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ラムと関連性の深いお酒としてカシャッサ(=カシャーサ)が挙がる。
カシャッサがどのようなお酒なのか、ラムと比較してみよう。
●カシャッサとは
カシャッサとは、ブラジルで造られるサトウキビの搾り汁を原料とした蒸留酒である。
ブラジルの法律でカシャッサが定義されており、原産地統制呼称をイメージるとわかりやすい。
『日本酒』、『コニャック』、『シャンパーニュ』などと同様に、
特定の土地(国)で、決められた製法で造られたもののみがその名を名乗れる。
・定義
2003年にブラジルでカシャッサを定める法律が制定された。
主なものが以下である。
- 原料:サトウキビジュース(搾り汁)
- アルコール度数:38~48%
- 砂糖添加:≦6g/L
アルコール度数が48%を超え、54%までのものはシュガーケーン・スピリッツとなる。
ブラジル国内の州によって、さらに厳格な州法を制定しているところもある。
・原料
ラムも原料はサトウキビ由来であるが、原料の状態が3つある。
砂糖精製の副産物である糖蜜、サトウキビジュース、サトウキビジュースの濃縮シロップ。
どれを使ってもラムと名乗ることができる。
カシャッサはサトウキビジュースのみが原料として認められている。
サトウキビジュースを使ったアグリコールラムと同じである。
・種類
カシャッサには『アルティサナウ』と『インドゥストリアウ』という2つの種類がある。
『インドゥストリアウ(Indústrial)』は英語のインダストリアル、つまり工業を意味する。
主に大手メーカーが連続蒸留機を使った大量生産されるカシャッサである。
『アルティサナウ(artesanal)』は英語のハンドメイド、つまり手造りを意味する。
主に小規模に単式蒸留器を使って造られるカシャッサである。
・製造工程
ラムもカシャッサも製造工程は、基本的に同じである。
- 栽培・収穫
- 搾汁
- 発酵
- 蒸留
- 熟成
- 瓶詰め
カシャッサは加水調整しないため、蒸留時にアルコール度数が38~48%になるようにする。
熟成ではブラジル原産の樽材を使う。
樽材は30種類以上あり、代表的なものはカルヴァーリョ(オーク)、
アンブラーナやカバリウバ、カネラ・ササフラス、ジェキティバなどである。
●歴史
・起源
カシャッサの起源はラムと類似している。
16世紀前半にポルトガル人によってサトウキビが持ち込まれる。
サトウキビから砂糖造りが始まり、カシャッサが生まれる。
ちなみに砂糖生産量世界一はブラジルである。
正確な年はわかっていないが、1552年にはカシャッサの原形である
『カシャッソ』に関する記述が、バイーア州総督トメ・デ・ソウザによって残されている。
つまり1552年よりも前にカシャッサの原形があったことになる。
・語源
カシャッサ(Cachaça)の語源は諸説あり、代表的なものが以下である。
- 泡説
- ブドウの房説
- 豚説
①泡説
砂糖造りの過程で、サトウキビの搾り汁を煮出していると沸騰して泡が出てくる。
取り除いた泡を放置していると自然発酵し、それを口に含むと酔ったことから、
泡(Cagasa)がカシャッサ(Cachaça)になった。
②ブドウの房説
サトウキビの搾り汁を発酵させると、泡が出る。
この泡がブドウの房(Cachos)に似ていることからカシャッサ(Cachaça)になった。
③豚説
ブラジルの森林に生息している猪(豚)(古いイベリア語でCachaço)を調理するときに、
肉を柔らかくするために蒸留酒を使ったことからカシャッサ(Cachaça)になった。
・別名
カシャッサはブラジルの地方ごとに様々な呼び名がある。
『ピンガ(Pinga)』はサン・パウロ周辺、『カニーニャ(Caninha)』は南部、
『カシャッサ(Cachaça)』はリオデジャネイロ州など。
有名な『カシャーサ51』を製造している会社は、サンパウロ州のピラスヌンガの町で創業した。
サンパウロでピンガと呼ばれるのは、ピラスヌンガの名前に由来する。
●ラムとカシャッサの違い
まとめると以下のようになる。
ラム | カシャッサ | |
---|---|---|
原産国 | 世界中 | ブラジルのみ |
発祥時期 | 16世紀前半 | 16世紀前半 |
原料 | サトウキビ | サトウキビ |
原料状態 | 糖蜜、搾汁液、濃縮シロップ | 搾汁液 |
アルコール度数 | 規定無し (一部地域では40%以上など) | 38~48% |
加糖 | 規定無し (一部地域では不可) | ≦6g/L |
熟成樽材 | 規定無し | ブラジル原産のみ |
●あとがき
数千のブランドがあるといわれるブラジルの国民酒カシャッサ。
そのほとんどが国内で消費され、輸出されるものは1割もない。
各家庭でも気軽に造られているというから、驚きである。
家庭での酒造りが禁止されている日本では考えられないことである。
ブラジルのスーパーに行けば、まったく知らないカシャッサが並んでいるだろう。
お土産に最適である。