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クリーム系デザートカクテルの定番は『アレクサンダー』だろう。
いっけん強そうな名前だが、香り高く、口当たりの優しいカクテルである。
アレクサンダーの誕生背景やレシピ、バリエーションを紹介しよう。
ちなみにこのカクテルは『アレキサンダー』とも呼ばれている。
●レシピ
材料
- ブランデー・・・・・・・30ml
- カカオ・リキュール・・・15ml
- 生クリーム・・・・・・・15ml
- シェーカーに氷と材料を注ぎ、強めにシェークする
- 冷やしたグラスに、ストレーナーで濾しながら注ぐ
- お好みでナツメグパウダーを振りかけてもよい
ブランデーの華やかな香りをカカオが包み込む。
クリーミーで優しい飲み口だが、アルコール度数は高めなので注意。
●誕生背景
多くの人が『アレクサンダー』と聞いて思い浮かべるのが「アレクサンドロス大王」だろう。
しかしこのカクテルは「アレクサンドラ」という女性のために作られたという説が日本では一般的。
20世紀初頭にイギリスのヴィクトリア女王が亡くなる。
その後、息子のエドワードが、「エドワード7世」として王位に就く。
このエドワードの妻がデンマーク国王の娘「アレクサンドラ」なのである。
1901年にエドワード7世の即位があり、翌年(1902年)にアレクサンドラ王妃の戴冠式の際に、
新王妃にこのカクテルが捧げられたという。
当初カクテル名は『アレクサンドラ』だったが、
アメリカに伝わる際に『アレクサンダー』になってしまったとか。
ちなみに、エドワード7世の滋養のために作られたジンジャー・リキュールが
『キングスジンジャー・リキュール』である。
ショウガを蒸留酒に4週間漬け込み、レモンオイルを加えて柑橘系の香りを付けたもの。
度数は41度あり、身体の芯から温まる。
さらに、ヴィクトリア女王は『ボンベイ・サファイア』のラベルに描かれている。
ボンベイ・サファイアの原形となったジンのレシピが考え出された時代は、
ヴィクトリア女王のもと、イギリスがインドを治めていた時代である。
インドの都市ボンベイ(現ムンバイ)の名前を使い、
後のリニューアル時に女王の肖像画をラベルに描いた。
・諸説
アレクサンドラ説以外にも有力な説がある。
1922年にイギリス王女メアリーとラッセル卿の結婚を祝して作られたカクテルがある。
メアリーは上記アレクサンドラとエドワード7世の孫にあたる。
ロンドンの名バーテンダー、ハリー・マッケルホーンが考案したという。
メアリーに捧げられたカクテルなので『プリンセス・メアリー』という名前で、ジンベースだった。
このレシピはマッケルホーンが書いた『ABC of Mixing Cocktails』の1922年改訂版に載っている。
後に、ベースをジンからブランデーに替えたものが、
『アレクサンドラ』と呼ばれるカクテルとなるが、その経緯は不明。
また、ジンベースでカカオ・リキュールと生クリームを使ったレシピは、
1910年代の複数のカクテル本に記載されており、
アレクサンダーの原形がどれになるかはわかっていない。
●バリエーション
ここでは、『プリンセス・メアリー』と『アレクサンダーズ・シスター』を紹介する。
共通するのは、ジンと生クリームを使う点。
・プリンセス・メアリー
材料
- ドライ・ジン・・・・・・30ml
- カカオ・リキュール・・・15ml
- 生クリーム・・・・・・・15ml
- シェーカーに氷と材料を注ぎ、強めにシェークする
- 冷やしたグラスに、ストレーナーで濾しながら注ぐ
- お好みでナツメグパウダーを振りかけてもよい
アレクサンダーのブランデーをジンに替えたもの。
ジュニパーの香りがカカオに包まれている。
・アレクサンダーズ・シスター
材料
- ドライ・ジン・・・・・・・・・・・30ml
- グリーン・ミント・リキュール・・・15ml
- 生クリーム・・・・・・・・・・・・15ml
- シェーカーに氷と材料を注ぎ、強めにシェークする
- 冷やしたグラスに、ストレーナーで濾しながら注ぐ
- お好みでミントの葉を飾ってもよい
プリンセス・メアリーのカカオ・リキュールをグリーン・ミント・リキュールに替えたもの。
ジンとミントの香りが爽やかで、涼しげなデザート・カクテル。
●あとがき
イギリス王室と関係するお酒は多くある。
王室御用達のお酒や、王室関係者をイメージしたカクテルなど。
お酒の歴史の上で、イギリスを抜きにして語ることはできないくらいである。
イギリス王室とお酒の関係を調べてみるのも楽しいだろう。