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梅酒がどのようなものかを明確に定めたものはない。
ここでは『梅酒』と『本格梅酒』の違いや、地理的表示(GI)について説明する。
●梅酒と本格梅酒
梅酒は『梅酒』と『本格梅酒』に分けられる。
どのような材料で作られたかによってその違いが決まる。
- 梅 酒:梅、糖類、酒類、添加物(酸味料、甘味料、着色料、香料、、、)
- 本格梅酒:梅、糖類、酒類
・梅酒とは
どのようなものが梅酒かという定義がないため、梅酒と名乗れる範囲は広い。
梅を使ったお酒の多くが梅酒と表示できる。
梅酒には製造方法、アルコール度数、添加物などの決まりがない。
他の多くのお酒には、材料や製造方法、アルコール度数などの決まりがあり、
酒税法上でしっかりと定義されている。
酒税法では混成酒(リキュール)の定義がされており、梅酒は混成酒に分類される。
販売されている梅酒のラベルには混成酒、またはリキュールと記載されている。
酒税法上は、国民的果実酒である梅酒は混成酒の一種ということになる。
・本格梅酒とは
梅酒という定義がないことを憂慮した業界団体が制定したのが本格梅酒である。
梅と糖類とお酒のみで作られたものが『本格梅酒』と記載できる。
そこには二つの背景がある。
一つは、消費者への明確なアプローチである。
添加物を気にする消費者が増えたことで、その有無を表記でわかるようにした。
本格梅酒と表記されていれば、添加物を使っていなことがわかるのである。
もう一つは、梅の需要量の問題である。
梅酒の消費量は増加していにもかかわらず、原料となる梅の需要量が増えていない。
原因として添加物によって梅の香りや味を再現していることがある。
大量の梅を使わなくても、添加物を使うことで安価に香りや味を付けることができるのである。
このような理由により、『本格梅酒』が制定されたのである。
『本格梅酒』は日本洋酒酒造組合によって、2015年(平成27年)に自主基準として定められた。
『本格梅酒』の周知は広がっているとはいいがたく、
その為か、『本格梅酒』と表記する製品はまだ少ない。
●地理的表示(GI)『和歌山梅酒』
農林水産省では、地理的表示を以下のように記している。
その地域ならでは自然的・人文的・社会的な要因の中で育まれてきた品質、
社会的評価などの特性を有する産品の名称
つまり、その地域に根差した特産品が、農林水産省の認定を得たもののことである。
地理的表示によって、一定の基準を満たした品質が保証される。
GIはGeographical Indicationの略である。
GIが付くことは、国内はもとより海外展開への強みとなる。
海外ワインの格付けなどをイメージするとわかりやすい。
現在、日本のGIでは4つの酒類区分がある。
清酒、蒸留酒、ぶどう酒、その他の酒類があり、
その他の酒類に区分される唯一の名称が『和歌山梅酒』である。
地理的表示の指定を受けたのは2020年(令和2年)であり、
満たすべき要件の一部を以下に書き出した。
◆特性
- アルコール度数は10.0%以上35.0%未満
- 総酸値は3.5g/L以上
- エキス分は100g/L以上
◆原料
- 和歌山県内で収穫された新鮮な青梅、又は完熟梅のみ使用
- 梅の実を浸漬する酒類は以下のみ使用可
清酒、連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、ウイスキー、ブランデー、
原料用アルコール、スピリッツ、これらを混和させた酒類 - 梅以外の原料は以下のみ使用可
梅果肉、梅果汁、糖類、含糖質物(合成甘味料を除く)、炭酸
◆製法
- 梅は浸漬する酒類1kLあたり300㎏以上使用すること
- 梅の酒類への浸漬は和歌山県内で行うこと
- 梅の酒類への浸漬期間は最低90日以上
- 浸漬中の梅を意図的に破砕や圧搾しないこと
- 浸漬から取り出した梅を再度仕込みに用いないこと
- 貯蔵/瓶詰めは和歌山県内で行うこと
要件を満たした商品には、認証ロゴを貼ることができる。
認証ロゴを見かけたら、地理的表示なのだと一目でわかる。
●あとがき
梅酒に定義がないことは、悪いことばかりではない。
定義がないことによって、参入障壁が低くなる。
色々な梅酒があることで、選択肢が増えるのは良いことである。
本格梅酒もGIも選択肢の一つとして、今後の普及に期待したい。