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焼酎の色に決まりごとがあることを知っている人はどの程度いるのだろうか。
居酒屋で働く人でも知らない人は意外と多い。
ウイスキーと比べてなぜ薄いものばかりなのかを知れば、焼酎を見る目が変わるかもしれない。
●光量規制とは
焼酎の色はウイスキーやブランデーの1/5~1/10程度にしなければならない。
これを超えると焼酎の分類外となり、焼酎として出荷できない。
・光量規制
「酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達」というものに正確に書かれている。
1/5~1/10というものを数値にすると、以下のようになる。
「光電光度計を用いて430nm及び480nmの吸光度をそれぞれ測定し、その着色度がいずれも0.08以下」
ここでの着色度とは光の吸収量と置き換えて考えられる。
簡単に説明すると焼酎に光を当てた時にどのくらいの量が通り抜けずに吸収されるかというもの。
ウイスキーのように液色が濃いと、吸収される量は多くなり、数値は高くなる。
焼酎は色を薄くして、この数値を小さく抑えなければならないのである。
・規制の背景
この規制は1960年代に税率の違う焼酎とウイスキーやブランデーを誤認しないように設けられた。
当時はウイスキー、ブランデーは高級酒で、焼酎は大衆酒という扱いだった。
高級品と大衆品を間違えるという混乱が起きないように、
色で見分けられるようにしたということである。
現在ではアルコール度数1度当たりの税負担額は同じである。
蒸留酒1kL当たりの税率はアルコール度数21度未満200,000円、20度を超える1度ごとに10,000円加算。
単位を1Lあたりにしたほうがわかりやすいので、21度未満200円、20度を超える1度ごとに10円加算。
税負担率では、ウイスキー23.6%、乙類33.1%、甲類38.9%となっている。
●色について
・色のつく仕組み
そもそもなぜ色が付くのかご存じだろうか。
熟成時の容器を木樽にすることで、樽材から「タンニン」などの成分が
アルコールに染み出しくるのである。
時間経過とともにタンニンの量が蓄積されて、長期熟成のものほど色が濃くなる。
しかし樽材の種類によってはタンニンなどの成分が出やすいものとそうでないものがある。
ウイスキーでよく使用されるシェリー樽は、スパニッシュオークが樽材であり、よく色が出る。
シェリー酒の色が付くという人がいるが、実は主にスパニッシュオーク由来の着色である。
・色の薄め方
では熟成によって色が濃くなったものはどうなるかというと、薄められるのである。
薄め方は、透明の焼酎と混ぜる、フィルターを使って脱色するなどの方法がある。
はっきり言って、手間(時間とお金)がかかる。
・木樽熟成する理由
熟成容器には木樽の他に、ステンレスやホーロータンク、甕などがある。
どの熟成容器を使っても熟成させるとアルコールはまろやかになる。
木樽を使う理由は、木の香りがアルコールに移ることと、熟成による変化の速さである。
木材は他の材料に比べて、温度変化による膨張、収縮が大きい。
そのため、木の成分が出やすく、はっきりとした熟成の効果を得られる。
●今後の色規制
2021年12月に令和4年(2022年)度税制改正大綱が閣議決定された。
大綱の関連項目を抜粋する。
(8)ウイスキー又はブランデーに類似するスピリッツに係る製造時の酒税の承認 制度を見直し、誤認防止のための要件を設けた上、移出時の承認制度とすると ともに、その承認における着色度に関する制限を撤廃する。
令和4年度税制改正の大綱
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に承認を受けるスピリッツについて 適用し、経過的な運用上の取扱いを設ける。
これだけ読むと2023年の4月から完全に撤廃されるのかと思える。
しかし「経過的な運用上の取り扱い」というのが引っかかる。
閣議決定前の段階では、焼酎については業界の要望で色規制を維持する方針とされていた。
これまでの決められた色で造り続けてきた伝統を守りたい、ということである。
しかし蔵によって考え方は違い、色規制を廃止して、
樽熟成による個性的な商品を造りたいと考える蔵もあるだろう。
また、海外展開するなら、色が濃いと長期熟成であることでアピールできる。
当然、色が全てではないのだが、印象は重要である。
蔵によってはあえて色を付けたまま、スピリッツやリキュールとして商品を出すところもある。
ものは焼酎であるのに色で別物に分類されることが正しいとは思えない。
色規制を廃止して、各蔵の判断で伝統と革新を考えていくべきだと思う。
●あとがき
焼酎に色規制があると知った時は驚いた。
法律というものはいつも時代をあと追いかけてくるものである。
いつまでも古い法律を使い続けていると、時代に合わなくなる。
しかし古いものを守り続けることに意義を見出す人もいる。
当事者である造り手の方々が納得できることが一番だと思う。