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アジアを代表するカクテルの一つ、『シンガポール・スリング』。
20世紀に誕生して以来、日本でも定番カクテルとして知られている。
シンガポール・スリングのレシピや誕生背景を説明する。
●レシピ
シンガポール・スリングには、オリジナルレシピと現代版レシピがある。
オリジナルレシピでは多くの材料が使われている。
現代版は材料を減らして簡単にしたものだが、なぜこのようになったのかはわかっていない。
・オリジナルレシピ
材料/レシピ
- ドライ・ジン・・・・・・・・・・・・・・45ml
- チェリー・リキュール(ヒーリング)・・・15ml
- コアントロー・・・・・・・・・・・・・・7.5ml
- ベネディクティン・・・・・・・・・・・・7.5ml
- パイナップル・ジュース・・・・・・・・・60ml
- ライム・ジュース・・・・・・・・・・・・15ml
- グレナデン・シロップ・・・・・・・・・・2dash
- アンゴスチュラ・ビターズ・・・・・・・・1dash
- シェーカーに氷と材料を注ぎ、シェークする
- ストレーナーで濾しながら、グラスに注ぐ
- お好みでスライス・オレンジやマラスキーノ・チェリーを飾ってもよい
オリジナルレシピは材料が多い。
ベネディクティンのハーブ系の香りが漂う。
アンゴスチュラ・ビターズの苦味が、甘さを引き締めて、絶妙な味わいとなる。
・現代版レシピ
材料/レシピ
- ドライ・ジン・・・・・・・45ml
- チェリー・リキュール・・・15ml
- レモン・ジュース・・・・・20ml
- ソーダ・・・・・・・・・・適量
- シェーカーに氷とソーダ以外の材料を注ぎ、シェークする
- ストレーナーで濾しながら、グラスに注ぎ、ソーダを加える
- お好みでスライス・オレンジやマラスキーノ・チェリーを飾ってもよい
オリジナルレシピと比べるととてもシンプルになっている。
その分、チェリー・リキュールの味わいが引き立つ。
ここまで違うと、カクテルとしては別物といわれても仕方がない。
いつ、だれが、なぜ、このようにしたのかは不明である。
●チェリー・リキュール?、チェリー・ブランデー?
シンガポール・スリングの特徴は、チェリー・リキュールを使うことにある。
チェリー・リキュールを使ったカクテルの代表がシンガポール・スリングなのである。
カクテルブックによっては、材料にチェリー・ブランデーと書かれているものがあるが、
これはチェリー・リキュールのことである。
『フルーツ・ブランデー』のことではない。
オリジナルレシピで使われたチェリーのお酒は、デンマーク産のチェリー・リキュール『ヒーリング』であるとされている。
19世紀からあるブランドで、シンガポール・スリングに使われたことで広く知られるようになった。
ヒーリングはブランデーをベースにして作られたリキュールであり、フルーツ・ブランデーではない。
チェリー・ブランデー以外にもアプリコット・ブランデーがある。
チェリーと同様に、アプリコットもブランデーと書かれているがリキュールのことである。
なぜこのような紛らわしいことになったのだろうか、、、
●誕生背景
シンガポール・スリングが誕生したのは1910~1915年の間とされている。
シンガポールの名門ホテル、ラッフルズ・ホテル内にあるロング・バーのバーテンダー 厳崇文(ニャン・トン・ブーン)によって考案された。
シンガポールの夕焼けをイメージされており、美しい色合いと、フルーティーな味わいが旅行客に人気となった。
当初はストレーツ(海峡)・スリングと呼ばれていたが、1930年代にはシンガポール・スリングに呼ばれている。
●スリングとは?
18世紀末のアメリカで誕生したカクテルスタイルの一種。
『スリング(SLING)』とは、ドイツ語で「飲み込む」を意味する「Schlingen(シュリンゲン)」に由来する。
蒸留酒にレモン果汁と砂糖やシロップで作る。
ビルドやシェークで作られる。
シンガポール・スリング以外にも、『ジン・スリング』が有名。
・ジン・スリング
材料/レシピ
- ドライ・ジン・・・・・・・・・・・・・45ml
- レモン・ジュース・・・・・・・・・・・15ml
- シュガー・シロップ・・・・・・・・・・15ml
- ソーダ、またはミネラルウォーター・・・適量
- 氷を入れたグラスにソーダ以外の材料を注ぎ、ステアする
- 冷やしたソーダで満たし、軽くステアする
シンプルなレシピで、スッキリとした味わい。
似たものとして、トム・コリンズがあるがそちらはオールド・トム・ジンを使う。
●あとがき
オリジナルレシピのシンガポール・スリングをぜひ味わっていただきたい。
現代版とはまったく違って、フルーティーで複雑な味わいがする。
もしシンガポールへ海外旅行する際は、ラッフルズ・ホテルを訪ねてみるのも楽しいだろう。
今はシンガポール・スリングに改良を加えたラッフル・スリングというカクテルがあらしい。
こちらも味わってみたいものだ。