ウイスキーと貯蔵方法

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文字数:約1200文字

 ウイスキーは樽に詰められてから、貯蔵庫で長い年月を過ごす。
貯蔵構内での樽の積み方には大きく分けて、ダンネージ式とラック式がある。
小さな変化でも長期間の積み重ねで、大きな違いがでてくる。
それぞれの特徴を説明しよう。

ダンネージ式

ダンネージ式
Rémi BoussicoによるPixabayからの画像

 伝統的な樽の積み方。
床に木製のレールを敷き、その上に樽を並べていく。
1段目の樽に重量がかかるため、一般的には3段積みまで
下段の樽を取り出すためには、上段の樽を動かす必要があり、
出し入れが大変である。

 土の床、厚い壁であることが、より伝統的なスタイルとされる。
クラシックを好む飲み手には、ダンネージ式であることが求められる。
床が土の場合、湿度が高くなる(つまり熟成がゆっくりになる)。

 建屋さえあれば、貯蔵できるので、初期費用は小さい。
ラック式のようなメタルフレームも必要なく、天上も低くて良い。

ラック式

ラック式
Ramon PeruchoによるPixabayからの画像

 近代的な樽の積み方。
メタルフレームでラック(棚)を組み、樽を並べていく。
高くなりすぎると積み下ろしが難しくなるため、一般的には8~10段程度
樽同士が干渉していないため、どの樽も取り出しやすい。

 貯蔵庫内の上下で温度差ができるため、場所によって熟成度合いが違う
庫内上部のほうが温度が高くなるため、熟成が進む。
熟成度合いを均一にするために、樽の位置を何度も変える場合がある。

 天井の高い建屋が必要で、メタルフレームも設置しなければならないため、
初期費用は大きい。
しかし面積当たりの貯蔵量はダンネージ式よりも大きくなる。

ダンネージ式とラック式のまとめ

樽
Manfred Antranias ZimmerによるPixabayからの画像

 2種類の貯蔵方法の一般的な特徴をまとめた。
各蒸留所で改造や工夫をしているので、これに当てはまらない場合もある。

ダンネージ式ラック式
伝統的近代的
段数3段くらいまで8~10段
天井低い高い
面積当たりの貯蔵量小さい大きい
初期費用小さい大きい
樽の取り出し少し手間がかかる簡単
メンテナンス簡単少し手間がかかる

 多くの蒸留所では、ダンネージ式とラック式を併用している
新規蒸留所では、まずダンネージ式で貯蔵を始めて、
樽の数が増えて貯蔵庫を増設する時にラック式を採用することが多い。

あとがき

 貯蔵方法の違いが風味や味わいに影響を与えるのは事実だが、
樽の影響のほうがはるかに大きい。
例えば、同じ材質、同じ大きさの樽を隣り合わせて貯蔵したとして、
味わい、風味がほとんど同じになることもあれば、
全く違うものになることもある。
これは樽単体の個性によるものである。
貯蔵方法は場所による温度差によって、熟成度合いが変わる。
これは主に経営・運営の話である。
面積当たりの貯蔵量も、作業性もそうである。
つまり貯蔵方法は蒸留所の内務的な部分が大きい。
しかし、蒸溜所見学に行くと、整然と並べられた樽や、
高く積み上げられた樽を見ると、やはり琴線に触れるものがあるのも事実。

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