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焼酎に使われる原料はさまざまである。
使ってはいけない原料はあるが、それ以外はなんでも使ってよい。
使わなければならない原料の指定がないのが、他のお酒と大きく違う点である。
●粕取(かすとり)焼酎
酒粕焼酎とも呼ばれ、酒粕を原料とし、日本酒造りが盛んな各地で造られている。
日本酒の風味とスッキリした甘さがあるのが特徴。
日本酒造りではもろみを搾り(上槽)、清酒と酒粕に分ける。
酒粕には8%程度のアルコール分が残っており、
焼酎のほかに、粕漬けや粕汁、甘酒などに利用される。
似た発想で、ワインの搾り粕で造るイタリアのグラッパ、フランスのマールがある。
酒造りで出た粕を再利用するエコな考え方は昔からあったのだ。
粕取り焼酎は製法により、「正調粕取焼酎」と「吟醸粕取焼酎」の二つに分けられる。
・正調粕取焼酎
酒粕に、もみ殻を混ぜて蒸留される、伝統的な製法。
もみ殻を混ぜるのは通気性を良くして蒸留効率を上げるためである。
どっしりとした味わいになる。
・吟醸酒粕焼酎
主に吟醸酒や大吟醸酒の酒粕が使われる。
酒粕に水を加えて再発酵させたものを蒸留する。
吟醸香を活かすため、減圧蒸留されることが多い。
果実のような爽やかな香りで、飲みやすい。
●カストリ
日本の酒文化の汚点として、「カストリ」がある。
カストリは戦後の物不足の時代に造られていた、粗悪な密造酒である。
このカストリが闇市に出回っていたとされている。
密造酒のため、決まった造り方などないのだが、
なかには工業用や燃料用アルコールが混ぜられていたものもあった。
メチルアルコールの影響で失明する人もいたという。
現在でも世界の貧困街ではメチルアルコール入りの密造酒を飲んで、
死者がでる事件が起きている。
粕取焼酎とカストリは、まったく関係なく、完全な別物である。
にもかかわらず、戦後の焼酎イメージを悪くした。
酔えればなんでもいい、というのは恐ろしいことである。
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●あとがき
無性に米を味わいたくなる時がある。
そんな時は、日本酒→米焼酎→粕取焼酎の順で米尽くしの酒を飲む。
合わせるのは和食で、寿司から始まり、雑炊や焼きおにぎりで締めるたい。