文字数:約1100文字
海底で熟成されたワインと聞くと、興味を惹かれる。
現在、日本で海底熟成を行っているワインがあるので、紹介しよう。
●西伊豆海底熟成ワイン VOYAGE(ヴォヤージ)
西伊豆海底熟成ワイン VOYAGE(ヴォヤージ)『VOYAGE』は西伊豆の活性化を目的に、2018年から実施されているプロジェクトである。
12月から5月下旬までの約半年間、海底15mに沈めて熟成させる。
2000本程度が海底熟成されるので、希少性が高い。
海底15mには、ワインを劣化させる天敵、紫外線が届かない。
さらに、15℃~19℃の水温が保たれる。
また、海流による「うねり」により、適度な微振動が加わることで、熟成が進む。
これらの条件により、まろやかで、コクのある味わいになる。
このプロジェクトでは、フランス産やイタリア産のワイン以外にも、
日本酒や梅酒の海底熟成も行っている。
海底での熟成は、ボトル1本1本が重ならないように置くことで、表面に貝や石灰藻が付着する。
同じものが一つとない、自然の造形美を思わせるボトルは、インテリアにもなる。
また、ギフトにもインパクトがあり、喜ばれることだろう。
●海底熟成のロマン
海底熟成といえば、やはり沈没船から引き揚げられたワインを思い浮かぶ。
沈没船のワインで、もっとも有名な話は「エドシック・モノポール」だろう。
・海底熟成80年の『エドシック・モノポール』
まず、エドシック・モノポールというのは、シャンパーニュの銘柄である。
1916年、第一次世界大戦中にロシアがフィンランド駐留のロシア軍に、
1907年ヴィンテージのシャンパーニュや、ブルゴーニュワインなどを送った。
物資を積んだ『ジョンコピング号』は、航海中にドイツの潜水艦『Uボート』に見つかり、
撃沈されてしまう。
その後、80年以上経った1998年に、ジョンコピング号が海底で見つかる。
引き揚げられた積荷のなかから、良い状態の『エドシック・モノポール』が発見される。
抜栓されたものは、泡立ちも十分で、味わいもしっかりしていた。
引き揚げられた『エドシック・モノポール』は、オークションで1本100万円以上の値で取引されたという。
●あとがき
沈没船から引き揚げられたワインに高値がついたのは、やはりロマンがあったからだと思う。
地上で80年間熟成したものがあったとしたら、高値がつくだろうが、
海底で80年にはストーリ性が付加され、ロマンがかき立てられる。
味わいも先入観が加わり、より美味しく感じる。
思い込みや先入観で美味しく飲めるなら、それで良いと思う。
ブラインドテイスティングをしているわけではないのだらか。