Public Relations

図解■ 増加中!?急性アルコール中毒

HOME

文字数:約4000文字

 急性アルコール中毒で救急搬送される人が増えている。
一人当たりの飲酒量は減り続けているのになぜだろうか。
男女別、年代別、月別のデータも交えて、急性アルコール中毒について見てみよう。

急性アルコール中毒
AlexaによるPixabayからの画像

酔いの状態

 アルコール血中濃度と酔いの状態を、
公益社団法人アルコール健康医学協会が以下のように示している。
個人差があるため、あくまでも目安である。

(血中濃度%)酒量酔いの状態
爽快期
(0.02~0.04)
ビール(大びん~1本)
日本酒(~1合)
ウイスキー(シングル~2杯)
さわやかな気分になる
皮膚が赤くなる
陽気になる
判断が少し鈍くなる
ほろ酔い期
(0.05~0.10)
ビール(大びん1~2本)
日本酒(1~2合)
ウイスキー(シングル3杯)
ほろ酔い気分になる
手の動きが活発になる
抑制がとれる(理性が失われる)
体温が上がる
脈が速くなる
酩酊初期
(0.11~0.15)
ビール(大びん3本)
日本酒(3合)
ウィスキー(ダブル3杯)
気が大きくなる
大声でがなりたてる
怒りっぽくなる
立てばふらつく
酩酊期
(0.16~0.30)
ビール(大びん4~6本)
日本酒(4~6合)
ウィスキー(ダブル5杯)
千鳥足になる
何度も同じことをしゃべる
呼吸が速くなる
吐き気、おう吐がおこる
泥酔期
(0.31~0.40)
ビール(大びん7~10本)
日本酒(7合~1升)
ウィスキー(ボトル1本)
まともに立てない
意識がはっきりしない
言語がめちゃめちゃになる
昏睡期
(0.41~0.50)
ビール(大びん10本以上)
日本酒(1升以上)
ウィスキー(ボトル1本以上)
ゆり動かしても起きない
大小便はたれ流しになる
呼吸はゆっくりと深い
死亡

関連記事 ↓

・急性アルコール中毒とは

 急性アルコール中毒は以下のように定義されている。

『アルコール飲料の摂取により生体が精神的・身体的影響を受け、
主として一過性に意識障害を生じるものであり、通常は酩酊と称されるものである』

 これは1979年のアルコール中毒診断会議により出された診断基準である。
アルコール血中濃度がいくつと厳密に決められているわけではない

・急性アルコール中毒の症状

 短時間での大量飲酒により、千鳥足や意識が朦朧とした状態となり、
嘔吐、血圧低下、呼吸数の低下などや、昏睡、失禁を起こす。

 これらの症状は、酩酊期(アルコール血中濃度0.16~0.30)からあらわれ始める
ビール大びん4~6本、日本酒4~6合、ウイスキーダブル5杯の量となる。
ビール大びんは633mlなので、中ジョッキ(500ml)5~7杯程度である。

関連記事 ↓

急性アルコール中毒による搬送数

 東京消防局が公表している急性アルコール中毒搬送数をまとめた。
搬送人数の推移月別年代別のデータをそれぞれ見てみよう。

・急性アルコール中毒搬送人員の推移

急性アルコール中毒搬送人員の推移グラフ

 パンデミック前の5年間は急性アルコール中毒搬送数が増え続けている
東京都だけで年に18,000人を超えている
男女差無く同様に増加している。

・急性アルコール中毒の搬送数推移

急性アルコール中毒の搬送数グラフ

 こちらは特定非営利活動法人ASKが公表しているデータをまとめた。
このデータは東京消防局大阪市消防局のものである。

 東京都は2019年に最大値となっている。
パンデミックがなければ、増加の一途をたどっていたかもしれない。
大阪市は2004年が最大値で、パンデミック前までは増加傾向にあった。

 増加の理由は不明である。
グラフの山と合いそうなデータはないか、
酒類別の消費量との関係を調べたが、相関性は得られなかった
別の機会にさらに深く調べてみることにする。

・月別の急性アルコール中毒による搬送人員

月別の急性アルコール中毒による搬送人員グラフ

 月別ではお酒を飲むシーンによって違いが見られる。
最も多いのは12月の忘年会シーズン
1年の終わりということで、冬休みもあり、気が緩むのかもしれない。

 次に多いのが8月のお盆シーズン
真夏の暑い時期は冷たいお酒を飲みたくなるのだろう。
都外から帰省してきた旧友との再会で盛り上がる。

 3月、4月は送歓迎会の季節
別れや新しい出会いを祝って、気持ちが高揚してしまう。

 1月は新年会シーズンだが最も少ない
新しい年を迎えて、気を引き締めている人が多いのだろうか。
または、忘年会で発散し終えているのか。

・年代別の急性アルコール中毒による搬送人員

年代別の急性アルコール中毒による搬送人員グラフ
年代別の急性アルコール中毒による搬送人員円グラフ

 年代別では圧倒的に20代が多い
飲酒可能年齢となり、お酒を飲み始めて日が浅いことが1つの要因。

 まだお酒の知識が少なく、いろいろと試しながら経験を積んでいる状態。
間違ったお酒飲み方をして、ツライ出来事が起こる。

 他にも、薬物とアルコールの反応が原因のケースや、
メンタルヘルスとの関係も考えられる。

 次に多いのが30代と60代以上である。
60代以上は加齢によるアルコール分解能力の低下を認識せずに、
これまでと同じように飲酒してしまうことが要因と考えられる。
または、薬とアルコールの反応が原因のケースもある。

急性アルコール中毒にならないための注意点

 急性アルコール中毒にならないためには、以下のような注意点がある。

  1. 短時間で大量の飲酒しない(イッキ飲みしない、駆けつけ3杯もしない)
  2. 自分の適量を知る
  3. その日の体調を考慮する
  4. 空腹時にアルコールを摂取しない

短時間で大量に飲酒しない

 短時間で大量に飲酒すると、アルコールが一気に吸収されて血液に溶け込む。
血中アルコール濃度が急激に高まると、脳が麻痺し、意識混濁、運動失調、さらに昏睡状態、呼吸停止、心拍停止に至る危険性がある。

 イッキ飲みや駆けつけ3杯などの悪い風習はハッキリと断ることが重要。
現代では、これらの行為にはアルハラにあたる。
お酒はゆっくり味わって飲むものである。

自分の適量を知る

 アルコールの代謝機能には個人差があるため、自分がどのくらい飲めるのかを知る。
アルコールの酒類や、お酒の温度との相性もあるので、自分自身を把握しよう。
限界まで飲むのではなく、お酒も食事と一緒で腹八分がほろ酔いでちょうど良いだろう。

その日の体調を考慮する

 体調は日々変わるもの。
周りの環境にも影響を受ける。
それらを総合して、お酒が飲めるのか、飲めるならどのくらいなのかなど考える。
決して無理をしてはいけない

空腹時にアルコールを摂取しない

 胃に何もない状態ではアルコールはすぐに腸へ向かう。
腸は胃よりも4倍ほどアルコールの吸収が速い

 つまり空腹時にアルコールを摂取するとすぐに酔ってしまうのである。
お酒を飲む前に軽くつまみを食べたよう。

酔いつぶれた人を見かけたら

 酔いつぶれた人を見かたら以下の対処法が望ましい。

  • 1人にしない、付き添う
  • 衣服を緩める
  • 体温が下がるので、上着などで暖かくする
  • 横向きに寝かせる
  • 無理に吐かせない
  • 水が飲めそうなら飲ませてあげる

1人にしない、付き添う

 酔いつぶれて座り込んだり、寝込んだりしている人を見かけたら、絶対に1人にしてはいけない
不意に起き上がって転倒してしまう恐れがある。
泥酔状態での転倒は受け身が取れず、頭部を強打するで致命傷になる可能性が高い

 嘔吐した時に喉をつまらせる可能性もあるため、絶対に1人にしてはいけない。
救急車を呼んだり、水を買いに行くなりする場合は、他の人に付き添っていてもらおう。

・衣服を緩める

 脳が麻痺し、代謝機能が低下すると、呼吸が浅くなる
身体を締め付けている衣服を緩めることで、呼吸がラクになる。
ネクタイ、ベルト、首元のボタンを緩るめてあげよう。

・体温が下がるので、上着などで暖かくする

 暖かくするのは冬場では当然だが、夏場でも体温は下がる。
夏場は汗によってさらに体温が低下するので、注意が必要である。

・横向きに寝かせる

横向きに寝かせる
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/kyuu-adv/201312/chudoku/

 急性アルコール中毒で意識を失った状態で、恐ろしいのは窒息死である。
仰向けに寝ている最中に嘔吐して、喉をつまらせて呼吸困難になるケースが多い。
嘔吐することを考慮して横向きで寝かせることが重要である。

・無理に吐かせない

 無理に吐かせようとせず、身体の反応で自然に吐かせなければならない。
無理に吐かせようとすると、胃や喉を傷める可能性がある。
その結果、吐血することもある。

・水が飲めそうなら飲ませてあげる

 少し意識があり、水が飲めそうなら飲ませてあげよう。
血中アルコール濃度を薄める働きと、体内のアルコール分解に水が必要である。

 イッキに大量に飲ませず、ゆっくり、少量ずつである。
冷たすぎず、常温くらいが望ましい。
完全に意識がない場合は無理に水を飲ませる必要はない。

救急搬送された後の処置

救急車
iamwahidによるPixabayからの画像

 急性アルコール中毒で救急搬送されると、どのような処置がされるのだろうか。
かなりツライ体験をすることになる。

 現代の医学では、体内からアルコールを完全に除去する方法はない
人体が持つ分解能力で、アルコールを分解するしかないのである。

 その手助けとして、胃腸内の洗浄をし、アルコールを排出させる。
これは胃の中に生理食塩水を流し込み、内容物を吐かせる。
尿道にカテーテルを差し込み、バルーンを膨らませて強制排尿させる。

 このようにして体内へまだ吸収されていないアルコールを体外に排出させる。
体内に吸収されたアルコールは肝臓で分解されるのを待つ
分解に必要な栄養素や水分を点滴で補充する。

 地獄の苦しみである嘔吐。
処置後、排尿時の地獄の痛み
悲惨な体験であり、自分自身の行いを悔いて、反省するのである。

あとがき

 理由はわからないが、急性アルコール中毒での搬送数が増えている。
お酒の消費量が減少を続けるなかでのことである。
さらにイッキ飲みは良くないという認識、アルハラの認知が広まるなかでのことである。
不思議な事象であり、とても興味深い。
急性アルコール中毒を抑制するためにも、増加の原因・要因を掴まなければ根本的な解決に取り組めない。
急性アルコール中毒は誰にとっても不幸なできごとなので、少しでも減らせればと思う。

Amazon プライム対象