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ラム造りの重要な点は、原料のサトウキビをどのような状態で使うかということである。
ラムの製造工程は、以下の順に進む。
- 栽培・収穫
- 搾汁(、精糖、加熱濃縮)
- 発酵
- 蒸留
- 貯蔵・熟成
- 瓶詰め
それぞれの工程を見ていこう。
①栽培・収穫
原料となるサトウキビを栽培する。
サトウキビは茎から増殖させることで、安定した収穫ができる。
種から栽培すると突然変異する可能性があり、リスクが生じる。
約半年かけて2~5メートルに生長し、成長が止まってからさらに
半年ほどかけて節の間に糖分を溜める。
栽培を始めてから12~18カ月で収穫ができる。
収穫は手刈りか機械刈りで行われる。
傾斜のある畑では機械が使えないため、手刈りがいまだに行われている。
かなりの重労働である。
1つの株で3,4回の収穫を繰り返す。
その後、生産性を上げるために植え替えを行う。
②搾汁(、精糖、加熱濃縮)
・搾汁
収穫されたサトウキビは、すぐに圧搾機にかけて搾汁される。
サトウキビは刈った直後から劣化が始まるため、畑の近くに工場がある。
圧搾機には回転する歯が付いており、サトウキビを潰して汁を搾り出す。
この時、サトウキビに水をかけて繊維を柔らかくし、搾りやすくする方法がある。
メーカーによっては水ではなく、搾り汁をかけるところもある。
サトウキビは70%が水分、14%がショ糖、14%が繊維質、2%が不純物とされてる。
搾汁後に残る繊維質をバガスといい、燃料として燃やしたり、畑の肥料として撒かれたりする。
サトウキビジュース100%を使用して造るラムを、アグリコールラムという。
サトウキビジュースは保存が利かないため、輸送ができず、収穫時期も限られる。
このため、アグリコールラムは希少性が増し、コストが高くなる。
・精糖(糖蜜作り)
ラムに使う糖蜜は砂糖を作る際に、副産物として得られる。
そのため、砂糖を作る必要がある。
搾汁されたサトウキビジュースを加熱濃縮し、
途中で石灰乳を加えて不純物を取り除き、煮詰める。
濃縮液に種糖を加え、結晶化させ、
遠心分離機で砂糖と糖蜜を分離する。
糖蜜は保存性に優れ、低コストで、運搬が容易である。
このためサトウキビ畑を持たないメーカーでも糖蜜でラム造りができる。
糖蜜を使って造るラムを、トラディショナルラムという。
世界で生産されている9割以上のラムがトラディショナルラムである。
・加熱濃縮
搾汁したサトウキビジュースを加熱濃縮してシロップ化させる。
シロップ化することにより、保存性が高まり、運搬ができるようになる。
サトウキビの風味を残しつつ、輸送も可能にしたものである。
加熱濃縮シロップを使って作るラムを、ハイテストモラセスラムという。
③発酵
サトウキビジュース、または糖蜜の水溶液、またはシロップの水溶液を発酵させる。
液温を使用する酵母が活性化する温度まで上げる。
酵母は純粋培養酵母を使う蒸留所が多いが、
製パン用の酵母や、野生酵母を使う蒸留所もある。
発酵時間は環境によって違うが、短くて24時間程度、
なかには2週間ほどかけるところもある。
酵母の働きにより、糖がアルコールと二酸化炭素に分解される。
発酵を終えるとアルコール度数4~8%のもろみが完成する。
④蒸留
できあがったもろみを蒸留機に投入する。
蒸留機は単式蒸留器と連続式蒸留機があるが、
主に連続式が使われることが多い。
連続式蒸留機は、大量に高アルコールの蒸留液を得ることができる。
風味は弱く、味わいはクリアになる。
単式蒸留器は、高アルコールを得るために2回の蒸留が必要。
原料由来の風味が残り、味わいは豊かになる。
蒸留所によって単式、連続式を組み合わせたり、
蒸留機の素材を銅やステンレスにしたり、
好ましくない香りの蒸留液を(ヘッドとテール)をカットしたり、さまざまである。
⑤貯蔵・熟成
蒸留により得られた原酒は熟成するものと、しないものに分かれる。
熟成しないホワイトラムは、加水調整してスレンレスタンクで3ヵ月から1年未満貯蔵される。
熟成するものは大樽またはバーボン樽などで熟成される。
2ヵ月から3年未満の熟成でゴールドラム、3年以上の熟成でダークラムとなる。
・エンジェルズシェア
エンジェルズシェアとは、樽熟成中に気温や湿度の環境変化に伴って、
樽が膨張・収縮することで中の液体が蒸発すること。
天使の分け前とも呼ばれ、スコットランドのウイスキー熟成では、
年に2~3%ずつ蒸発して樽の中身が減ってしまう。
暑いカリブ海諸国の環境ではエンジェルズシェアは10%になることもある。
スコットランドの2%と比べると5倍になる。
つまり、樽熟成が凄まじいスピードで進むのである。
熟成をゆっくり行うために、樽をヨーロッパなどの涼しい地域に移動させるメーカーもある。
⑥瓶詰め
ホワイトラムは不純物を取り除いたり、無色透明にするために、濾過される。
メーカーによっては色はそのままの薄黄色で商品化するところもある。
ゴールドラムとダークラムも樽の木片などを除去するために濾過される。
多くの場合はブレンドして味や香りを調整する。
場合によっては着色や糖分調整も行われる。
ラムの規則は国によって大きく異なるのである。
●あとがき
世界中で造られているラムは、製造方法もさまざまである。
他のお酒よりも決まりごとが少ないラムは、新しい発想で造られるものも多い。
小規模蒸溜所も増えており、これからも挑戦的なラムが生み出されることに期待したい。