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梅酒は主に以下の3つの原料でできている。
- 梅
- 砂糖
- お酒
ここでは梅酒のベースとなるお酒について説明しよう。
ホワイトリカー、本格焼酎、日本酒、ブランデーなどなど。
お酒の種類によっては注意する点もあるので合わせて紹介する。
●梅酒で使われるお酒の種類
もっとも一般的なものはホワイトリカーである。
市販の梅酒では本格焼酎や、日本酒、ブランデーなどを使ったものが色々ある。
自宅で作る場合は、好みのお酒を使って作るのが楽しい。
・ホワイトリカー
一般的に梅酒や果実酒用に作られた甲類焼酎がホワイトリカーと呼ばれている。
よって甲類焼酎と考えて問題ない。
特徴は、無色透明、クセがなくクリアな味わい、アルコール度数が高い。
アルコール度数は35%のものが多い。
ちなみに果実酒用以外の甲類焼酎の度数は20%や25%のものが多い。
梅や果実を浸けるにあたって、度数が高いことが腐敗を抑える効果がある。
酒税法によって甲類焼酎は36%未満と決まっているため、35%を超えるものはない。
ホワイトリカーの原料は、糖蜜、米、麦、芋、コーンなど様々なものが使われる。
連続式蒸留機でアルコール度数を高めて、濾過することによって、
無色透明で、クリアな味わいの蒸留酒となる。
熟成はせず、静置して落ち着かせた後、加水して度数を調整して完成する。
梅酒に使うと、ホワイトリカーのクリアさが梅の味わいを生かしてくれる。
梅酒や果実酒用として、1.8Lパックで売られている。
各社がホワイトリカーを販売しており、飲み比べると若干の違いはあるが、
その違いは梅酒に使うとほぼわからなくなる。
果実酒用でない甲類焼酎を使って梅酒を作るのも良い。
ただし、果実酒用でないため、アルコール度数が25%前後であり、
できあがりの梅酒はホワイトリカーよりも度数が低くなることを覚えておこう。
・本格焼酎(乙類焼酎)
本格焼酎とは、原料に米や芋、麦、そば、黒糖、酒粕などを使い、
単式蒸留器で蒸留した焼酎のこと。
泡盛も本格焼酎に分類される。
甲類焼酎とは対照的に、本格焼酎はしっかりと原料の豊かな味わいがある。
焼酎メーカーが自社の焼酎を使って梅酒を作っており、
一つのメーカーの本格焼酎と梅酒を飲み比べるのも面白い。
ただし、製品の本格焼酎がそのまま梅酒に使われているわけではなく、
梅酒用に調整されたものが使われている。
家庭で好みの本格焼酎を使って梅酒を作る場合は、
アルコール度数がホワイトリカーよりも低いことを知っておこう。
本格焼酎の度数は25%前後である。
このため、できあがる梅酒のアルコール度数も低くなる。
本格焼酎を使う醍醐味は、原料由来の味わいである。
米、麦、芋、そば、黒糖、ごま、酒粕など、焼酎自体の味わいと、
梅の持つ酸味や果実感が合わさることで、奥深い味わいが生まれる。
少量ずつ色々な焼酎を使って作ってみるのも良い。
・日本酒
日本酒の多くの酒蔵から梅酒が販売されている。
梅酒のベースとして使われる日本酒の特徴は風味である。
日本酒は醸造酒であることがポイントである。
梅酒に使われるお酒はホワイトリカーや焼酎などの蒸留酒が一般的。
醸造酒と蒸留酒の違いを簡単にいうと、醸造酒を蒸留したものが蒸留酒である。
蒸留というのはアルコール度数を高める工程であり、醸造酒の風味は蒸留すると薄れてしまう。
醸造酒の代表的なものは、日本酒、ビール、ワイン、紹興酒など。
蒸留酒の代表的なものは、焼酎、ウイスキー、ブランデー、ジン、ラム、テキーラ、ウォッカなど。
梅酒に蒸留酒が使われる理由は、アルコール度数が高いことで腐敗を防ぎ、
梅エキスを抽出しやすくするなるのである。
また、酒税法で果実酒に使うお酒は度数20%以上でなければならないと決められている。
醸造酒でアルコール度数が20%を超えるものは多くない。
醸造酒の平均的なアルコール度数は、日本酒は15%、ビールは5%、
赤ワインは13%、白ワインは11%である。
酒蔵が梅酒作りに使う日本酒はアルコール度数の高い原酒を使っている。
家庭で日本酒を使って梅酒作りをしたい場合は、普通の日本酒ではなく、
梅酒用や果実酒用のアルコール度数が20%以上の日本酒を使わなければならない。
普通の日本酒はアルコール度数が15%程度のため、梅酒作りに使うと違法となるので注意が必要。
※アルコール度数20%以上のお酒を使わなければならない理由
酒税法に20%以上と明記されているのだが、ではなぜ20%以上でなければならないのか。
その理由は、アルコール度数が低いと再発酵してしまう可能性があるためである。
ここでいう発酵とはアルコール発酵のことである。
つまり、再発酵によって新たにアルコールを生成してしまう可能性があってはならないということ。
アルコール度数が低いと、野性の菌類が梅や果実に含まれる果糖や氷砂糖などの、
糖類をブドウ糖に分解し、そのブドウ糖をアルコールと二酸化炭素に分解する可能性がある。
酒税法ではアルコール度数1%以上のものはお酒と定義され、その製造には免許が必要になる。
そして製造されたお酒には税金がかかる。
製造免許を持たずに造ったお酒は密造酒となるので違法とみなされる。
梅酒に使うお酒のアルコール度数が20%以上あれば、
アルコールを生成するような菌はほぼ死滅する。
よって、再発酵を起こさせないボーダーラインが20%ということである。
・ブランデー
ブランデーはブドウを原料とした蒸留酒である。
甘く芳醇な香りと、まろやかな味わいが梅とよく合う。
ブランデーは梅酒のベースとなるお酒としてかなり浸透している。
誰がいつブランデーで梅酒作ろうとしたのかは定かではない。
ただし、ブランデーの本場であるヨーロッパではリキュール作りに古くから使われている。
意外と多くのメーカーが梅酒用のブランデーを販売しており、
家庭での梅酒作りで使用する敷居は高くない。
普段ブランデーを買うことがなくても、梅酒用なら買いやすい。
リーズナブルであるが、商品によっては、
カラメル色素、香料、糖類などの添加物が入っているものもある。
気になる人は原料を調べてから検討することをオススメする。
梅酒用ではなく、普通のブランデーを使って梅酒を作りたい人は、
少量での仕込みをオススメする。
普通のブランデーは値段が高いので、少量で試作したほうが良いだろう。
・その他の蒸留酒
ウイスキー、ラム、ウォッカ、ジン、テキーラ、アブサンなどなど、
色々な蒸留酒を使って自作してみるの楽しいだろう。
蒸留酒のため、どのお酒を使ってもアルコール度数が高くなることが共通している。
それぞれの蒸留酒について簡単に説明する。
–ウイスキー
最近は国内でウイスキー蒸留所が増えたせいか、
ウイスキー梅酒をよく見かけるようになった。
国産のウイスキーを使った商品が主であり、
穏やかな樽香と梅の風味が味わえる。
ウイスキー梅酒にスモーキーさを求めるなら、自作するのが良い。
スモーキーさやピート香を好む人は、
ラフロイグやアードベッグなどのアイラモルトで梅酒作りをするのもアリだろう。
ただし、クセの強いお酒は調整が難しいため、少量で試すことをオススメする。
どのような仕上がりになるのかを想像して、
梅、糖類、お酒の配合を色々試して理想の梅酒を目指そう。
–ラム
ラムはサトウキビを原料とする蒸留酒である。
サトウキビ由来の風味が梅とマッチすることで、独特の味わいになる。
商品化されているものもいくつかある。
ラムには製法の違いと、熟成期間の違いによって、味わいが全く違ってくる。
家庭でラムを使って梅酒を作るなら、どのようなラムを使うが重要になる。
色の付いたラム(ゴールやダーク)は、熟成によるコクと風味がある。
熟成樽の影響を受けているので、ブランデーやウイスキーの梅酒に近くなる。
コクの強い梅酒を求めるなら、ラムと黒糖の組み合わせも面白い。
色の付いていないラム(ホワイト)は、サトウキビ由来の青々しさ、茂味がある。
ラムらしさをサトウキビに求めるなら、ホワイトラムで浸けるのがオススメである。
特にサトウキビの搾り汁をそのまま使って造られるアグリコール製法のラムならなおさら良い。
ホワイトラムの茂味と梅の酸味、果実味のベストバランスを探ろう。
–ウォッカ
ウォッカは穀物やジャガイモなどを原料とする蒸留酒である。
無色透明でクリアな味わいが特徴なのだが、これはホワイトリカーと共通している。
ウォッカとホワイトリカーの違いは、ウォッカのほうがよりクリアで、度数が高いことである。
アルコール度数はホワイトリカーは35%、ウォッカは40%である。
ウォッカ梅酒の商品は存在するが、あまり多くない。
ホワイトリカーとウォッカでは梅酒にどのような違いが出るのか。
ウォッカのほうがしっかりと梅の味を引き出せる。
アルコール度数が高いウォッカのほうが、梅エキスを多く抽出できるのである。
ウォッカにはフレーバードウォッカという種類がある。
レモンやオレンジ、レッドペッパーなど風味が付いたものがあり、
少し変わった梅酒を作りたい時に、フレーバードウォッカを使えば手軽に挑戦できる。
桜餅のフレーバーがすることで有名なズブロッカを梅酒に使えば、桜と梅の共演が楽しめる。
–ジン
クラフトジンの人気が凄まじい現在、ジン梅酒も商品化されている。
ジンは、蒸留や浸漬によってボタニカルからエキスを抽出した蒸留酒である。
ボタニカルとは草根木皮などのことで、さまざまな材料が使われる。
ジンに欠かせないボタニカルがジュニパーベリー(ネズの実)であり、
ジュニパーベリーが風味の中心となる。
梅酒作りでジンを使うなら、梅とジンの風味がぶつかり合わないことが重要になる。
ジンには多くのボタニカルが使われていて、繊細な風味も含まれている。
また、使用するボタニカルに梅を使っているジンもある。
ジンは種類が多く、風味も味わいもさまざまなので、試しがいがある。
–テキーラ
テキーラはメキシコの蒸留酒で、竜舌蘭(アガベ)の球茎を原料とする。
独特の風味、味わいがあり、世界中で人気のスピリッツである。
テキーラ梅酒が商品として販売されているが、まだ1ブランドしかない。
テキーラ梅酒の商品がほとんどないなら、家庭で作ればよいのである。
テキーラ独特の風味と、梅の酸味をバランスよく活かしたい。
テキーラ感をしっかり出すためには、熟成期間の短いものを使うことである。
ホワイト(ブランコ、シルバー)やゴールド(レポサド)が適している。
熟成期間の長いアニェホ、エクストラアニェホでも良いだが、
樽の影響によってテキーラ感が弱まる(このあたりは、好みの問題なのだが)。
せっかくなので、砂糖(糖類)もこだわりたい。
テキーラと同じ原料のアガベシロップを使うと、さらに良いだろう。
アガベシロップは血糖値を上昇させる使用であるGI値が砂糖の1/4であり体にも良い。
–アブサン
アブサンはニガヨモギをメインとしたハーブ酒である。
香草、薬草など多くの材料が使われる。
材料を多く使うジンと似ているが違いを簡単にいうと、
ジンはジュニパーベリーがメイン、アブサンはニガヨモギがメインである。
アブサンの特徴はアルコール度数が高いものが多い。
使用するハーブ特有の香り、味わいがある。
アブサンに加水すると白濁するものがある。
アブサンで梅酒を作るなら、梅が負けないように調整しよう。
アブサンは風味が強いため、バランスを間違えると梅が主役でなくなってしまう。
アルコール度数の高いアブサンを使うと、できあがる梅酒の度数も高くなるので注意。
使用するアブサンによっては、梅の水分と反応して少し白濁する場合もあるが、
それもまた楽しみの一つである。
・日本酒以外の醸造酒
日本酒以外の醸造酒として、ビール、ワイン、紹興酒などがある。
醸造酒なので、アルコール度数がそれほど高くないことが共通している。
よって、家庭での梅酒作りに醸造酒は法的に向かないし、衛生的にも腐敗しやすい。
当然、酒類製造免許を持っているメーカーが作る分には問題ない。
果実酒用の度数の高い日本酒以外では、酒精強化ワインが使える。
–酒精強化ワイン
酒精強化ワインとは、ワインの発酵途中や発酵後に蒸留酒を加えたものである。
添加する蒸留酒によってアルコール度数が高まり、20%を超えるものもある。
20%を超えるものは法的に問題なく、梅酒作りに使える。
世界三大酒精強化ワインといわれるのが、
スペインのシェリー、ポルトガルのポートとマデイラである。
それぞれのワインに多くの種類があり、辛口から極甘口まで多彩。
梅酒作りにはそれぞれのワインの特徴を踏まえて、いろいろ試してみるとよい。
・リキュール(混成酒)
リキュールと言えば、果実系のカシスなどがすぐに思い浮かぶ。
他にもハーブ系やクリーム系など色々ある。
梅酒もリキュールに分類され、さらにみりんもリキュールである。
家庭でリキュールを使う場合は、やはりアルコール度数に注意しよう。
アルコール度数20%以上のものを使わなければならない。
また、多くのリキュールにはすでに糖類が含まれているので、
梅酒作りでさらに糖類を加える必要はないだろう。
–みりん
みりん仕込みの梅酒がいろいろ販売されている。
みりんとは、日本酒のもろみづくりの工程で焼酎、または醸造アルコールを加ええることで、
発酵させずに糖化のみを進めた酒類調味料である。
糖化による自然でまろやかな甘みが特徴。
アルコール度数は15%程度なので、家庭での梅酒作りには使えない。
しかし、みりんのなかには本直し、または柳蔭(やなぎかげ)と呼ばれるものがある。
みりんと焼酎を1:1で合わせたものである。
これにより、アルコール度数は20%を超え、家庭での梅酒作りにみりんが問題なく使える。
みりんに甘味があるため、梅酒作りで糖類は少量か不要である。
自然の甘さを楽しみたい。
●あとがき
梅酒にどのようなお酒が使われているかを知ることで、商品選びの参考になる。
家庭で梅酒作りをする際は、いろいろなお酒をベースにしてチャレンジできるが、
アルコール度数に注意して、密造酒にならないようにしよう。
ポイントは度数20%以上のお酒を使うことである。
これさえ気を付けておけば、梅酒だけでなく、果実酒も楽しく作ることができる。
知らずに密造していた、ということのないように。