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日本ではコンビニやスーパーでもよく見かけるマイヤーズ。
人によって好みが分かれ、製菓用やコーラ割り用という人もいる。
実は製菓専用のマイヤーズがあることを知らない人は多い。
そんなマイヤーズについて見てみよう。
●基本情報
- 商品名 :マイヤーズ
- 英 字 :Myers’s
- 創業年 :1879年
- 創業者 :フレッド・ルイス・マイヤーズ
- 日本取扱:麒麟麦酒(株)
●歴史
マイヤーズの公開されている情報は少ない。
メジャーブランドは歴史や製法などの情報があるものだが、
マイヤーズはほとんどわかっていない。
ジャマイカでサトウキビを栽培し、製糖業を営んでいた
フレッド・ルイス・マイヤーズは、砂糖の副産物である糖蜜を使ってラム製造を始める。
1853年に首都キングストンで生まれたフレッドは、この時26歳。
1915年にフレッドは亡くなるが、子供たちが事業を受け継ぎ、ラム製造を続ける。
1924年にダークラムが人気となり、世界中に広まる。
1954年にカナダのシーグラム社によってブランドは買収される。
だがシーグラム社が酒類事業から撤退するため、
2000年にイギリスのディアジオ社に複数のブランドとともに売却される。
さらに2018年にディアジオ社はマイヤーズを含む19のブランドを
アメリカのサゼラック社に売却し、現在に至る。
これまでマイヤーズはオリジナルダークとプラチナホワイトのみだったが、
2022年夏にアメリカで『マイヤーズ ラム シングルバレル』が発売された。
ライウイスキーの樽でフィニッシュされたものだという。
サゼラック社がマイヤーズに新たな展開をもたらすのだろうか。
●製法
マイヤーズを含め、一部のジャマイカンラムでは特殊は発酵方法で造られる。
糖蜜を水で溶かしたものを野性酵母で発酵させるのだが、そこにダンダーを加える。
ダンダーとは、前回の蒸留残液にサトウキビの繊維などを混ぜて熟成させたものである。
この混合液を数週間~2ヵ月ほどかけて発酵させる。
できあがった発酵液は単式蒸留器で蒸留される。
また、ダンダーを加えない別の発酵液は連続式蒸留機で蒸留され、
それらがブレンドされて樽詰めされ、4年熟成される。
●製菓専用マイヤーズ
コンビニやスーパーなどで見かけるマイヤーズは麒麟麦酒(株)が販売する一般向け商品である。
それとは別に製菓用の業務向けマイヤーズがある。
製菓用マイヤーズは宏洋(株)が製菓業者向けに販売している。
違いは一般向けよりもアルコール度数が高いこと。
一般向けが40%なのに対して、45%や55%がある。
名前もオリジナルダークではなく、コンフェクショナリーとプランターズパンチである。
アルコール度数約64%のものをキリングループが輸入し、
加水調整後、ボトリングして出荷している。
このコンフェクショナリーは宏洋(株)のオリジナル商品である。
アルコールには製菓に好ましい香りが溶け込みやすい。
度数が高いほうが溶け込んでいる香り成分も多くなることが製菓用として適しているのだろう。
宏洋(株)は製菓用のお酒を扱っており、ラム以外にもブランデーやビール、テキーラなどがある。
製菓業界では名の知れた心強いメーカーである。
●あとがき
これまでマイヤーズは派生品がほとんどなかった。
他のブランドのように長期熟成品やスパイスドなどあれば世間の見る目も変わっていたかもしれない。
シーグラム社やディアジオ社は現状維持の体制だったようだが、
サゼラック社がマイヤーズの新境地を開くことに期待したい。