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薬膳酒について

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文字数:約3700文字

 なんとなく聞いたことのある薬膳酒という言葉。
長い歴史による経験に基づき、その効果が確認されてきた薬膳。
薬膳を使ったお酒について説明しよう。

薬膳とは

薬膳
MonikaによるPixabayからの画像

 まず薬膳とは、中国の伝統医学である中医学に基づいた食養生法(しょくようじょうほう)である。
薬膳は、その目的によって『食養』と『食療』の二つに分けられる。

 食養は病気を予防するために季節に応じた滋養強壮効果のある素材を摂取して、
体の各内臓を養い、不老長寿や老化防止をはかるもの。

 一方、食療は病気にかかってしまった場合に、
崩れた体の陰と陽のバランスを整えて病気を治していくもの。

 薬膳は、『陰陽五行説』に基づいて、『気・血・水』のバランスを整える方法なのである。
そして薬膳の効果を高めるためにつくられたのが薬膳酒である。

陰陽五行説の概念

 薬膳の基礎である中医学にはベースとして陰陽五行説の考え方がある。
陰陽五行説とは『陰陽』と『五行説』を合わせた考え方である。

・陰陽の考え方

 古代中国では自然界の全てのものは相対する陰と陽で成り立っていると考えられていた。
「陰」と「陽」は対立関係にあるが、同時に依存し合い、補完し合う関係でもある。
そして、自然界は双方の相互作用によって成立していると解釈されている。

太極図
SH Saw MyintによるPixabayからの画像

 陰陽を表したものとして太極図がある。
太極図のなかの小さな黒丸(陰)と白丸(陽)が、
陽のなかに含まれる陰、陰のなかに含まれる陽を表している。

 以下が陰陽の分類例である。

  • :天、日、昼、春、夏、火、熱、暑、動、軽、上、外、実
  • :地、月、夜、秋、冬、水、冷、寒、静、重、下、内、虚

 体が暑かったり、寒かったりするのは、バランスが陽や陰に傾いている状態と判断する。
このバランスの崩れを食材で補って、不調の回復や健康維持につなげるのである。

・五行説の考え方

 中医学や漢方では陰陽の他に、
自然界のあらゆるものを5つの性質(五行)に分類する『五行説』という考え方も生まれた。
五行は「木・土・金・水(もく・か・ど・ごん・すい)」の5つで、
それぞれの性質に合った季節や気候、方角、色、味、体の臓や器官など分類される。

 例えば、「木」の場合、“伸びやかに生長する”という性質を表しており、
その性質に合ったものとして、季節は春、気候は風、色は青、味は酸味、臓は肝が分類される。

 また、「木・火・土・金・水」は、それぞれ互いの働きを促したり、
抑制したりする関係性をもっている。
まとめると以下の図のようになる。

 五行には、5つの季節と合わせ、
五臓(肝・心・脾・肺・腎)五味(酸・苦・甘・辛・鹹(塩味))が対応している。
これらの要素と五行の各グループの促進と抑制の関係性に基づいて、薬膳はつくられる。

 例えば、暑くなってくる夏には体にこもる熱で熱中症などになりやすいため、
苦味の食材をとって熱を下に降ろして排泄し、心の働きを助ける。

-五臓について

 よく勘違いされるのが、中医学の五臓(肝・心・脾・肺・腎)は、西洋医学の「肝臓・心臓・脾臓・肺・腎臓」ではない
西洋医学では、これらは「臓器」そのものを指すが、
中医学や漢方での五臓」は、体内での「機能」を分類したものを指す

 五臓の体内での機能は以下である。

  • :「気」を巡らせて感情をコントロールしたり、「血」を蓄え量を調節したり、自律神経やホルモン分泌の調整を行う。
    目や骨と筋肉をつなぐ筋(すじ)にも関連し、働きが低下すると精神不安や視力低下が起こる。
  • :各臓腑の司令塔で、臓器の活動を統括的にコントロールする。
    「気」や「血」を全身に送り、体を温めたり、精神面の安定を図ったりする。
    働きが低下すると、動悸や不整脈、不眠が起こる。
  • :消化吸収機能を担い、食物の栄養を「気」「血」「津液」に変えて全身に送る。
    筋肉を養う働きが低下すると、むくみや胃下垂、疲労感、こむら返りなどが現れる。
  • :呼吸機能を担い、全身の「気」の流れをコントロールするとともに、皮膚機能や発汗、鼻の働きにも関わる。
    機能が低下すると、咳や痰が出たり、皮膚トラブルが生じやすくなったりする。
  • :体内の水分代謝を調整するほか、骨、歯、髪、耳などの働きとも関わりが深い。
    成長、発育、生殖、老化にも関わる。
    機能が低下すると、尿トラブルや聴力の低下、足腰が悪くなるなどの老化症状が顕著になる。

-五味について

 五行に対応して、食材の味は「酸・苦・甘・辛・鹹(かん)」の「五味」に分類される。
鹹は塩味のことである。
味の分類は、食べたときに舌で感じる味に基づいているが、
それぞれの味には、心身に及ぼすさまざまな作用があることが知られている。

 例えば、レモンや梅などに含まれる「酸」は、「肝」の機能を助ける働きをもっており、
引き締め作用や固める作用がある。
「酸」の引き締め作用によって、汗や下痢、咳などを止める効果があるといわれている。

 五味の主な食材と、特徴と作用は以下である。

  • :酸味。レモン、梅、酢など。
    引き締めたり、固めたりする作用がある。汗や咳を止め、下痢を改善する。
    唾液の分泌を促し、食欲を促進させる。秋に摂るとよい。
  • :苦味。ゴーヤ、レタス、緑茶など。
    排泄作用を促し、体内の水分を排出する作用、体の熱をとる作用がある。
    消化促進作用もあり、便通を改善する。
  • :甘味。米、芋、豆など。
    脾や胃の働きを助け、強壮作用があり、虚弱体質の改善、疲労回復につながる。
    緊張をやわらげ、痛みを軽減させる。
  • :辛味。しょうが、唐辛子、長ネギなど。
    発汗作用があり、発汗を促し解熱させたり、寒気を解消させたりする効果がある。
    血流や水分代謝を促して体調を整える。春に摂るとよい。
  • :塩味。昆布、海苔、貝類など。
    硬いものを柔らかくする作用や、詰まりを改善して流れを良くする作用がある。
    便秘や腫れものを改善する。

 一つの食材が複数の「味」を併せ持つものもある。
例えばトマトは「酸」と「甘」を併せ持つ。

カラダを構成する基本的3要素『気・血・水』

 中医学や漢方では、生命活動に不可欠なものとして、
『気・血・水』の3つの要素があると考えられている。
水は津液(しんえき)とも呼ばれる。

 『気・血・水(き・けつ・すい)』が体内を巡ることで、
各臓器が活発に動き、体調が整い、健康が維持・増進されるといわれている。
これらのの巡りが悪くなると、免疫力が落ち、体調が乱れ、病気にかかりやすくなる。

  • :「気」は、生命の源であり、体内を絶えず巡りながら、
    血液を循環させて栄養を細胞に届け、免疫力を高め、病気の原因となる「邪気」の侵入を防ぐ。
    「気」には親から受け継がれ、生まれつき備わっている「気」と、
    呼吸や食事によって体内に取り込める「気」がある。
    「気」が不足した状態を「気虚」、「気」の巡りが悪くなった状態を「気滞」といい、
    体力が低下し、心身の不調が起こる。
  • :「血」は、血液と血液が運ぶ栄養のことを指す。
    「血」は全身の細胞に栄養を届けて生体機能を支えるほか、
    筋肉をスムーズに動かし、皮膚や髪にツヤを与える役割も担っている。
    「血」は主に食事から摂取した栄養をもとにつくられる。
    食事量の不足や栄養の偏りなどによって、
    「血虚」(「血」が不足した状態)や「瘀血(おけつ)」(「血」の巡りが滞った状態)になり、
    疲れや冷え、不眠などになることがある。
  • :「水」は、体内の血液以外の水分(体液、津液)のこと。
    「水」は摂取した飲食物からつくられ、皮膚や粘膜を潤したり、
    血液の濃度や体温を調節したりする働きがある。
    体内での水分代謝に支障が生じ、水がたまりやすくなると、
    むくみなどが生じる「水毒」という状態になる。
    また、なんらかの原因で水分を消耗して体内の「水」が不足すると、
    のぼせ、のどの渇き、皮膚の乾燥、便秘、咳などが生じやすくなる。

薬膳をお酒で摂取するメリット

 薬膳に使われる材料は、お酒として、料理として、
または粉末や丸薬にして摂取することができる。
薬膳酒として摂取するメリットを説明しよう。

  • 吸収しやすい
    薬膳料理や、粉末、丸薬は体内に入ってから分解・消化されてから成分が吸収される。
    しかし薬膳酒はお酒に成分が抽出されているため、
    体内での分解・消化がほとんど必要なく、吸収できるのである。
  • アルコールに溶ける成分が摂取できる
    薬膳料理では主に水溶性の成分が摂取できるが、
    薬膳酒ではより多くの成分を摂取できるのである。
  • 保存性
    アルコールは適切に管理すれば腐敗や劣化を抑えることができる。
    作り置きしておけば体調の悪い時に、無理して作らなくてもよい。

 様々な薬膳酒があり、今の体調に合った効果的なものを選ぶことできる。
市販品を購入しても良いし、自宅で作製しても良い
意外と簡単に作れるので、自作を試してみる価値はある。

あとがき

 薬膳は長い歴史の中で育まれてきた。
その効果や作用は現在の科学で少しずつ解明され始めている。
薬膳は中医学の食事法だが、西洋でも香草や薬草などを使った食事法はある。
薬膳という言葉を聞くと難しく考えてしまうが、身近なハーブティーも薬膳の一種である。
先人達が長年研究してきた薬膳酒をもっと気軽に利用して、体調を整えよう。

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