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馬に関係するお酒をまとめてみた。
定番商品の銘柄やラベル、カクテル名などを紹介しよう。
コラボや限定品は機会があれば紹介したい。
馬好きの人は、馬のラベルを愛でながらお酒を飲んだり、
競馬好きの人は、幸運のシンボルをゲン担ぎにするもの良いだろう。
●日本酒
日本酒では、以下を紹介する。
- 上げ馬(あげうま)/細川酒造/三重県
- 白馬(しらま)/高垣酒造/和歌山県
- 七冠馬(ななかんば)/簸上清酒合名会社/島根県
- 白馬錦(はくばにしき)/薄井商店/長野県
- 左馬(ひだりうま)/有賀醸造合資会社/福島県
・上げ馬(あげうま)/細川酒造/三重県
上げ馬は、三重県の細川酒造で造られている地酒。
三重県産の米と水を使って造られている。
名前の由来は、三重県桑名市にある多度大社の上げ馬神事にある。
人馬一体となって、急峻な坂を駆け上がり、断崖を超えた馬の数でその年の豊凶を占う。
歴史の長い神事であり、現代も行われている。
ラベルには、『馬』の文字が駆け上がるようにデザインされ、
背後に文字を表したような馬が描かれている。
・白馬(しらま)/高垣酒造/和歌山県
白馬は、和歌山県の高垣酒造で造られるにごり酒。
粗めの布で濾しているため、もろみの風味が多く残る。
白馬の名前は、紀伊半島にある白馬(しらま)山脈に由来する。
ラベルには白馬山脈と、美しい白い馬が描かれている。
・七冠馬(ななかんば)/簸上清酒合名会社/島根県
七冠馬は、島根県の簸上(ひかみ)清酒合名会社で造られている。
簸上清酒は、泡無酵母発祥の蔵とされている。
七冠馬の名は、GIで史上最多の7勝を達成した七冠馬シンボリルドルフに由来する。
シンボリルドルフが7冠を達成した1986年から10年後の1996年に銘酒七冠馬が誕生。
ラベルは、走り抜ける馬と力強い文字が印象的だったが、
2022年に七角形の蹄鉄に変更された。
七角形で七冠を表しており、デザインを主体として、
文字は小さめに描かれている。
・白馬錦(はくばにしき)/薄井商店/長野県
白馬錦は、長野県の株式会社薄井商店で造られている代表銘柄。
酒蔵のある長野県大町市は、標高750mを超える地にあり、
水は100℃を下回る温度でも沸騰する場所。
名前の由来は、二代目蔵元の薄井芳介氏が銘峰白馬三山にちなんで名付けた。
ラベルには、白馬三山とそれを逆さに水鏡、たてがみをなびかせる白馬が描かれている。
・左馬(ひだりうま)/有賀醸造合資会社/福島県
左馬は、福島県の有賀醸造合資会社で造られている。
創業1774年の老舗酒蔵が手掛ける日本酒。
左馬は昔から縁起が良いとされている。
そもそも左馬とは、『馬』の字を左右が逆に書いたもの。
『うま』を逆から読むと『まう』→『舞う』となる。
めでたい席で舞いは行われたことが招福を意味する。
また、馬は人に引かれるものだが、逆は人を馬が引く。
つまり、馬が人を引き連れてやって来ると解釈し、千客万来を意味する。
ラベルには、『馬』の文字を左右反転させて、イラスト化して描かれている。
●焼酎
焼酎では、以下を紹介する。
- 赤兎馬(せきとば)_芋焼酎/濱田酒造/鹿児島県
- 左り馬(ひだりうま)_麦焼酎/山元酒造/鹿児島県
- ひむかのくろうま_麦焼酎/神楽酒造/宮崎県
- 鉄馬(てつうま)_芋焼酎/オガタマ酒造/鹿児島県
・赤兎馬(せきとば)_芋焼酎/濱田酒造/鹿児島県
赤兎馬は、鹿児島県の濱田酒造が造る芋焼酎。
多くのラインナップがあり、梅酒やリキュールにも派生している。
名前の由来は、ご存知通り『三国志』に登場する『赤兎』という馬である。
赤兎は『一日に千里を駆ける』と言われた。
当時の中国の1里は約414mなので、1,000里は約414km。
ラベルには力強く『赤兎馬』の文字が描かれている。
・左り馬(ひだりうま)_麦焼酎/山元酒造/鹿児島県
左り馬は、鹿児島県の山元酒造が造る麦焼酎。
度数が42度あり、しっかりとした味わいを感じられる。
上述の福島県で造られる日本酒 左馬とは、別物。
名前の由来は、日本酒の左馬と同様。
左馬は昔から縁起が良いとされている。
そもそも左馬とは、『馬』の字を左右が逆に書いたもの。
『うま』を逆から読むと『まう』→『舞う』となる。
めでたい席で舞いが披露されることから、招福を意味する。
また、『左馬』の字の下の部分が財布の巾着に似ており、
口が締まって入ったお金が逃げないことを意味する。
ラベルは、『馬』の文字を左右反転させて、
崩して馬の形に似せたものが描かれている。
・ひむかのくろうま_麦焼酎/神楽酒造/宮崎県
ひむかのくろうまは、宮崎県の神楽酒造が造る麦焼酎。
減圧蒸留によって、原料のうまさを引き出している。
名前の由来は、宮崎県は『古事記』に有数の馬の産地として記述があり、
『日向の国(ひむかのくに)』から日本中を駆け巡る焼酎を目指して名付けられた。
ラベルは、高千穂の地をバックに、赤いたてがみとしっぽの黒馬が描かれている。
・鉄馬(てつうま)_芋焼酎/オガタマ酒造/鹿児島県
鉄馬は、鹿児島県のオガタマ酒造が造る芋焼酎。
芋焼酎を樽で長期熟成させており、ほんのりと黄金色をしている。
鉄馬とは、バイクのこと。
オガタマ酒造の造り手にバイク好きが多かったことから命名。
自宅で愛車を眺めながら飲みたくなる製品である。
ラベルは、武骨な『鉄馬』の文字と、Vツインエンジンが描かれている。
●ウイスキー
ウイスキーでは以下を紹介する。
- ウッドフォードリザーブ/バーボン
- ターコネル/アイリッシュ
- ブラントン/バーボン
- ホワイトホース/スコッチ
・ウッドフォードリザーブ/バーボン
ウッドフォードリザーブは、アメリカ ケンタッキー州ルイビルの
チャーチルダウン競馬場で開催される
『ケンタッキー・ダービー』の公式バーボンである。
チャーチルダウン競馬場とスポンサー契約をしているブラウン・フォーマン社は、
自社のウイスキーをオフィシャル飲料としている。
最初はアーリータイムズ、続いてオールド・フォレスター、
現在はウッドフォードリザーブである。
ケンタッキー・ダービーの開催期間中はウッドフォードリザーブを使ったカクテル
『ミント・ジュレップ』が販売され、1年で最もミント・ジュレップが飲まれる期間と言われている。
毎年、ダービー限定ラベルのウッドフォードリザーブが発売されており、収集家がいるほどである。
・ターコネル/アイリッシュ
ターコネルは、アイルランドのクーリー蒸留所が手掛けるアイリッシュウイスキー。
ターコネルは、そもそもワット蒸留所のブランドであったが、1925年に閉鎖。
その後、クーリーがワット蒸留所を所有し、1988年にターコネルを復刻させたのである。
ターコネル(ティコネル)とは、ワット家が所有していた馬の名前である。
1876年の『アイリッシュ・クラシック・ダービー』でターコネルは100倍のオッズを覆し優勝する。
馬主であるワット氏は優勝を記念して、ターコネルの名とラベルを付けたウイスキーを発売し、
好評を得た。
復刻されたターコネルでもダービーを駆け抜ける姿が描かれている。
・ブラントン/バーボン
ブラントンは、ケンタッキー州で造られるシングルバレルバーボンウイスキーである。
ブラントは単一の樽からのみ瓶詰めされており、ブレンドはされていない。
丸みを帯びた八面体のボトルと、ダービージョッキーと馬が象られたキャップは、
一度見たら忘れることのできない印象を与える。
このキャップは8種類あり、バーなどでは全てを揃えて並べているところも多い。
個人で一つずつ集めながら、ブラントンを味わうのも楽しいだろう。
・ホワイトホース/スコッチ
ホワイトホースは、スコットランドで造られるブレンデッドスコッチウイスキーである。
日本国内でのスコッチ販売量No.1のウイスキーである。
名前の由来は、スコットランドのエディンバラにある酒場兼宿屋『ホワイトホースセラー』にある。
創業者のピーター・マッキーはこのホワイトホースセラーの近くに住んでおり、
ウイスキーのブランド名としてホワイトホースセラーの名前と看板に描かれていた馬の絵を
使わせてもらうことにした。
ラベルは何度がリニューアルされているが、
現在でも穏やかに佇むホワイトホース(白馬)が描かれている。
●テキーラ
テキーラでは以下を紹介する。
- エラドゥーラ(Herradura)
- エルチャッロ(El Charro)
・エラドゥーラ(Herradura)
エラドゥーラは、家族経営を125年以上続けるテキーラの名門。
世界中で飲まれている。
スペイン語でエラドゥーラ(herradura)は蹄鉄の意味。
テキーラの原料である竜舌蘭の畑で、蹄鉄を見つけたことで、
幸運のシンボルとされる蹄鉄をブランド名とした。
見つかった蹄鉄は、馬のものではなくおそらくロバのものだろうとされている。
当時は竜舌蘭の球茎を運ぶために、ロバが使われていたからである。
ボトルには、蹄鉄が刻まれており、ブランドが一目でわかる。
・エルチャッロ(El Charro)
エルチャッロは、1994年創業のテキーラメーカーが手掛ける人気のテキーラ。
メーカーとしてはまだ若いが、販売量を伸ばしており、エルチャッロの認知度は高い。
スペイン語でチャッロ(Charro)とは、馬乗りの意味なので、
メキシカンカウボーイのことである。
ラベルには、夕日をバックに、つばの長いメキシカンハットをかぶったカウボーイの
馬にまたがった姿がが描かれている。
●カクテル
カクテルでは以下を紹介する。
- ホーセズ・ネック
- ミント・ジュレップ
・ホーセズ・ネック
ホーセズ・ネックは、ブランデーをジンジャーエールで割ったカクテルである。
レモンの皮をらせん状に剥き、その皮をグラスの縁にかける。
レモンの香りとジンジャーの辛味、炭酸の爽快さがブランデーを引き立てる。
ホーセズ・ネックとは、『馬の首』のことである。
由来の有力な説は2つある。
1つは、グラスにかけられたレモンの皮が馬の首に見えるため。
もう1つは、アメリカ26代大統領セオドア・ルーズベルトが、
馬に乗って出かけた時に、カクテルを飲んで休憩していた。
しかし馬が歩き出そうとしたので、首を撫でてあやしたため。
ホーセズ・ネックをつくる際は、レモンの皮を馬の首に見えるように飾るのが重要である。
・ミント・ジュレップ
ミント・ジュレップは、ウイスキーベースのミント風味カクテルである。
砂糖とミントの葉に少量の水を加え、ミントの葉を軽くを潰し、
クラッシュドアイスを入れ、ウイスキーを注ぐ。
グラスはシルバーかスズを使うと本格的。
ミント・ジュレップは、米国ケンタッキー州で行われる
ケンタッキー・ダービーの公式ドリンクである。
ダービーの期間中に12万杯のミント・ジュレップが飲まれるという。
なぜミント・ジュレップがケンタッキー・ダービーの公式ドリンクになったのかはわからない。
ケンタッキー州で造られるバーボン、
ダービーが行われる5月の暑さを和らげるミントの清涼感、
クラッシュドアイスでキンキンに冷やしたカップ、
甘いもの好きのアメリカ人、手軽に作れる、
などの総合的理由からミント・ジュレップが飲まれるようになったのだろうか、、、
●あとがき
馬に関連するお酒をいくつか紹介したが、まだまだあるだろう。
日本も海外も、馬と農作業との関係が重要なのかもしれない。
お酒の原料となる作物の作業に馬を使っていたかどうか。
色々と想像してみるのも面白い。