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本格焼酎に使われる麹(こうじ)について、役割や種類をみていこう。
ちなみに甲類焼酎では麹を使わなくても問題ない。
●麹の役割
お酒造りに必要なことはアルコール発酵である。
アルコール発酵に必要なものは糖である。
この糖を作るものが麹である。
麹がもつ酵素によってデンプンを分解することで糖ができる。
麹はカビの一種であり、米や麦などの穀物に繁殖させる。
麹を使った酒造りをしているのは東アジアと東南アジアである。
日本と他国では麹菌の種類と使い方が違う。
・散麹(ばらこうじ)
日本では麹(コウジカビ)を、米や麦などの穀類に付着させ、繁殖させる。
繁殖できる表面積広げるために、穀類がくっつかないようにバラバラにほぐす。
手間のかかる使い方で、東アジアでも少数派。
・餅麹(もちこうじ)
麹を使う多くの国では麹(クモノスカビ)を使う。
穀類を粉末にして水と混ぜたものを餅状に固めて、麹を繁殖させる。
麹を付着させたあとは放置して自然に繁殖するのを待つだけ。
中国やタイ、フィリピンなどがこの方法である。
●麹の種類
焼酎造りに使われる麹には、黄麹、黒麹、白麹の3種類がある。
・黄麹
黄麹は清酒や醤油、味噌などに使われる。
フルーティで華やかな香りが出やすい。
初期の焼酎造りでは、黄麹が使われていたが、九州などの温暖な環境下では、
腐敗してしまうことが頻繁にあった。
現在では設備の技術発達により、黄麹でも安定して生産できるようになっている。
・黒麹
沖縄の泡盛に使われている麹菌。
コクとキレのあるどっしりした味わいになりやすい。
黒麹菌はクエン酸を大量に生成する性質をもっており、
このクエン酸によって雑菌の繁殖を抑え、腐敗を防ぐ。
多くの蔵で黄麹から黒麹に変更して、生産性の安定化につながった。
・白麹
黒麹の突然変異として、1924年に発見された。
まろやかで落ち着いた味わいになりやすい。
黒麹と同様にクエン酸を生成し、腐敗を防ぐ。
黒麹よりも素材の良さを引き出すことができるので、多くの蔵で使用されている。
●あとがき
麹は微生物なので、温度変化に敏感である。
繁殖する際に熱を出すのだが、ほったらかしにするとその熱で死滅してしまう。
活動できる温度に調整してやる必要があり、手間がかかる。
自らの行いで死に向かうのは、生き物として人類も同じなのだろう。