文字数:約1900文字
スコットランドの蒸留地域は、大きく6つに分けられる。
アイラ、アイランズ、キャンベルタウン、ローランド、ハイランド、スペイサイドである。
地域の環境や歴史から特徴が見えてくる。
6つの区分の中でもハイランドは最も広大な地域である。
それゆえに蒸留所がある場所も海岸、森林、山麓、平野などさまざまであり、
そこで造られるウイスキーに大きな影響を与える。
ハイランド地域は広大であるため、さらに東西南北の4つに分けられる。
北ハイランド、西ハイランド、東ハイランド、中央ハイランド(南ハイランド)である。
中央ハイランドと呼ばれるのはスコットランド全体で見た時に中央に位置するためである。
ハイランドとローランドは想定境界線として、
西のグリーノッグから東のダンディーを結ぶラインが一般的であるが、
厳密な定義や規定はない。
●クライヌリッシュ
・基礎データ、場所
- 蒸留所名:クライヌリッシュ蒸留所
- 英 字:Clynelish
- 意 味:庭の坂、金色の湿地など
- 創 業:1819年(1967年)
- 仕込み水:クラインミルトン川
- 蒸留器 :バルジ型
- 現所有者:ディアジオ社
- 輸入元 :MHD モエ ヘネシー ディアジオ(株)
スコットランドの本土北東の海岸沿いにある蒸留所。
クライヌリッシュ蒸留所の隣には、ブローラ蒸留所がある。
ボトルに描かれているのは、山猫(ワイルドキャット)である。
これは蒸留所創業者であり、後にサザーランド公爵となるスタッフォード伯爵家の副家紋である。
現在は「クライヌリッシュ」と読まれることが多いが、
以前は「クラインリーシュ」とも読まれていた。
現地の発音に合わせて、変えたのだろうか。
・特徴
・味わい
麦芽はノンピートのものが使われている。
蒸留所が海岸沿いにあるため、海風の影響を受ける。
そのため、ほのかに潮や海藻の香りがする。
スパイシーであり、フルーティーであるが、
最も特徴的なのはワクシーさ(ワックスっぽいこと)である。
このワクシーさは、蒸留液を溜めるスピリッツ・レシーバー内の沈殿物に
よるの影響だとする説がある。
他説として、初留液の前留と後留を溜めるタンクがあることや、
仕込み水の水質とする説などがある。
・クライヌリッシュとブローラ
クライヌリッシュとブローラは切っても切り離せない関係にある。
それは元々、両方ともクライヌリッシュ蒸留所だったからである。
ハイランド地方の海岸沿いの町ブローラから少し内陸に入った丘の上に、
クライヌリッシュ蒸留所は1819年に建てられた。
創業者は後のサザーランド公爵となる、スタッフォード伯爵である。
蒸留所設立の目的は、領地内で栽培された穀物が密造酒製造に使われるのを防ぐ為だった。
さらに蒸留所を運営することで、地域の雇用を創出することもできた。
所有者がサザーランドから何度か変わり、1967年に所有者だったDCL社が、
第二蒸留所として隣接させたのが現在のクライヌリッシュ蒸留所である。
二つの蒸留所は、「第一、第二」「クライヌリッシュA、B」「新旧」など、
呼び名はいくつかあったが、1969年に元からあった蒸留所が「ブローラ」に改名された。
しかし1983年にブローラ蒸留所は閉鎖されることとなる。
現在はディアジオ社のもと、ブローラ蒸留所の再稼働が始まっている。
クライヌリッシュがノンピートなのに対して、
閉鎖前のブローラはヘビリーピーテッドであった。
昔のスタイルを踏襲するかたちで、ブローラの復活が期待されており、
熟成中の原酒に注目が集まっている。
・ジョニーウォーカー
世界でもっとも売れているスコッチウイスキーがジョニーウォーカーである。
ジョニーウォーカーはディアジオ社の看板商品であり、
キーモルトにはクライヌリッシュ蒸留所で造られた原酒が使われている。
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ディアジオ社がジョニーウォーカーの四本の柱としたキーモルトの1つが、
クライヌリッシュなのである。
ジョニーウォーカーには約30種の原酒が使われているというが、
キーモルトされているのが以下4つである。
- ハイランドのクライヌリッシュ
- スペイサイドのカーデュ(カードゥ)
- ローランドのグレンキンチー
- アイラのカリラ
●あとがき
再稼働でブローラに注目が集まることで、クライヌリッシュも脚光を浴びている。
クライヌリッシュはもともとポテンシャルが高い。
蒸留所で造られる多くがブレンデッド用の原酒として出荷されている。
ジョニーウォーカーのキーモルトだから仕方ないのだが、
もっとシングルモルトのラインナップを増やしてほしいと個人的には思う。