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アメリカを代表する文豪アーネスト・ヘミングウェイ。
酒豪だった彼は、さまざまなお酒を飲んでいる。
そのなかでも特に好んだといわれるカクテルが3つある。
『ダイキリ』『モヒート』『ブラッディ・マリー』である。
ここではダイキリの誕生背景やレシピ、バリエーションなどに加えて、
ヘミングウェイとダイキリの小話も紹介しよう。
●レシピ
材料
- ホワイト・ラム・・・・・45ml
- ライム・ジュース・・・・15ml
- シュガー・シロップ・・・1tsp
- シェーカーに氷と材料を注ぎ、シェークする
- 冷やしたカクテル・グラスに、濾しながら注ぐ
- お好みでスライス・ライムを飾ってもよい
ライムの酸味とシロップの甘味がホワイト・ラムと合わさり、
爽やかな風味の一杯となる。
●誕生背景
ダイキリとは、キューバのダイキリ鉱山(DAIQUIRI)に由来する。
1896年にアメリカ人鉱山技師であるジェニングス・S・コックスが、
ホワイト・ラムとライム・ジュースと砂糖を混ぜて作ったという。
キューバのオリエンテ州にあるダイキリ鉱山で、
ニッケル採掘を行っていた抗夫たちが休憩時に飲んでいたミックス・ドリンクである。
重労働の疲れを、ライムの酸味と砂糖の甘味を混ぜたアルコールで癒す。
これがアメリカに伝わり、鉱山の名前から『ダイキリ』と呼ばれるようになった。
●バリエーション
ここでは、『フローズン・ダイキリ』『バカルディ・カクテル』『ピンク・ダイキリ』を紹介する。
・フローズン・ダイキリ
材料
- ホワイト・ラム・・・・・45ml
- ライム・ジュース・・・・15ml
- シュガー・シロップ・・・1tsp
- ブレンダーに氷と材料を注ぎ、混ぜ合わせる
- 冷やしたカクテル・グラスに注ぐ
- ストローを挿す
シャーベット状の冷涼感があるカクテル。
1928~1930年の間にキューバの「エル・フロリディータ」で、
コンスタンティノ・リバライグア・ヴェルトが考案したとされる。
1920年代にブレンダー(ミキサー)が開発され、一般的に製品化されたのが1930年代である。
リバライグアはかなり早い段階でブレンダーを取り入れていたことになる。
「エル・フロリディータ」では、ブレンダーを導入する前は、
グラスをクラッシュド・アイスで満たす『フラッペ・スタイル』のカクテルを出していた。
・バカルディ・カクテル
材料
- バカルディ・ホワイト・ラム・・・・・・・・・・・・45ml
- ライム・ジュース(まはた、レモン・ジュース)・・・15ml
- グレナデン・シロップ・・・・・・・・・・・・・・・1tsp
- シェーカーに氷と材料を注ぎ、シェークする
- 冷やしたカクテル・グラスに、濾しながら注ぐ
- 好みでスライス・ライムを飾ってもよい
バカルディ社が自社ラムを販促するために考案したカクテル。
しかし、ニューヨークのバーで他社のラムを使って『バカルディ・カクテル』が提供されてしまう。
バカルディ社はこのバーを訴え、1936年にニューヨークの裁判所で、
「このカクテルは必ずバカルディ・ラムを使わなければならない」という判決が下された。
・ピンク・ダイキリ
材料
- ホワイト・ラム・・・・・・45ml
- ライム・ジュース・・・・・15ml
- グレナデン・シロップ・・・1tsp
- シェーカーに氷と材料を注ぎ、シェークする
- 冷やしたカクテル・グラスに、濾しながら注ぐ
- お好みでスライス・ライムを飾ってもよい
グレナデン・シロップによってピンク色に染まったダイキリ。
バカルディ社以外のラムを使ったバカルディ・カクテル。
ちなみにグレナデンとはザクロのことである。
市販品のグレナデン・シロップはザクロ果汁を使っていないものが多い。
シュガー・シロップに着色と風味を付けたものである。
●ヘミングウェイとダイキリ
ヘミングウェイのダイキリに関する言葉で有名のものは以下である。
「我がダイキリはフロリディータで、我がモヒートはボデギータで」
ヘミングウェイはアメリカ人だが、第二の故郷としてキューバに20年以上暮らしていた。
キューバの首都ハバナにあるこの二つのバーが行きつけで、ダイキリはフロリディータで飲んでいた。
このバーではヘミングウェイ用のレシピで作られたダイキリは『パパ・ドブレ』と呼ばれた。
・パパ・ドブレ
材料
- ホワイト・ラム・・・・・・・・・60ml
- ライム・ジュース・・・・・・・・10ml
- グレープフルーツ・ジュース・・・1tsp
- マラスキーノ・リキュール・・・・1tsp
- ブレンダーに氷と材料を注ぎ、混ぜ合わせる
- 冷やしたカクテル・グラスに注ぐ
- ストローを挿す
パパ・ヘミングウェイと呼ばれていたことから、パパと付け、
ラムの量を2倍にしたことからドブレ(ダブル)で、『パパ・ドブレ』となった。
シロップ(砂糖)無しにしたのは、糖尿病を患っていたからという。
ヘミングウェイはこのカクテルを1日に12杯も飲んだという。
ラムのボトル1本近く飲んでいることになる。
厳密にいうと、ヘミングウェイが好んで飲んだのはダイキリではなく、
特性のフローズン・ダイキリだったということである。
●あとがき
ヘミングウェイがフローズン・ダイキリを好んだのは、
やはりキューバという土地の影響が大きいのだろう。
暑い地域なので、涼しさを求めるのは必然である。
モヒートを好んだのもミントの清涼感で暑さをしのぐ為だったのだろう。
そして土地のお酒がラムである。
土地の環境に合ったドリンクを、その土地のお酒を使って作る。
暑い日はダイキリで涼をとりたいものだ。