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梅酒の原料【砂糖】

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文字数:約5100文字

 梅酒は主に以下の3つの原料でできている。

  • 砂糖
  • お酒

 ここでは梅酒に使われる砂糖(糖類)の種類について説明しよう。
氷砂糖、上白糖、グラニュー糖や、ハチミツ、黒糖などなど。

砂糖(糖類)の種類

 梅酒作りでは基本的に氷砂糖が使われる
市販の梅酒には黒糖やハチミツ、高級な和三盆糖などを使ったものがある。
どれも甘さを加えることは共通している。
それぞれの特徴を見てみよう。

・氷砂糖

氷砂糖
https://www.nissin-sugar.co.jp/sugarlab/index.php

 氷砂糖はグラニュー糖と原料は同じである。
グラニュー糖の一つ粒が、大きな結晶になったと考えればよい。

 一番の特徴は溶けにくさにある。
つまり、ゆっくりと溶けるということである。
ゆっくり溶けるということは、糖度が徐々に高まっていくことを意味する。

 味わいは基本的なグラニュー糖と同じであるが、
口に含んでもすぐに溶けないため、甘みが少ないと勘違いされることがある。

 氷砂糖は自宅での梅酒作りにもっとも使われる糖類である。
梅から十分にエキスを抽出するためには、ゆっくり溶けることが重要なのである。
氷砂糖を使うと上手に梅酒作りができる。


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氷砂糖がゆっくり溶ける理由

水滴
Krzysztof PlutaによるPixabayからの画像

 氷砂糖がゆっくり溶ける理由は、液体との接触面積が小さいためである。
よく勘違いされているのが、結晶が固いからや、表面積が大きいからなどである。

 氷砂糖とグラニュー糖は結晶の大きさが違うが、成分は同じである。
そのため、溶ける速さも同じなのである。
結晶の大きさが違っても、固さは同じであり、溶ける速さも同じである。

 重要なのは液体との接触面積なのである。
100gの氷砂糖とグラニュー糖では、氷砂糖のほうが液体との接触面積が小さい。
一粒(一結晶)当たりの表面積ではグラニュー糖のほうが小さいが、
100gで数万粒もあれば合計の表面積は氷砂糖よりも大きくなる。
つまり、グラニュー糖のほうが液体との接触面積が大きいため、溶けやすいのである。

 これが氷砂糖が溶けにくい理由である。
ザラメ糖でも同じことがいえる。
ハチミツやメープルシロップなどは成分の違いがある。

・上白糖(白砂糖)

上白糖
https://www.nissin-sugar.co.jp/sugarlab/index.php

 上白糖とは日本で一般的に砂糖といわれているものである。
グラニュー糖と比べるとしっとりしており、やや風味がある

 原料はサトウキビや甜菜(てんさい)が主である。
つくり方は途中までグラニュー糖と同じだが、
砂糖の結晶を取り出した後に上白糖はひと手間加える。
結晶にブドウ糖と果糖を成分とした糖液(転化糖)でコーティングするのである。

 わずかながらブドウ糖や果糖が加わることで、味わいに広がりを生まれる。
この繊細な風味を日本人は好み、砂糖といえば上白糖が選ばれている。

 梅酒に使うと氷砂糖よりも梅のエキスを抽出できないため、
梅の風味は弱くなる。

 溶けやすいため、梅酒に使う場合は注意が必要。
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・グラニュー糖

グラニュー糖
https://www.nissin-sugar.co.jp/sugarlab/index.php

 日本では砂糖といえば上白糖だが、
世界では砂糖といえばグラニュー糖と答える国のほうが多い。
スティックシュガーは主にグラニュー糖が使われ、
角砂糖も主にグラニュー糖を固めたものである。

 グラニュー糖は原料から取り出した糖の結晶であり、
余分なものを加えていない砂糖本来のすっきりとした味わいである。
上白糖よりもサラサラしており、とても扱いやすい。

 梅酒に使うと氷砂糖よりも梅のエキスを抽出できないため、
梅の風味は弱くなる。
上白糖の梅酒よりもすっきりした味わいになる。

 上白糖と同様に溶けやすいため、梅酒に使う場合は注意が必要。
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・黒糖(黒砂糖)

黒糖
jan mesarosによるPixabayからの画像

 黒糖はサトウキビの搾り汁をそのまま煮沸濃縮したものを、
冷却して固めたものである。

 濾過していないため、カリウムやカルシウム、鉄分などのミネラルや、ビタミンが豊富
そのため、コクのある味わいとなる。

 大きな塊だが、氷砂糖ほど溶けにくいわけではない。
梅酒に使うと濃い液色になり、コクのある味わいになる。

 上白糖などと同様、梅酒に使う場合は注意が必要。
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・きび砂糖

きび砂糖
https://www.nissin-sugar.co.jp/sugarlab/index.php

 きび砂糖はサトウキビの搾り汁を精製する途中で、そのまま煮詰めたもの。
サトウキビ由来の風味や栄養素が残っている

 茶色っぽい色をしているので三温糖と似ているが、
きび砂糖のほうが栄養素も風味もある。

 梅酒に使うと、コクと風味が加わるが、黒糖ほどではない。
黒糖、きび砂糖、三温糖それぞれのコクと風味を比べてみるのも楽しい。

 他の砂糖と同様にきび砂糖も溶けやすいので、注意が必要。
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・三温糖

三温糖
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 三温糖は砂糖を精製する過程で、結晶と糖液(糖蜜)に分離された糖液を煮詰めたもの
結晶はグラニュー糖や砂糖となり、糖液も三温糖として商品になる。
茶色っぽくなるのは糖液を煮詰めることでカラメル化するためである。
風味は香ばしく、コクのある味わいになる。

 糖液を三度温める(煮詰める)ことから三温糖と呼ばれるようになったという。
三温糖は黒糖のように色が付いているから栄養がある勘違いされることが多い。
結晶と糖液に分離される前にほとんどの栄養素(ミネラルなど)は取り除かれている
厳密には上白糖やグラニュー糖よりもほんの少しだけ栄養素が多いが、
健康に影響するほどの量ではないとされている。

 梅酒に使うと、コクと風味が加わり、色味は少し濃くなる
味わいも色見も、上白糖と黒糖の間くらいになる。

 上白糖と同様に溶けやすいため、注意が必要。
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・ザラメ糖(白双糖)

ザラメ糖
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 ザラメ糖はグラニュー糖の結晶を大きくしたもの
結晶をさらに大きくすると氷砂糖になる。

 茶色っぽい色をしたものは中ザラ糖(中双糖)と呼ばれ、
煮詰める工程でカラメル化したり、カラメル色素を使って色付けしたものである。

中ザラ糖
https://www.nissin-sugar.co.jp/sugarlab/index.php

 味わいは、ザラメ糖(白双糖)はグラニュー糖、
中ザラ糖は三温糖とほぼ同じと考えてよい。

 ザラメ糖はゆっくり溶けることが特徴である。
氷砂糖とグラニュー糖の間ということになる。
このゆっくり溶ける性質は、梅酒作りにも使える。
溶ける速さの違いを利用して、できあがりの味を好みに調整することができる。


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・和三盆糖

和三盆糖
BrunoによるPixabayからの画像

 やわらかく、まろやかな味わいと、口どけの良さが特徴の高級砂糖
竹糖(ちくとう)という細いサトウキビから作られる。

 和三盆は徳島県や香川県の特産品
原料の竹糖は四国東部が主産地である。

 つくり方は、竹糖の搾り汁を濾過して、煮詰めて、冷やし固める。
これを布に包み、絞り出し、練り上げることを3回繰り返す
昔はこの作業を盆の上で行っていたことから「和三盆」と呼ばれるようになったという。

 原料である竹糖の栽培量が少ないことや、手造りの部分が多く大量生産できないため、
かなり高価な砂糖となってしまう。

 和三盆糖は高級なため、少量の梅酒作りに使うことをオススメする。
和三盆糖を使うことで、上品な味わいの贅沢な梅酒ができる。

 和三盆糖も溶けやすいため、注意が必要。
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・ハチミツ

ハチミツ
Steve BuissinneによるPixabayからの画像

 ハチミツの風味と味わいがほんのりとする梅酒に仕上がる。
ハチミツは氷砂糖と同じようにゆっくり溶ける
このため、梅のエキスを十分に引き出すことができる。

 ハチミツを使うと梅酒がにごることがある。
ハチミツにはさまざまな成分が含まれているためである。
にごったとしても特に問題なく飲める。

 メープルシロップアガベシロップもハチミツを同様の特徴を持つ。
それぞれの甘さを考慮して使用量を決める必要がある。


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・糖質ゼロ、糖類ゼロ、カロリーゼロなどの甘味料

ゼロ
PIROによるPixabayからの画像

 最近は非糖質系の甘味料をよく見かけるようになった。
糖質やカロリーを抑えつつ、甘味を感じられるので重宝している人も多い。
代表的な製品として、ラカントやパルスイート、エリスリトールなどがある。

 一般的な梅酒には砂糖が多く使われるため、カロリーは高い。
砂糖を非糖質系甘味料に変えてしっかりと梅エキスを抽出できるのだろうか?
答えはNO
である。

 梅エキスの抽出は梅に含まれる糖分との濃度差でよっておこなわれる。
甘味料に糖分がなければ、梅よりも糖度が低くなるため、エキスが抽出できない。

 現実的な方法として、氷砂糖の一部を非糖質系甘味料に変えることで、
低糖質化、低カロリー化できる。
またはアルコールのみでエキス抽出し、非糖質系甘味料で甘みを加える方法がある。

 梅酒作りに非糖質系甘味料を使う場合は、
少量を加えてすっきりとした甘さに仕上げることが望ましい。
非糖質系甘味料は量が多いと溶けきらずに沈殿したり、再結晶化するので注意が必要。


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氷砂糖の役割

 梅酒に限らず、果実酒で氷砂糖が使われるのには訳がある。
それはゆっくる溶けるからである。
ゆっくり溶けると何が良いのかを説明しよう。

 梅酒を作る際のエキス抽出のメカニズムは以下のようになっている。

  1. アルコールが梅に浸み込む
    アルコールと梅の糖度の濃度差による浸透圧によって、
    梅にアルコールが浸み込む(外→内)。
  2. 浸み込んだアルコールに梅エキスが溶け出す
    梅の内部に浸み込んだアルコールにエキスが溶け出すが、
    梅の外にはまだ抽出されずにとどまっている
  3. 氷砂糖がゆっくりと溶けだす
    氷砂糖がゆっくり溶けだすことによって、
    梅の外のアルコールの糖度が徐々に高まっていく
  4. 梅のエキスが抽出される
    梅の内部よりも外のほうが糖度が高くなると、
    濃度差による浸透圧によって、
    梅に浸み込んでいたアルコールが外に出始める(内→外)。
    この時、アルコールと一緒にエキスも抽出される

 このようにして梅のエキスは抽出されるのだが、
ポイントは糖度の濃度差による浸透圧である。

 浸透圧とは、半透膜で隔てられた液体に濃度差がある場合、
濃度が均一になるよう溶媒(水分など)が調整される現象である。
半透膜は水やアルコールなどは通すが、糖などの大きな分子は通さない。

 梅酒では、半透膜が梅の細胞膜であり、溶媒が水分やアルコールである。
梅の内外で糖度の濃度差があると、糖度の高い方へ水分やアルコールが浸み込み、
内外の糖濃度を均一にしようとする現象が起こる。

 つまり氷砂糖を使うことで、糖度をうまく調整し、
梅のエキスを十分に抽出しているのである。

浸透
Gerd AltmannによるPixabayからの画像

 上白糖やグラニュー糖のような溶けやすい砂糖を使った場合、
初期段階で、砂糖が溶けたアルコールのほうが梅よりも糖度が高くなってしまうため、
梅にアルコールが浸み込まず、その結果、エキスがアルコールに溶け出さない
厳密には、多少アルコールは浸み込むが、梅からはアルコールよりも水分のほうが多く出てくる。
水分にもエキスは含まれるが、アルコールのほうがエキスを多く含んでいる。

 氷砂糖と同じようにゆっくり溶けるものとして、ザラメ糖やハチミツがある。
これらは梅のエキスをしっかりと抽出することができる。

氷砂糖以外の砂糖で梅酒を作る場合

 溶けやすい砂糖でも梅のエキスを抽出する方法はある。
ここでは2つの方法を紹介しよう。
2つともひと手間かかるので、面倒ではある。

あとから砂糖を数回に分けて加える

数回
Åsa KによるPixabayからの画像

 最初にアルコールを梅に浸み込ませる。
その後、砂糖を数回に分けて加える。

 こうすることによって、梅のエキスが溶け出したアルコールを、
エキスとともに抽出することができる。

 数回に分ける理由は、急激に糖度を上げないため
糖度の濃度差による浸透圧で梅からアルコールが出るが、それ以上に水分が出てしまう。
水分にもエキスが含まれているが、アルコールのほうがエキスを多く含んでいる。
このため、ゆっくりと糖度を上げたほうが、より梅のエキスを抽出できるのである。

冷凍した梅を使う

冷凍
PitschによるPixabayからの画像

 冷凍することによって梅の繊維や細胞が壊れる
目ではわかりづらいが梅表面の細胞も壊れるため、表面積が増える
表面積が増えると、アルコールが素早く内部まで浸み込むことができる。

 砂糖がすぐ溶けるので、その前にアルコールを十分に浸み込ませるのである。
そして表面積が多い分、アルコールが出てくるのも早い。

 冷凍した梅を使うと、通常の梅酒作りよりも早く仕上がる
フォークなどで梅に穴を空けるのも、同様の効果がある。
しかし氷砂糖に比べるとやはりエキスの抽出は見劣りする。


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あとがき

 メーカーでの梅酒作りでは、氷砂糖が使わることはほとんどない。
商品を作っているので、放置せず、仕込みに手間をかけるのである。
自宅で梅酒を作る場合は、手間をかけずに放置したい。
ということで、氷砂糖を使うのがベストであり、失敗もない。
しかし梅酒作りは砂糖選びが重要であり、醍醐味でもある。
梅やお酒は入手性や価格などによって、気軽に試しづらいが、砂糖はそうではない。
多くの種類の砂糖は入手しやすく、価格も手の届く範囲のものが多い。
梅酒作りでいろいろ試したい人は、まず砂糖をこだわってみることをオススメする。



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