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梅酒とプラムリキュールは同じものだろうか?
答えはおおむねYESと言える。
ここではプラムリキュールとはどのようなものなのか説明する。
●梅=プラム?
日本でイメージされるプラムは青紫色のものが多い。
しかし熟す前は緑色をしていたり、品種によって様々である。
逆に梅にも紅紫色になるものもある。
梅は英語でプラム(Plum)と訳されることが多い。
そのため、梅酒はプラムリキュールということになる。
しかしプラムを和訳すると西洋スモモとなる。
西洋スモモと梅は同じかというと、そうではない。
他にも梅はジャパニーズ・アプリコット(Japanese Apricot)と言われることもある。
アプリコットはアンズのことであり、日本のアンズが梅のことなのだろうか。
最近では、梅はウメ(Ume)と表現したほうが海外で通じるようになりつつある。
そもそも欧米では梅がほとんどないので、
無理にプラムやアプリコットに当てはめようとするとおかしなことになる。
植物学上の分類では、梅はバラ科サクラ属スモモ亜属であり、
スモモやアンズも同系統である。
そのため、梅とアンズの自然交雑などによってできた品種も多い。
アンズに近い品種の代表的な梅として豊後がある。
●プラムリキュールとは
プラムリキュール(Plum Liqueur)とは梅酒のことと解釈して問題無い。
他にもプラムワイン(Plum Wine)も梅酒のことである。
梅を使ったお酒をプラムリキュールと呼ぶなら、
プラムを使ったお酒は何と呼ぶのだろうか?
実は欧米ではプラムのお酒の商品はほとんどない。
家庭で果実酒としてプラムを使うことはあるが。
海外のサイトでプラムリキュールやプラムワインを検索して出てくるのは、
ほとんどが日本の梅酒や中国や韓国や台湾などの商品である。
これらの国は梅の栽培国であるということが理由である。
そもそも梅酒に明確な定義がないため、
梅を使ったお酒全般を梅酒と呼ぶことができる。
●プラムリキュール紹介
ここからはプラムリキュールの紹介をしよう。
フランス産、ラオス産、日本産で、
それぞれブランデーベース(グレープスピリッツ)、ラムベース、ジンベースの
プラムリキュールである。
梅酒ではなくプラムリキュールと呼ぶ理由の一つは、
一般的な梅酒とは違いという差別化が狙いだろう。
他の理由としては、今後の海外展開も視野に入れているのかもしれない。
・サントリー プルシア(PRUCIA)
プルシアはサントリーの販売するフランス産のプラムリキュールである。
コニャックメーカーの名門ルイ・ロワイエ社がサントリーと共同でプルシアを開発。
原料となるプラムは、フランス南西の街モアサックで栽培されたものが使われる。
使われるプラムはゴールデン・ジャパンという品種。
収穫は熟す前の7月頃に一粒一粒ていねいに手摘みされる。
日本の収穫よりも少し遅い。
収穫されたプラムはグレープスピリッツに漬けられる。
お酒はコニャックメーカーの高品質なグレープスピリッツが使われる。
タンクの中で数カ月かけてプラムのエキスを抽出し、
その後、ブランデーに使用したリムーザンオークの古樽で熟成される。
熟成を終えるとブレンド、加水、瓶詰めされ、出荷される。
プルシアはフランスで製造されているが、販売はされていない。
完全に日本向けの商品なのである。
アルコール度数は15%であり、一般的な梅酒と同じくらい。
甘味と酸味のバランスがよく、飲みやすい。
樽熟成による芳醇な香りとプラムの香りが絶妙に混ざり合っている。
フランス繋がりで、シャンパンで割ると爽やかな味わいになる。
・ラオディ ウメ/プラム
ラオディは日本人がラオスで創業したラムメーカーである。
果実や素材を漬け込んだ浸けラムとして、マリアージュシリーズが販売されている。
ラオディのラムはサトウキビの搾り汁をそのまま使うアグリコール製法で造られる。
アグリコール製法はカリブ海のフランス海外県や旧フランス領でよく使われている。
サトウキビの甘味や茂味を存分に味わうことができる。
ラオディではサトウキビを無農薬栽培し、
収穫、圧搾、発酵、蒸留、熟成、瓶詰めまで全て自社で行っている。
梅やプラムも無農薬のものが使われている。
–マリアージュラム ウメ
マリアージュラム ウメには、梅の他にジュニパーベリーが使わており、
ハーバルなアロマがする。
梅は無農薬のタイ産日本品種を厳選して使用。
タイ北部の町チェンマイの標高1300mの山地で育った日本品種の梅の古木から収穫される。
収穫は3月頃の乾季の時期に行われる。
ジュニパーベリーはマケドニア産のものを使用。
ジュニパーベリーは日本では杜松(ネズ)の実と呼ばれる。
ジンを製造する際に欠かせない原料がジュニパーベリーである。
マケドニアはジュニパーベリーの主要国であり、高品質のものが生産している。
梅の酸味を引き立てる目的でジュニパーベリーが使われている。
梅とジュニパーベリーをホワイトラムに漬け込み作られる。
砂糖は使わないので、甘さ控えめ。
梅の香りとジュニパーベリーの香りが独特のハーバルさを漂わせる。
アルコール度数は25%だが、爽やかで飲みやすい。
-マリアージュラム プラム
マリアージュラム プラムに使われるプラムはラオス産。
ラオス北部のシェンクアン県にある海抜1000mの地域で、
無農薬栽培されたプラムが使われる。
ルビー色の新鮮なプラムから甘酸っぱさとフルーティーさを抽出し、
鮮やかな色に染まる。
アルコール度数は25%あるが、プラムの甘さと爽やかな酸味が絶妙で飲みやすい。
フルーティーな香りが心をリラックスさせてくれる。
・京都蒸溜所 季の梅 京都プラムアンドベリーリキュール
季の梅(KI NO BAI)は梅とハスカップベリーをジンに漬け込んだリキュールである。
京都蒸溜所はクラフトジン『季の美(KI NO BI)』を生産している。
ジンの本場であるイギリスの伝統的なスロージンに触発され、季の梅が誕生した。
スロージン(Sloe Gin)とはスローベリーをジンに漬け込んで作る、
イギリスの伝統的なリキュールである。
スローベリーはプラム(西洋スモモ)の一種である。
梅は京都産の城州白(じょうしゅうはく)を使用。
京都南部の城陽市で栽培された城州白は、6月に収穫される。
ハスカップベリーは北海道の特産果実であり、
ブルーベリーを楕円形したような見た目をしている。
旬である初夏の頃に収穫されたものが季の梅に使われる。
梅もハスカップベリーも旬の素材を使用するため、
季の梅は年に一回の限定生産であり、数量が限られている。
使用されるお酒は京都蒸溜所で特別にブレンドされたジンが使われる。
砂糖は北海道産の甜菜糖を使用。
ハスカップベリーの色素によって赤く染まっている。
アルコール度数は29.5%とやや高め。
梅とハスカップベリーの甘酸っぱさが香る。
ジンを使っているがジュニパー感はほとんどない。
ドライジン季の美もジュニパーは控えめなので、そのような特色なのだろう。
●あとがき
梅酒はプラムリキュール、プラムワイン、ウメリキュールの他にも、
海外ではUMESHUやCHOYAとも呼ばれている。
これだけ多くの呼び名があるお酒は珍しい。
呼び方はどうであれ、梅酒がもっと世界中に広まれば、原料の梅の需要量が増え、
梅の生産者が潤うという流れができる。
梅酒にはその可能性があると感じる。