。

・熟成期間による分類

 熟成期間によって4つに分類される。

ブランコレポサドアニェホエクストラ・
アニェホ
熟成期間0~2ヵ月未満2ヵ月以上1年以上3年以上
樽容量600L以下600L以下

・エンジェルズシェア

 エンジェルズシェアとは、樽熟成中に気温や湿度の環境変化に伴って、
樽が膨張・収縮することで中の液体が蒸発すること。

天使
UschiによるPixabayからの画像

 天使の分け前とも呼ばれ、スコットランドのウイスキー熟成では、
年に2~3%ずつ蒸発して樽の中身が減ってしまう。

 メキシコの環境でのエンジェルズシェアは10%以上である。
スコットランドの2%と比べると5倍になる。
つまり、樽熟成が凄まじいスピードで進むのである。

瓶詰め

 「100%アガベテキーラ」の場合は、原産地で瓶詰めしなければならない。
テキーラ」の場合は、国内外の認定業者での瓶詰めが許可されている。

テキーラボトル
1259483によるPixabayからの画像

 テキーラのボトルは他の蒸留酒よりもバリエーションが豊富である。
形状や色、キャップが特徴的なので、バーなどでも目立つ。
個性的なボトルを眺めのもテキーラの楽しみの一つだろう。

テキーラの基礎知識 ↓

●あとがき

 伝統的な製法で造られるテキーラは、どうしても大量生産できない。
大量生産できないと当然高価格になる。
最近の世の中の傾向としては、ストーリー性を重視するようだ。
その製品が造られた背景を知り、そこに価値を見出す。
伝統製法で手間暇かけて造られたことへの対価が認められる時代である。



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